表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第8章【ドラーク編】
173/194

161

日々読んで下さりありがとうございます。感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、本当に励みになっております!

 

 一応、全員で島を1周したが、竜や魔物に会うことは出来なかった。やはり封印によって、空間を歪められているのだろう。


『じゃあ……ここからは別行動ですね』


 封印に魔力が反応しないよう、魔力を持っている皆には離れてもらう必要がある。


『トワ……気を付けてね』


『ありがとう。物陰に隠れてコソコソ進むから大丈夫だよ!』


 まだ心配そうにしているフィーユの頭を撫でながら、暗い雰囲気にならないように心掛ける。


 ―― ソティルさんの話では竜も魔物も友好的だったっていうし……心配いらない、よな……?


 何故封印があるのか、そして封印の中に何があるのか……怖いと言えば怖いのだが、何かあっても俺1人なら見つかる可能性は低いだろう。

 そう自分に言い聞かせ、心を落ち着かせる。


「いや、ひとりじゃないか……」


「きゅっ!」


 もちは当然のように俺の頭の上に鎮座している。どうやら留守番をする気はないようだ。


『頼りにしてるよ、もち』


 笑いながらもちの頭を撫でれば、「きゅっ!」と力強い返事をくれる。本当に頼りになる相棒だ。


『何かあってもボクが付いてるから大丈夫だよぉ〜!』


 セイが久々に実体化し、両手を腰に当て胸を張ってポーズを決める。

 その姿を見て、レンディスさんがセイを睨みつける。


『先生の姿で変なポーズをするな』


 レンディスさんはセイを睨みながらも、『はぁ……でもドヤ顔の先生、かわいい……』とうっとりした声を上げていた。怒りながらうっとりするとは器用な人だ。


『セイも頼りにしてるよ』


『任せてぇ〜!』


『じゃあ、皆、また後で!』



 ……



『そろそろいいかな?』


『皆充分離れたみたいだし、いいと思う~』


 皆と別れてから数時間待ち、セイの言葉を頼りに俺達も歩き出す。

 俺、もち、セイ……この3人、いや、1人と2匹? で歩いていると、デエスの森を探索した時を思い出す。


『でも本当、この島何だか変だよぉ~……トワ、気を付けてねぇ~……?』


 歩き出してそうそう、セイが不穏な言葉を発する。

 まるで怪談話のような言い方に、ちょっと焦る。


『こ、怖いこと言うなよ……何が変なんだ?』


『だって精霊が全然いないんだよぉ~? こんなに魔素が濃いのに~……』


 そういえばデエスの森でセイと初めて会話した時、魔素が濃い場所には精霊がよくふよふよしている……と言っていた。

 俺には分からないが、ドラークもデエスの森と同様、魔素が濃いようなので、精霊の1体や2体、ふよふよしているものなのだろう。


『それってそんなに変なことなのか?』


『え~……変じゃないのかなぁ~……?』


『いや、俺に聞かれても……』


 何だか恐怖感だけが追加された。


『でも精霊がいないってことは、封印のある場所? は自力で探すしかないのか……』


 デエスの森で封印を探した時は、セイが周囲の精霊に封印の場所を聞いてくれた。今回は情報なしなので、島中を探し回ることになりそうだ。


『つーかそもそも……デエスの森の時みたいに、刻印があるのかな……?』


 人や精霊、そして魔物……全種族とも魔法を使用するが、使い方はそれぞれ異なるらしい。

 もしドラークの封印は魔物や竜が施したものなら、刻印という分かりやすい目印がない可能性も考えられる。


『うわ、やべ……封印探し、すっげー時間かかるんじゃね……?』


 何日がかりになるんだ……と頭を抱えるが、こんなこともあろうかと、馬車の荷台を1つ、島へ置いていって貰った。自分が寝泊まりする場所には困らない。

 因みに他のメンバーは、レンディスさんが作った道で島から離れている。寝泊まりは1つの馬車でするか……レンディスさんが魔法で寝床を別に用意するのだろう。


『……レンディスさんなら多分、先生と自分用の寝床を用意するんだろうなぁ……』


 レンディスさんの魔力は大丈夫なのだろうか?

 何はともあれ、皆をずっと海の上で待たせるわけにもいかないので、早く封印を見つけないとだろう。


『ボクも魔素の流れを観察して、違和感を見つけたら教えるねぇ~!』


 セイが心強い言葉をくれる。


「きゅっ! きゅきゅっ!」


 もちも気合十分な鳴き声を上げる。

 俺も2人……いや、2匹に負けないよう、目を凝らす。



 ……



 封印探しを初めて、2日程経過した。

 段々と日も暮れて来たので、今日は諦めようかと思ったその時、セイが『あ!』と声を上げる。


『あそこ! あの岩のところ! ちょ~っとだけ魔素の流れが変な気がする!』


『おぉ……!』


 俺は周囲を警戒しながらセイの示す場所へ近づく。


『ビンゴっぽいな!』


 岩に近付いてみると、何やら記号のようなものが刻まれている。

 見方によってはナイフで刻んだようにも、魔物が爪で刻んだようにも見える。


「人が施した封印なのか……魔物や竜が施した封印なのか……駄目だ、全然分かんねぇ……」


 俺は小声で呟きながら、セイに封印内の様子を聞く。


『セイ、どうだ? 封印内に魔物や竜はいそうか?』


『うん……いっぱいいる……すっごく魔力が強いのもいる……』


 封印内に入ったことで、魔力を感じられるようになったのだろう。

 セイがやけに真剣な声音で返事をする。


『すっごく魔力が強いって……レンディスさんよりもか……?』


 俺はゴクリと唾を飲みながら、セイに問いかける。

 俺の問いかけに、セイが静かに答える。



 ―― その答えは、俺の予想の更に上をいくものだった。



『うん……レンディスよりずっとずっと強い……多分、ボクより強い魔力を持ってる……』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