【100話記念】あみだくじ小説、100話記念絵、ミニキャラ漫画(★)
100話までに登場した全キャラを対象にあみだくじを行い、当たったキャラによる番外編になります。
本編では絡まないであろうキャラ同士の会話や、永久視点では見れないキャラの側面をお楽しみ頂ければ幸いです。
※本文最後に挿絵が入っております。
苦手な方は右上「表示調整」より、挿絵を表示しないよう設定をお願いいたします。
『……なんだか不思議な空間だねぇ……』
ぼんやりと、真っ白な空間を見つめながら、ロワが呟く。
周囲は一面濃い霧に覆われ、何も見えない。
『ろ、ロワ王!?』
そんなロワの声を聞き、アルマが驚愕の声を上げる。
『やぁ、アルマ。久しぶりだね。これは君の魔法かい?』
『いえ、違いますね。突然意識を失って……目が覚めたらここにいました』
ロワの問いかけに、アルマは困惑した表情で答える。
『ふふ、私と一緒だね』
『いや、なんでちょっと楽しそうなんですか……』
微笑みを浮かべるロワに、アルマが突っ込みをいれる。
普通に考えて、一国の王が突然意識を失い、訳の分からない空間に移動しているなど、一大事だ。
『誰かいるのか!?』
2人がそんな話をしていると、霧の向こうから鋭い女性の声が響く。そのままカツカツと歩く音が聞こえ、ロワとアルマの前にミーレスが姿を現す。
『ろ、ロワ王!? それにアルマ殿!?』
ミーレスは2人の顔を見て、慌てて跪く。
『あはは、そんなに畏まらなくていいよ。ええと……ナーエのギルドマスターのミーレス、だったかな?』
『はい……! お会いできて光栄であります……!』
ロワに声を掛けられ、ミーレスは跪いたまま頭を下げる。
『ミーレス、ここがどこだか分かるか? それから何が起こってるのか……』
アルマは腰の剣を抜き、周囲を警戒しながらミーレスに問いかける。
『いえ……突然意識を失い、目が覚めたらここにいたので……』
『あんたもか……』
アルマは困惑したように呟き、周囲を見渡す。
『……霧が濃すぎて何も見えないな』
『真っ白だねぇ……』
アルマの言葉に、ロワが穏やかに同意する。
『風魔法で霧を吹き飛ばしますか?』
ミーレスが現実的な打開策を提案するが、ロワが首を振る。
『ミーレス、どうやらこの空間は魔素がないようなんだ』
『た、確かに……! 魔法が使えない……!』
ロワの言葉で、ミーレスも慌てて精神を集中して魔素の気配を探るが、普段感じている魔素の気配を、全く感じられない。更に言うと、魔力感知も働かない。
『こ、困りましたね……』
こんな事態は初めてで、ミーレスもまた困惑の声を上げる。
『まぁここでぼうっとしてても仕方がねぇ! 取り敢えず辺りを探索するか!』
アルマが痺れを切らしたように『行動あるのみだ!』と声を上げる。
『あはは、そうだね。冒険してみようか』
アルマの言葉に、ロワも軽い口調で同意する。
『ろ、ロワ王……そんな軽い感じでよろしいのですか……?』
こんな異常事態はかなりの大事だと思うのだが、ロワやアルマの態度を見ていると全くそう感じられない。ミーレスはロワの軽すぎる返事に対し、変わり者という噂は本当だな……と実感していた。
……
一行が歩き始めて数分。『ヒィン!』と悲鳴のような、獣の叫び声が響く。
『……エクウス!?』
アルマはそう叫ぶと、鳴き声がした方向へ駆け出す。
『エクウス! やっぱりエクウスじゃねぇか!』
アルマは霧の先にエクウスの姿を捉え、そのまま抱きしめて頭を撫でる。エクウスも久々に会うアルマに『ヒィン! ヒィン!』と嬉しそうな声を上げる。
『……あー……失礼した。貴方の家畜でしたか。野生の魔物かと思い、攻撃してしまった』
