表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第8章【ドラーク編】
172/194

160(★)

日々読んで下さりありがとうございます。感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、本当に励みになっております!


※本文最後に挿絵が入っております。

苦手な方は右上「表示調整」より、挿絵を表示しないよう設定をお願いいたします。


 

『……魔素が濃いのに、魔物の気配が全然しねぇ』


 この20日間。

 レンディスさんとそこまで親交を深められたわけではないが、ソティルさんの側にいても何とか舌打ちされない程度にはなった。出会った頃に比べればかなりの進歩だ。ソティルさんが近くにいなければ、こうやって普通に? 会話もしてくれる。


『レンディスさんの魔力を恐れて、魔物が逃げちゃったんじゃないですか?』


『まぁそれもあるかもしれねぇが……。俺はこんな小せえ島くらい全体を感知出来る。全魔物が島の外に逃げられるとは思えねぇ』


『うーん……確かに……』


『怯えて隠れてる魔物の気配さえないってのが妙だ……』


 レンディスさんは舌打ちをしつつ、『面倒なことが起きそうだ……』と不穏な言葉を吐く。


『め、面倒なこと、ですか……?』


『パッと思いつく可能性は2つだ。1つは魔物や竜がこの島を捨てて何処か違う場所に移った。もう1つは封印の中にいるから、魔力が感知できない。どちらにしろ面倒だろうが』


 前者だった場合、竜を探さなくてはいけない。早く用事を終わらせ、ソティルさんと2人っきりの生活に戻りたいレンディスさんにしてみれば、そりゃあ面倒だろう。

 後者だった場合、のびのび暮らしていたはずの竜が封印されるなんて事態が、面倒だということだろう。


『はぁー……どうせ先生は、最後まで付き合うとか言うんだよなぁ……優しいのは先生の素晴らしい美点だけど俺だけにその優しさを向けてくれればいいのに……こんな奴らに先生の優しさを分けてやる必要なんてないのに……』


 横でレンディスさんが溜息を吐きながら、久々にブツブツモードに入っていた。このモードに入ったレンディスさんは面倒なので、放っておくに限る。


「封印、か……」


 デエスの森の時の様に、俺なら抜けられる封印なのだろうか?

 やっと自分が役立てそうで、少しだけ安堵する。


「現金なもんだよな……あんだけ俺も魔力が欲しいとか思っときながら……」


 取り敢えず、レンディスさんと話した内容を他のメンバーにも伝えてみる。

 ついでに昔ドラークに来た時の様子も聞いてみたが、ソティルさんが来た頃は、普通に魔物や竜の魔力を感じる事が出来たらしい。


『私の魔力が減り、魔力感知が鈍っただけかと思っていましたが……やはり魔物の魔力も竜の魔力も感じられないのですね……』


 ソティルさんは眉を寄せ、『何かあったのでしょうか……』と心配そうに呟く。


『き、きっと大丈夫ですよ……! 前にソティルさんが言ってたじゃないですか! 立派で力のある竜だって!』


 俺はソティルさんを励まそうと、あわあわと声を掛ける。根拠も何もない言葉に、ソティルさんはふわりと優しく笑う。


『ありがとうございます……。そうですね、友人である私が信じて上げないとですね』


 何だか逆に気を使わせてしまった気もするが、俺は『そうですよ!』と力強く頷く。自分の経験談だが、不安な時に大丈夫だと言ってもらえると、それだけで心が軽くなる……気がする。

 少しでもソティルさんの気が休まるといいなと思いつつ、俺は島の丁度真ん中辺りにある小高い山へ目を向け、心の中で願う。



 ―― どうか何も、起こりませんように……



 ……



『では、行きましょうか』



 しっかりと休息も取った。

 ソティルさんの掛け声と共に、俺達は島の内部へ歩を進める。レンディスさんの魔力も、万全ではないが多少回復したそうだ。


『やっぱり封印説が濃厚ですかね?』


『んー……そうですねぇ……ここまで魔物の気配が全くないというのは、人為的なものを感じますからね……』


 歩きながら、ソティルさんとそんな会話をする。


『封印……またトワひとりで行かなきゃいけないの……?』


 フィーユが心配そうに俺を見つめる。

 幼い少女にここまで心配されると言うのも、なかなか情けない。


『まぁ、まだ封印されてると決まったわけじゃないから……』


 俺の言葉に、セイが反応する。


『ん~……封印があるのは確定だと思う〜! 魔素の流れにちょ〜っと違和感があるから〜』


 精霊という、魔素のスペシャリストであるセイが言うならば、間違いないだろう。

 この島の魔物や竜は、封印内にいるという前提で話を進めていく。


『前みたいに俺だけ封印内に入れたとして……まずは事情を聞いた方がいいんでしょうか……?』


『そうですねぇ……』


 ソティルさんは少し考えながら、『自ら封印を施したにしろ、誰かに封印されたにしろ、何かしら事情があるでしょうからね……』と呟く。


『さっさと封印を壊せばいいだろ。マズイ奴が出て来たら、俺が封印すればいい』


 レンディスさんはとにかく時間を掛けたくないようで、『チンタラ悩んでる時間が勿体ねえ』と苛立たしげに言う。

 その後ソティルさんの方を向き、3オクターブくらい高い声でハキハキと語りかける。


『面倒事はさっさと終わらせて、早く俺達の家に帰りましょう? ね、先生!』


『レンディスはせっかちですねぇ……』


 ソティルさんは苦笑しながら、『安全第一ですよ』とレンディスさんを窘める。


『事情は聞いた方がいいと思うけど……トワひとりで事情を聞きに行くのは反対! トワが封印を解いて、皆で事情を聞きに行けばいいと思う!』


『……あぁ』


 フィーユとファーレスは、俺ひとりで危険なことをして欲しくないようで、封印を解くのだけ俺が、以降は皆で行動する案を推してくる。


『封印を解く前に事情を聞きに行って、トワに何かあったら、私達は手出し出来ませんしねぇ……』


 ソティルさんは悩みつつも、『まずはトワに封印を解いて貰い、皆で事情を聞きに行きましょうか』と決定を下す。


『分かりました』


 1人で事情を聞きに行く覚悟を決めていたが、当然皆がいてくれた方が心強い。


『トワ、無茶しないでね? 絶対だよ!?』


 フィーユが俺に抱き着きながら、念を押す。


『分かってるよ。俺が臆病なの、知ってるだろ?』





本編と関連性がないのですが、VRoidを使用しフィーユを作ってみました!

活動報告でもUPしたのですが、こちらでも…笑


挿絵(By みてみん)






挿絵(?)、話の内容と関係なくてすみません。

VRoid…初めて使いましたが凄いですね!楽しかったです!

本当は髪色をもう少し淡いラベンダー色っぽい感じにしたかったのですが、なかなか上手く行きませんでした…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