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平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第7章【女神編】
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日々読んて下さりありがとうございます。感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、本当に励みになっております!

 

 突然の論理の飛躍に、俺は頭が付いていかない。

 何故、どうして、そこから『先生の魔力を奪おう』に繋がるんだ……?


 あぁ、いや、先生の力がなくなれば、先生に群がる人もいなくなるし、理屈は通っているのか?

 でも力を奪われた先生はどうなるんだ……?


 レンディスさんは俺の疑問に答えるかのように、歪んだ笑みを浮かべる。


『勿論、先生の魔力の全てを奪ったりはしない。俺と同じだけ長生きして欲しいからな』


 この世界では、魔力の強さは寿命にも繋がるはずだ。

 更に言えば、魔力は様々な物を動かすエネルギーでもある。


 魔力を奪うと言うことは、寿命を奪うことにも、そしてエネルギーを奪うことにも等しい。


『魔力の殆どを失った先生の面倒は俺が見るつもりだった。俺が先生の手となり足となり、先生を支える。先生と2人だけの世界で生きる……素晴らしい考えだと思わないか?』



 ―― ヤバイ……! この人、ヤンデレタイプか……!



 話を聞きながら、薄々『まさか……?』とは思っていたが、レンディスさんは俺様属性ではなく、ヤンデレ属性の人だったようだ。


 俺は昔読んでトラウマになった、ヤンデレヒロインの小説を思い出した。

 途中までは愛情重めのヒロインの様子を楽しめたのだが、終盤ヒロインが主人公を監禁し始めた辺りで、もう怖くて怖くて仕方がなかった。

 どうやら俺にはヤンデレ適性がなかったようだ。


 今回はヒロイン……というか先生を閉じ込めようとしているので、立場が逆だが……。

 寧ろ先生から力を奪って閉じ込めようとしている辺り、可愛さの残るヤンデレヒロインよりも質が悪い気がする。


 益々『下手なことを言ったら殺される……!』と思い、俺が言葉を発せられないでいると、レンディスさんは特に俺の返事も聞かず、話を続ける。

 因みにセイも異様な空気に飲まれているのか、珍しくずっと黙ったままだ。


『先生が汚されないように、俺が俺の全てを懸けて守るのに……あんな奴等いらないのに……』


 レンディスさんがブツブツと呟く。


 最初に『俺の話を聞いて、何処が悪かったのかお前の意見を聞かせろ』とか言っていたが、完全にそれだ。その思考が原因だ!

 しかしこれは、第三者が下手なことを言わない方がいいだろう。


 俺はガードルさんと『いのちだいじに』を合言葉に行動すると約束したのだ。今ここで失言をしようものなら、恐らく待ち受けるのは死……!


 俺はレンディスさんを刺激しないよう気を付けつつ、ぎこちない笑顔を浮かべて『れ、レンディスさんの先生に……それとなく聞いてみますね……? 先生の意見を聞いて……何が駄目だったのか一緒に考えましょう……』と相槌を打つ。


 先生自身の言葉なら、きっと聞き入れてくれるだろう。


 レンディスさんも納得してくれるかと思いきや『俺は先生に会えないのに……何でお前が先に……』とブツブツ言っている。

 いや、こればっかりは仕方なくないか!?


『お、落ち着いて……レンディスさん落ち着いて下さい……』


 ひいいぃ……と涙目になりつつ、俺は必死にレンディスさんを宥める。


『まぁ……お前が来なかったら、俺は先生とコンタクトを取ることも出来なかったしな……。仕方ない……お前が先生と会うのを、特別に許可してやる……』


 少しブツブツモードから通常モードに戻ってくれたのか、相変わらず上から目線で許可をくれる。

 イラッとするものの、ブツブツヤンデレモードよりは俺様モードの方がずっといい。



『因みに……俺が行って先生を説得して……もし先生が封印から出ないって選択をした場合は……その、どうしますか?』



 この質問をするのは恐ろしかったが、聞いておかなくてはいけないことだ。


『た、多分……セイの力を借りれば、先生の意思を無視して封印から連れ出すことは可能です』


 これは事前にセイに確認済みだ。

 セイと封印内にいる2人の人間、どちらが強いのか聞いたとき、セイは自信満々に『当然ボクだよぉ〜』と言っていた。


 因みに、何故セイの方が強いのに石にされたのか聞いたところ、まさか石にされるとは思っておらず、『何してるんだろー?』と見守っていたらしい。セイらしい理由に何だか脱力してしまった。



『レンディスさんは……どうしたいですか?』



 俺としては先生の意思を優先したいところだが、俺が取引を持ちかけているのはレンディスさんだ。取引相手の意思を確認しておく必要がある。



『―― 俺は……』



 ……



『休まずすぐ先生のところに行けなんて……レンディスさんは人使いが荒いよなー』


『本当だよ〜! まぁボクはあいつの側にいたくなかったから別にいいけどぉ〜!』


 現在、俺とセイは先生に会うために、夕暮れで赤く染まる森を進んでいる。

 セイが大分遠くに見えるレンディスさんの屋敷に向かい、いーっと歯を向く。多分、あっかんべーみたいな感じなのだろう。


『ま、まぁまぁ……』


 セイを宥めつつ、カードルさん達にも『中の人と接触完了。引き続き調査続行』と光で連絡を送る。


『えーっと……カードルさん達からの返信はー……気を付けて、かな?』


 光による暗号通信は、慌てて頭に叩き込んだので少し自信がない。


『 "通信" 魔法とかないのかねー……? セイの声魔法? をもっと遠くで実行するみたいな……』


 電話やメールに慣れた俺にとって、通信方法がかなり原始的なこちらの世界は辛い。


『ツウシン……? 遠くで喋るのは、魔法が上手い人なら練習すれば出来るんじゃない〜?』


 セイはのほほんとした声で『ボクは自分の魔力が届く範囲なら出来るよ〜』とこともなげに言う。


『へ? セイは出来るのか?』


『出来るよぉ〜。因みにボクは魔素の揺らぎで音を理解してるから〜ここにいてもカードル達が喋ってることが分かるよぉ〜?』


 つまりセイを通せば、遠くに声を届けることも、遠くの声を聞くことも出来るわけだ。


『セイ……お前、すごいな……』


『本当〜?! ボク、すごい? すごい〜?』


 セイは凄さを全く感じさせない、のほほんとした声で喜ぶ。

 改めて、セイと今こうやって意思疎通出来ていることに感動する。


 セイの見ている世界がどんなものか分からないので、想像するしかないが、多分魔素を通して全てが可視化された世界なのだろう。

 そんな世界から、セイは人間や物の形を理解し、音を理解しているのだ。


 一体どれ程の時間をかけ、解析をしたのかなんて想像もつかない。


『セイって…… "何歳" くらいなんだ?』


『ナンサイ?』


 歳という概念を上手く伝えられず、日本語が混じってしまう。


『えーっと……あ、蜜草! 蜜草が咲くのを何回見た? 収穫祭とかあって、結構盛り上がってると思うんだけど……』


『えっとね〜……どれくらいだろ〜? すご~くいっぱい?』


『すご~くいっぱいって……』


 セイが何歳なのか、全く分からない。

 ただ人であるロワが300歳を余裕で超えていたことを考えると、精霊であるセイは更に上を行きそうだ。


『んー……セイが覚えている限りで、1番古い記憶は? その頃人は何してた?』


 歴史書のようなものがあるか分からないが、カードルさん辺りに聞けば、大体どれくらい前か分かるかもしれない。

 そう思い、セイに問いかける。



『えー……ボクの1番古い記憶~?』



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