『いや、こんな霧の中で突然魔物が現れれば仕方ないさ。命は助かったんだ、気にしないでくれ』
エクウスを攻撃していた兵士が、アルマに向かって頭を下げる。アルマは謝罪を受け入れつつ、兵士に話しかける。
『俺はノイ・マスル・アルマ。ノイで魔石加工を専門にやってるもんだ。ここらで見ない鎧だが……どこの者だ?』
アルマの問いかけに対し、兵士は慌てたように跪く。
『国家魔術師の方でしたか……! 私はナーエ・ヴィツィオ・ヴァイス。ナーエで警備兵をしております』
『あぁ……ナーエの警備兵か』
アルマは興味深そうに鎧を観察する。
『警備兵の鎧は基本特注品だからな。なかなかじっくり見る機会がないんだよな……。はぁん……結構しけた魔石使ってるな……』
アルマは鎧を指で叩きながら、失礼な感想を漏らす。
『こらこら……アルマ、やめなさい』
追いついたロワが、アルマの無礼をたしなめる。
『今日和、ヴァイス。私はノイ・グラン・ロワ。一応、ノイで王様をやっている者だよ』
あははと穏やかに笑いながら、ロワがヴァイスに挨拶する。
『ろ……ロワ王!? ほ、本物の……!? ま、まさか……!?』
ヴァイスは信じられないように目を見開く。
『ヴァイス殿……ミーレスです。信じられないかもしれませんが、この方は本物のロワ王ですよ』
ロワの後ろから姿を現したミーレスが、目を伏せて小声で囁く。
『あはは、信じられないかもしれないとは……失礼だなぁ』
『も、申し訳ありません……!』
ロワに苦笑しながら突っ込まれ、ミーレスは慌てて頭を下げる。
『すみませーん! そこに誰かいるんですか―!』
ミーレスが頭を下げたと同時に、辺りに男の声が響く。
『おぉ、まだ誰かいるみたいだな! おぉーい! ここだー!』
アルマが剣を握りつつ、男の呼びかけに答える。
ミーレスも頭を上げ、何が起きても対処できるよう、剣を構えて警戒を強める。
『あぁ、アルマ殿でしたか! 知っている方がいてよかった……!』
アルマの声を頼りに近づいて来た男は『突然知らない場所にいて……不安だったのです』と胸を撫で下ろす。
『あんたは……よくうちに武器の修理を頼みに来る、ヘイシャじゃねぇか!』
『お久しぶりです、アルマ殿』
『武器の調子はどうだ?』
『お陰様で……』
アルマは相手がヘイシャと分かると、剣を下ろし肩を叩く。
『今日和、ヘイシャ。君は確か―……ノイの貴族、XXXX家に雇われている兵士だったかな?』
ロワがにこりと笑い、ヘイシャに話しかける。
ヘイシャはロワの方を一目見て、ヴァイスと同様に目を見開く。
『ろろろろ、ロワ王!?』
ヘイシャは慌てて『ま、まさかロワ王に顔を覚えていて頂けたとは……! 光栄です……!』と頭を下げながら跪く。
『ふふ、そんなに畏まらなくていいよ』
ロワは観察するようにヘイシャを眺めた後、再びにこりと笑う。
……
『さて……霧の中をうろついてみたけれど……何もないねぇ』
ロワが困ったように呟く。
ヘイシャが合流した後、一行は数時間近く霧の中を彷徨っていた。
しかし、ロワの言葉通り、ただただ真っ白な空間が広がるだけで何もない。
『困ったな……』
アルマも頭を抱える。
『このままこの空間から出られないのでしょうか……?』
ミーレスが困惑した声を上げる。
『……ヒィン』
エクウスも不安気な鳴き声を上げる。
『……まさか、一生紅茶もない空間に囚われるのか……?』
ヴァイスが絶望的な声を上げる。
『なんということだ……』
ヘイシャも項垂れながら、頭を抱える。
『うーん……』
ロワはそんな一同を眺めながら、顎に手を当てる。
『……時間経過でも、探索でも、何も起こらなかった』
