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平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第8章【ドラーク編】
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日々読んで下さりありがとうございます。感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、本当に励みになっております!

更新間隔があいてしまってすみませんでした…!

 

『はー……魔力がないというのは大変ですね……』


 魔力回復薬を飲み、体調も大分改善したのか、ソティルさんは服についた土を払いながら立ち上がる。

 そんなソティルさんに対し、レンディスさんは所在なさげに頭を下げていた。


『レンディス……人から魔力を奪ったり、もうああいうことをしちゃ駄目ですよ?』


『はい……』


『ちゃんと反省してるならいいんです』


 ソティルさんはそう言いながら、優しくレンディスさんの頭を撫でる。


『まぁ私の魔力はレンディスが引き継いでいるので問題ないでしょう。レンディス、道作りは貴方に任せます』


『はい……!』


 ソティルさんの言葉に、レンディスさんがやる気に満ち溢れた返答をする。任せると言う言葉が嬉しかったのかもしれない。

 レンディスさんは『ちょっと練習します』と言うと、少し離れたところで宙を歩きだし、強度等を確かめるように何度か魔法を打ってみたり、道づくりの練習を始めた。


 そんなレンディスさんの姿を見てフィーユも道づくりに挑戦したくなったのか、うんうん唸りながら空に向かってジャンプを始める。傍目には真面目な顔でピョンピョン飛び回っているようにしか見えず、俺は少し笑いながら声を掛ける。


『難しい?』


『うー……難しい!』


 ピョンピョン飛び跳ねながら『うー……? うーん……? こうかなー……? こう?』と首を傾げるフィーユを見て、ソティルさんが優しく手を取る。


『フィーユは筋がいいですね。魔素の実体化自体は出来ていますよ。あとは空間への固定と維持です』


 ソティルさん曰く、フィーユは魔力量が多いのは勿論だが、魔力の扱い方も上手いそうだ。


『恐らく……フィーユは幼い頃から強制的に強い魔力を扱っていたのでしょう。暴走することなく、この歳では考えられないほど大きな魔力を扱えています』


 ソティルさんはフィーユに助言をしながら、感心したように褒める。

 褒められらフィーユは嬉しそうな、でも少しだけ複雑そうな笑顔を浮かべていた。

 因みにソティルさんがフィーユを褒めれば褒める程、レンディスさんの目付きが悪くなっていったのは、まぁレンディスさんの性格からしたら仕方ないのかもしれない。


『ボクは実体化も固定も楽勝〜』


 セイはこの種の魔法はお手の物のようで、空間に見えない足場を作り、もちを乗せて遊んでいた。

 馬車の近くでのんびりしていたもちは、突然見えない足場に乗せられて驚いたような鳴き声を上げると、慌ててエクウスの上に避難していた。


『皆すごいな……』


 魔力を持たない俺と、魔力が弱いファーレスは遠くから眺めるだけだ。


『ファーレスも練習すれば出来るのか?』


『……いや』


『あ、魔力が足りない感じ?』


『……あぁ』


『へぇ……』


 地上派の仲間がいてちょっと安心した。

 これでファーレスまで空中を駆け出したら、空を駆ける皆の姿を、俺だけが地上でぽつんと見ることになっていただろう。そんなの、想像したら寂しすぎる。


『ありがとな、ファーレス……』


『……? ……あぁ』


 何故感謝されたのか分かっていないようで、無表情のまま若干首を傾げつつ、ファーレスが頷く。


『トワー! 出来たっ! 出来たよー!』


 フィーユはコツを掴んだようで、手を振りながら階段を登るように空を歩いてみせる。魔力だけでなくかなり集中力も使うのか、ゆっくりゆっくり、一歩一歩を確かめるように足を進める。


『おぉ! すごいぞフィーユ! でもそれ以上高いとこに行くと、スカートの中見えるぞ!?』


 俺はフィーユに聞こえるように叫びつつ、ある意味危険な高さにいるフィーユに慌てて注意する。

 フィーユは膝下くらいまで丈があるワンピースを着ている。普段は鉄壁の守りを見せるスカートも、流石に空中までは守備範囲外だ。


『へ!?』


 俺の注意に対し、フィーユが目を見開く。

 その瞬間集中力が切れてしまったのか、フィーユは空中から落ちてしりもちをついた。幸いそれ程の高さではなかったので、特に怪我をした様子はない。


『フィーユ! 大丈夫か?!』


『……トワのバカ! えっちー!』


 心配したのに、何故かフィーユに怒鳴られてしまった。


 ―― 見てないのに……


 解せぬ……と思っていると、立ち上がったフィーユが若干俺を睨みながら、ぽつりと問いかける。


『……見た?』


『いや、見てないよ』


『本当に?』


『本当に!』


『うー……』


 フィーユは疑わしそうな目で俺を睨みつつ、『ならいい!』と言うと離れていってしまった。俺はそんなにスカートの中を覗く人間だと思われているのだろうか……?


『解せぬ……』


『きゅ?』


 思わずぽつりと呟くと、エクウスの上にいたもちが不思議そうに鳴き声を上げる。


『もちも酷いと思うよなー?』


『きゅー?』


 何の話ー? といった様子のもちを抱き上げ、むにむにと揉む。ささくれだった心が癒やされていく。エクウスも慰めるように、そっと俺の側に擦り寄ってくれる。


『エクウスもありがとなー』


『ひぃーん』


 エクウスはずっと門に預けられていたので、久々の外で新鮮な草を食べていた。


『ファーレスも酷いと思うよな?』


 ついでにファーレスにも問いかけてみた。


『……さぁな』


『そこは「……あぁ」じゃないのかよ……』


 どうやら俺は、仲間達からスカートの中を覗く人間だと思われていたようだ……。


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