161
日々読んで下さりありがとうございます。感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、本当に励みになっております!
一応、全員で島を1周したが、竜や魔物に会うことは出来なかった。やはり封印によって、空間を歪められているのだろう。
『じゃあ……ここからは別行動ですね』
封印に魔力が反応しないよう、魔力を持っている皆には離れてもらう必要がある。
『トワ……気を付けてね』
『ありがとう。物陰に隠れてコソコソ進むから大丈夫だよ!』
まだ心配そうにしているフィーユの頭を撫でながら、暗い雰囲気にならないように心掛ける。
―― ソティルさんの話では竜も魔物も友好的だったっていうし……心配いらない、よな……?
何故封印があるのか、そして封印の中に何があるのか……怖いと言えば怖いのだが、何かあっても俺1人なら見つかる可能性は低いだろう。
そう自分に言い聞かせ、心を落ち着かせる。
「いや、ひとりじゃないか……」
「きゅっ!」
もちは当然のように俺の頭の上に鎮座している。どうやら留守番をする気はないようだ。
『頼りにしてるよ、もち』
笑いながらもちの頭を撫でれば、「きゅっ!」と力強い返事をくれる。本当に頼りになる相棒だ。
『何かあってもボクが付いてるから大丈夫だよぉ〜!』
セイが久々に実体化し、両手を腰に当て胸を張ってポーズを決める。
その姿を見て、レンディスさんがセイを睨みつける。
『先生の姿で変なポーズをするな』
レンディスさんはセイを睨みながらも、『はぁ……でもドヤ顔の先生、かわいい……』とうっとりした声を上げていた。怒りながらうっとりするとは器用な人だ。
『セイも頼りにしてるよ』
『任せてぇ〜!』
『じゃあ、皆、また後で!』
……
『そろそろいいかな?』
『皆充分離れたみたいだし、いいと思う~』
皆と別れてから数時間待ち、セイの言葉を頼りに俺達も歩き出す。
俺、もち、セイ……この3人、いや、1人と2匹? で歩いていると、デエスの森を探索した時を思い出す。
『でも本当、この島何だか変だよぉ~……トワ、気を付けてねぇ~……?』
歩き出してそうそう、セイが不穏な言葉を発する。
まるで怪談話のような言い方に、ちょっと焦る。
『こ、怖いこと言うなよ……何が変なんだ?』
『だって精霊が全然いないんだよぉ~? こんなに魔素が濃いのに~……』
そういえばデエスの森でセイと初めて会話した時、魔素が濃い場所には精霊がよくふよふよしている……と言っていた。
俺には分からないが、ドラークもデエスの森と同様、魔素が濃いようなので、精霊の1体や2体、ふよふよしているものなのだろう。
『それってそんなに変なことなのか?』
『え~……変じゃないのかなぁ~……?』
『いや、俺に聞かれても……』
何だか恐怖感だけが追加された。
『でも精霊がいないってことは、封印のある場所? は自力で探すしかないのか……』
デエスの森で封印を探した時は、セイが周囲の精霊に封印の場所を聞いてくれた。今回は情報なしなので、島中を探し回ることになりそうだ。
『つーかそもそも……デエスの森の時みたいに、刻印があるのかな……?』
人や精霊、そして魔物……全種族とも魔法を使用するが、使い方はそれぞれ異なるらしい。
もしドラークの封印は魔物や竜が施したものなら、刻印という分かりやすい目印がない可能性も考えられる。
『うわ、やべ……封印探し、すっげー時間かかるんじゃね……?』
何日がかりになるんだ……と頭を抱えるが、こんなこともあろうかと、馬車の荷台を1つ、島へ置いていって貰った。自分が寝泊まりする場所には困らない。
因みに他のメンバーは、レンディスさんが作った道で島から離れている。寝泊まりは1つの馬車でするか……レンディスさんが魔法で寝床を別に用意するのだろう。
『……レンディスさんなら多分、先生と自分用の寝床を用意するんだろうなぁ……』
レンディスさんの魔力は大丈夫なのだろうか?
何はともあれ、皆をずっと海の上で待たせるわけにもいかないので、早く封印を見つけないとだろう。
『ボクも魔素の流れを観察して、違和感を見つけたら教えるねぇ~!』
セイが心強い言葉をくれる。
「きゅっ! きゅきゅっ!」
もちも気合十分な鳴き声を上げる。
俺も2人……いや、2匹に負けないよう、目を凝らす。
……
封印探しを初めて、2日程経過した。
段々と日も暮れて来たので、今日は諦めようかと思ったその時、セイが『あ!』と声を上げる。
『あそこ! あの岩のところ! ちょ~っとだけ魔素の流れが変な気がする!』
『おぉ……!』
俺は周囲を警戒しながらセイの示す場所へ近づく。
『ビンゴっぽいな!』
岩に近付いてみると、何やら記号のようなものが刻まれている。
見方によってはナイフで刻んだようにも、魔物が爪で刻んだようにも見える。
「人が施した封印なのか……魔物や竜が施した封印なのか……駄目だ、全然分かんねぇ……」
俺は小声で呟きながら、セイに封印内の様子を聞く。
『セイ、どうだ? 封印内に魔物や竜はいそうか?』
『うん……いっぱいいる……すっごく魔力が強いのもいる……』
封印内に入ったことで、魔力を感じられるようになったのだろう。
セイがやけに真剣な声音で返事をする。
『すっごく魔力が強いって……レンディスさんよりもか……?』
俺はゴクリと唾を飲みながら、セイに問いかける。
俺の問いかけに、セイが静かに答える。
―― その答えは、俺の予想の更に上をいくものだった。
『うん……レンディスよりずっとずっと強い……多分、ボクより強い魔力を持ってる……』




