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平凡サラリーマンの絶対帰還行動録  作者: JIRO
第5章【ロワイヨム編】
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日々読んで下さりありがとうございます。感想やFA、レビュー、ブクマ、評価、本当に励みになっております!

 

 話が終わった後は、ザソンさん自らレアーレの家を案内してくれた。

 てっきりレアーレが暮らした家がそのまま残っているのかと思いきや、かなり手が加えられているようで、中はミュージアムのようになっていた。


『……本当に、観光施設なんですね……』


 俺は中を見渡しながら、呆然と呟く。

 8割程は真面目な歴史博物館といった雰囲気で、レアーレの手記やそれに関する解説等が飾られていた。因みに残り2割には、ザソンさんの肖像画やグッズが飾られている。


『あっはぁ~! この肖像画やグッズはそこで買えるからねぇ~? あ、記念にサインも入れてあげよう!』


 ザソンさんは自身のコーナーに関して、それはもう詳しく解説してくれた。俺としてはレアーレのコーナーに関して、詳しく解説して欲しかったのだが。

 俺はザソンさんの解説を聞き流しながら、レアーレのコーナーをじっくりと見ていく。


 話の中に出てきたレアーレの言葉などは、手記に書かれていたもののようだ。


 木の板に彫られた解説は、歴史の専門家や魔法の専門家が残した言葉のようだった。


『―― "手記に出てくるデエスの森は、現在魔法的な力で封印されている。何人もの高名な魔術師が封印を解こうと試みたが、ついぞ封印を解くことは叶わなかった。いつかこの封印が解かれる日が来るのだろうか……" 』


『―― "デエスの森の封印は、いつ、誰が、何のために施したのかさえ、分かっていない。一体何が封印されているというのだろうか……"』


『―― "封印の中では、もしかしたら今も、女神様が暮らしているのかもしれない……"』


 俺は解説を読みながら、カードルさんに問いかける。


『デエスの森……カードルさんは行ったことありますか?』


『あぁ、あるぞ。不思議な感覚だったな。まっすぐ進んでいたはずがいつの間にか森を抜け、元来た道に戻っているんだ』


 カードルさんはその時のことを思い出すように、顎に手を当てながら答えてくれる。


『攻略法とか……あるんですかね……?』


『うーむ……難しいな……。研究者や我々騎士団も、森の中がどうなっているのか把握しようと、昔から何度も挑戦しているのだが……』


 カードルさん曰く、伝承が残っていない古い封印のようだ。

 もし危険な魔物を封じるため、森ごと封印したのだとしたら危険すぎる。せめて封印内部の様子や、封印の状態を把握しようと、色々手を尽くしているが殆ど何も分かっていないそうだ。


『……そうですよね。もし危険な魔物を封印していて、その封印が今にも壊れそう……なんてことになったら……!』


『あぁ。騎士団の戦力で対応出来るのか、住民の避難が間に合うのか……様々な課題がある』


 一応、緊急時のマニュアルのようなものは出来ているらしい。

 ロワイヨム……特にデエスの森周辺は、特に魔素が濃いらしい。それ故に強い魔物が発生しやすく、騎士団が創設されたという歴史があるそうだ。


『もしあの封印内がより魔素の濃い空間だとしたら……どれ程の強さの魔物がいるか、見当もつかん』


 カードルさんが厳しい顔で森の方を見つめ、呟く。


『……トワ、貴公がデエスの森に向かうと言うなら、止めはしない。一般人の立ち入りが禁止されている区域ではあるが、騎士団が同行していれば許可が下りる』


『あ、ありがとうございます……!』


『しかし……あまり期待はしない方がいいだろうな。これまでずっと解けなかった封印だ……。そう簡単に中に入れるとは思えん。それに、もし封印を解くなんてことになったら……』


 カードルさんの言葉を引き継ぐよう、俺は呟く。


『……中から何が現れるか分からない』


『そうだ』


 俺の言葉に、カードルさんも頷く。

 そこまで言ったところでカードルさんは表情を緩め、『まぁ、トワはこれまでに前例のないイセカイ人だ。何か起こるかもしれん』と笑う。



 ……



『では……ありがとうございました』



 俺達は沢山のお土産を貰いつつ、レアーレの家を後にした。

 ザソンさん達は、俺がデエスの森に行く時について来てくれることになった。


 カードルさんと俺の会話を聞き、『あっはぁ~! 面白い話をしているねぇ~! 何か起こるかもしれないなら、是非私も付いていきたいなぁ~!』とザソンさんが口を挟んできたのだ。

 因みにレタリィさんはザソンさんの言葉を聞き、 『スケジュール調整、どうするおつもりですか……』と呆れ果てていた。


 そんなレタリィさんに対し、ザソンさんは『それを何とかするのが君の仕事だろぉ~? 頼りにしているよ、レタリィ!』と相変わらず完璧なウインクをしながら、非常に無責任な言葉を吐いていた。


 まぁ俺としては、レアーレの子孫であるザソンさんも来てくれるならありがたい。レタリィさんのスケジュール調整能力に期待だ。



『じゃあ皆、またねぇ~! スケジュールが空いたら連絡するからねぇ~! デエスの森では、何か面白いことを起こしてくれると期待しているよぉ~!』



 背後から、ザソンさんの声が聞こえてくる。


『き、期待しないで待っててくださーい!』


 俺は後ろを振り返り、そう叫んで頭を下げる。

 後方からザソンさんの笑い声が、前方からはカードルさんの笑い声が聞こえた。


『わ、笑わないで下さいよ……異世界人だからって期待されても、本当何も特別なことなんてないんですから……』


 前方で笑うカードルさんに近付きそう言うと、『いやいや、1つ特別なことがあるだろう?』と指摘される。俺が『え?』と問い返すと、カードルさんがニヤリと笑う。


『まぁ、私の予想が当たるかは当日になれば分かる。恐らくザソンも、私と同様の予想を立てているはずだ』


『え? え?』


 俺は言葉の意味が分からず、何度もカードルさんと、後方で手を振っているザソンさんの方を振り返る。




『期待しているぞ、トワ』


『は……はい……?』



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