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平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第8章【ドラーク編】
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日々読んで下さりありがとうございます。感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、本当に励みになっております!

 

 魔物とソティルさん、どちらが物騒なのだろうか……と考えつつ、件の魔物が現れた時の対処を話し合う。


『魔物を撃退するのは私とレンディスが適任でしょう』


『でも、ソティルさんの魔力は……その、大丈夫ですか? それにレンディスさんの方も、道作りをしながら攻撃魔法を使えるんでしょうか……?』


 ソティルさんの言葉に、俺は少し言い淀みながら疑問を投げかける。

 宙から落ちた時といい、ソティルさんは魔力がなくなる前の感覚で話しているように感じる。


『問題ありません。私はメインで戦うというより、レンディスの撃ち漏らしを処理する程度のつもりですし、レンディスの魔力と魔素操作もまだまだ余裕があります』


 レンディスさんはあれだけ大規模な魔法の道を作りながら、実力の半分も出していないそうだ。全く持って底が見えない。


『俺も一応遠距離攻撃可能な武器があるので、支援します』


 意気込む俺をソティルさんがそっと制する。


『ありがとうございます。でもトワ達は戦いに巻き込まれないよう、基本的には馬車の中にいて下さい』


『で、でも、賢者様やレンディスさんだけに任せっきりにするのは……』


『いいんですよ、適材適所です。それに酷なことを言うようですが、生半可な攻撃ではこれから来るであろう魔物に傷ひとつ付けられないでしょうし、下手に前へ出てしまうと攻撃魔法の邪魔になってしまいますから』


『……はい』


 魔法を使う際、味方を巻き込まないように注意しなきゃいけないのは、確かに面倒だろう。


 ―― 状況を見て支援出来そうなら支援……無理そうなら大人しくしてるしかないか……


 人が戦ってくれるのを、ただ馬車から見ているだけというのは精神的に辛いものがある。しかし、味方の邪魔をして全員やられてしまっては元も子もない。


 モヤモヤとした気持ちのまま馬車に戻り、銃の点検を行う。

 点検と言っても分解が出来るわけでも、自分で調整が出来るわけでもないので、布で汚れを拭ったり傷がないか確認するくらいしか出来ないのだが。


 魔石製の銃はケアが楽で本当に助かっている。これが本物の銃だったら、分解したり掃除をしたり大変だっただろう。

 魔石の魔力が尽きない限りリロード時間もないし、弾が詰まることもない。製作してくれたアルマには、本当に頭が上がらない。


 魔石銃を握りしめ、誰もいない空間に試し撃ちを行う。

 日々射撃練習を重ねていたため、動かない的であれば殆ど外さなくなった。


 撃ち終わった銃を、腰のホルスターにしまう。

 このホルスターもアルマが魔物の革で作ってくれた物で、普段は服で隠している。


 最初は腰につけた銃の重みに違和感しか感じなかったのに、最近は随分身体に馴染んで来た。この重みがないと、逆に違和感を感じる程だ。


 他者を傷付ける道具に、慣れつつある。


「これは俺を、俺達を守るための道具だ……」


 自分自身に言い聞かせるように呟く。

 握りしめた銃が、ずしりと重みを増した気がした。



 ……



 休憩を終え、再び空の道を走り始めて数時間。

 それは突然やってきた。


『トワ達は馬車の中へ! 外へ出ないで下さい!』


 セイを通してではなく、馬車の外からソティルさんの鋭い声が響く。


『と、トワ……! 凄い数の魔物……! 急速に近付いて来てる……!』


 フィーユも魔力感知したようで、怯えた様子で俺にしがみつく。

 ファーレスはまだ魔力感知の範囲外のようだが、周囲の様子を見ながら腰の剣に手をかけている。何か起きた時、すぐ対処出来るようにだろう。


『た、多分……ソティルさんが言ってた厄介な魔物の群れだと思う……』


 俺はフィーユの頭を撫でつつ、窓から馬車の外の様子を窺う。

 しかしまだ距離があるのか、敵の姿は見えない。


 魔力感知を持たない俺では、敵が今どの辺りにいるのか、どのくらいの数なのか、どの程度の強さなのか、何一つ分からない。


「クソ……」


 銃を遠距離スコープに切り替えながら、スコープを覗き込む。


「まだ見えない、か……」


 ソティルさん達の馬車の方を見れば、レンディスさんは敵を迎えるかのように、馬車の屋根に仁王立ちしていた。ソティルさんの姿は見えないので、恐らく馬車の中にいるのだろう。


「まぁレンディスさんがソティルさんを前線に出すわけないか……」


 レンディスさんが見据える先に、魔物の群れがいるのだろう。

 俺もスコープ越しに目を凝らす。


 スコープを覗き込んで数分。



「……見えた!」



 フィーユの言う通り、物凄い速さで飛んでいるのだろう。

 極小の粒が見えたかと思ったら、すぐにシルエットが分かるレベルまで近づいて来た。



「……嘘だろ?」



 俺は魔物のシルエットを確認し、思わず呟く。



 ―― その魔物は、人と同じ姿をしていた。



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