『そうですね』
ロワの呟きに、アルマが同意するよう頷く。
『……一定条件を達成ってとこかな?』
ロワはぽんっと手を叩き、そう呟く。
『……一定条件を達成、ですか……?』
アルマが不思議そうに問い返す。
『そう。かなり広範囲を探索したけれど、この空間には私達以外いなかった。よく分からない空間に、よく分からないメンバーが集まっているんだ。きっと、このメンバーで何か条件を達成する必要があるんじゃないかな?』
ロワがそう言った瞬間、空間が淡く輝く。
『……正解、かな?』
再び空間が淡く輝く。
しかしその後は、また真っ白な空間に戻ってしまう。
『……正解の時だけ光るって感じか?』
アルマがそう言うと、再び空間が淡く輝く。
『……決まりだね』
……
『あー……しっかし……ヒントもなく条件を探すって……どうすりゃいいんだ……』
アルマは頭を抱えながら呻き声を上げる。
何となく、この空間から出れるかもしれない道筋は見えた。しかし、『条件』と言われても、何のヒントもない。
『やはり今ここにいるメンバーに、何か関連があるのでは?』
ミーレスの声に、再び空間が淡く輝く。
『……このメンバーに関連のあること、か……』
皆互いの顔を見て、考え込む。
『ノイとナーエ……出身は違う……魔物であるエクウスも混ざっている……』
『ミーレスが混ざっているから性別も違う……』
関連を探そうと、皆ぶつぶつと呟きながらそれぞれの特徴を見る。
『全員に共通する点を探す方針でよいのでしょうか?』
ミーレスの問いかけに答えるよう、再び空間が淡く輝く。
『共通点……』
ヴァイスは一同を見まわし、『私は正直……特別共通点があると思えないのですが……?』と言葉を吐く。その直後、ハッと目を見開く。
『……分かりました! 全員、紅茶愛好家なのでは!?』
ヴァイスはこれしかない! と言ったように、うんうんと深く頷く。
しかし、部屋は光らない。
『……悪いが、紅茶はあんまり飲まねぇな』
アルマはバツが悪そうな顔で謝罪する。
『……そうですか、失礼しました』
ヴァイスは溜息を吐き、再び考え込む。
『……魔物であるエクウスが一番、共通点少なそうだよねぇ』
ロワはエクウスを撫でながら呟く。
エクウスは『ヒィン?』と不思議そうな声を上げる。
このメンバーの中で唯一エクウスのことをよく知るアルマに、全員の目線が集まる。アルマは顎に手を当てながら、『エクウス……エクウス……』とエクウスについて考える。
『エクウスっていやぁ……ペールのとこの魔物で……トワの旅についていったはずだな』
アルマがトワという言葉を紡いだ瞬間、部屋がこれまでで一番明るく輝く。
『……共通点、トワか!?』
アルマが驚きの声を上げると、再び部屋が一際明るく輝く。『そうか……トワは別の世界から来たとか言ってたもんなぁ。あいつの世界だと、こんな変なことが起きるのが普通なのか……?』と首を傾げながら、『皆、トワの知り合いってことか……?』と周囲を見回す。
『トワ……? あぁ、あの黒い髪に黒い瞳を持つ行商人、だったか? 貴族である私に歯向かう、いけ好かない奴だった』
ヴァイスが思い出したように、トワについて語る。
その瞬間、空間が輝き、ヴァイスの姿がその場から消える。
『ヴァ、ヴァイス殿!?』
ミーレスがヴァイスの名を呼びながら、周囲を見渡す。
『消えた……? 空間から抜けたということか……?』
ヘイシャがそう呟くと、空間が再び淡く輝く。
『トワ様との思い出を語ればよいのでしょうか……? そうですね……。自分がトワ様とお話したのは、ほんの少しの間でしたが……何となく、情が湧いてしまう。応援したくなってしまうような方でした』
ヘイシャが懐かしむように、トワとの思い出を語る。
その瞬間、再び空間が輝き、ヘイシャの姿がその場から消える。
消えたヘイシャがいた辺りを見ながら、柔らかな笑みを浮かべ、ミーレスがトワへの思いを語る。
『トワとの思い出か……。あいつは本当に困った奴だった。こうと決めたら、意志が固い。謝るくせに譲らない。だが……ヘイシャ殿の言う通り、応援したくなるような奴だった』
ミーレスがそう言うと、再び空間が輝き、ミーレスの姿もその場から消える。
『ヒィン! ヒィン! ヒィン!』
エクウスが、明るい鳴き声を上げる。
まるで自分もトワとの思い出なら、沢山あるのだと主張するように。
そして空間が輝き、エクウスの姿も消える。
『俺はトリなんてガラじゃないんでね。最後は王が締めて下さいよ』
アルマはそう言って『ガッハッハ!』と笑うと、ロワより先にトワとの思い出を語る。
『あいつは魔力がねぇ! 筋肉もねぇ! ヒョロヒョロで弱っちい! だけどその分、優しい奴だ! 歯を食いしばって努力する奴だ! やると言ったらやる奴だ! あんなに弱っちいクセに、なんだかんだナーエまで行っちまいやがった! このまま故郷にも行くんだろうさ! 俺はそう信じてる!』
アルマは一際大きく口を開け、『ガッハッハ!』と豪快に笑う。
そのまま、アルマも眩い光に包まれ、消える。
『ふふ、最後は私か……』
ロワは誰もいなくなった真っ白な空間を見つめ、笑う。
『トワは……私の大事な友人だね』
ロワがにこりと笑い、そう言った瞬間、眩い光に包まれ、ロワの姿も消える。
……
「……変な夢、見た……」
俺は目を擦りながら、むくりと起き上がる。
フィーユやファーレス、もちと共に、旅のルートについて話していたら、いつの間にか寝てしまったようだ。
「いい天気だもんなぁ……」
周囲を見回すと、同じくフィーユ、ファーレス、もちが、ふかふかの布団の上で寝息を立てている。
「……俺も、もう1回寝よ……」
ふわぁ……と大きな欠伸をして、柔らかな日差しの中、再び布団に横になる。
―― 何だか面白い夢を見ていた気がするが、どんな夢だったか忘れてしまった。
- END -
* * *
100話まで読んで頂き、ありがとうございました!
100話記念にこれまで登場した全キャラクターを描かせて頂きました。
■文字なし
■キャラ名答え合わせ用
→左上から下記になります。
ペッシェ、ナーエの商人×2【ミニキャラ】、ノイの嫌な貴族&盗賊【ミニキャラ】、ナーエの警備兵×3【ミニキャラ】、レッス、ブラックベア、ロワ
アルマ、ソルダ、ミーレス、ビックラビット
ウリボー、レーラー
スティード、ファーレス、もち、トワ、フレド、ペール、兵士A【ヘイシャ】
ノイの子供×2【ミニキャラ+プリン&木の実】、カードル【ミニキャラ】、ファム【ミニキャラ】、アヴァン【ミニキャラ】、メール
カルネ、ティミド、レイ
レギューム、フィーユ、だいふく達
エクウス、キングだいふく
* * *
本編ミニキャラの漫画リクエストも頂けたため、描いてみました!本編とあわせ、お楽しみ頂ければ幸いです。
ありがとうございました!
100話記念に何かやりたい…と思い、全キャラであみだくじをやってみました。結果は以下の通りです。
・兵士A&ミーレス
・ロワ&ヴァイス
・アルマ&エクウス
兵士Aは本編で名前が出ていなかったため、兵士Aだということが少しでも伝わるよう、「ヘイシャ」(HEISHIA)という名前になりました。
読んで下さった方も、何かこう……意外な組み合わせ等を面白く感じて頂ければ嬉しいです!笑
読んでいただきありがとうございました!




