祝!成人!
それから大体1ヶ月の間、朝から晩までクタクタになるまで働かされた。
店の売り子に始まり、お得意様へのご用聞きと商品の配達、家の裏の山での薬草などの採集、採集した薬草の加工などなど他にも盛りだくさんだ。
さらについでと、サラさん監修の元、剣の稽古。
学生時代に剣は習ってたからお手の物、とはなかなかいかない。
いわく、実践の剣は違うって話。
とはいえ、身体は鈍ってたんだけど、
「基礎は出来てるからすぐに取り戻せるよ」
って言ってもらえたし、ちゃんとがんばろ。
しかし、サラさんに剣を教わるなんて不思議。
そう思って話を聞いてみると、どうもサラさんは元冒険者だったようだ。
現役時代に、お兄ちゃんと同じパーティーを組んでいたらしく、その縁から一緒になったと言う話。
当時はサラさんは前衛で剣を振るい、お兄ちゃんは後衛で魔法での援護と、家で覚えた薬学を用いての回復役を担当していたらしい。
お兄ちゃん、仕事の為にとか言って、ガッツリ冒険者してるじゃないか!
にしても、魔法使いとか何それ。
そんな話聞いてないんですけどー!
魔法使いとしてパーティーに参加してたくらいだから、生活魔法レベルじゃ無いことは間違いないハズ。
もしかしたら、私も使えるかもと思うと心が弾む。
うん、楽しみになってきた。
そして今日、私は成人を迎える。
眼が覚めると、部屋の中を心地のよい光が指している。
体調は万全。
「ふぁーーーあ。」
大きなあくびを一つすると、軽く伸びをし、着替えを済ませる。
先週、サラさんに付き合ってもらって整えた装備品だ。
ちょっと可愛らしいデザインの物が多い気がするけど、お墨付きを貰っているので安心だ。
脱いだ物を片付けると、階下に降りる。
朝食を取ったら、早速冒険者ギルドに向かおう。
なんとはなしに考えながら居間に入る。
「成人おめでとう、アリス。」
「ほんにめでたいのぅ。」
「今日までよくがんばったわね、アリスちゃん。」
揃っていた3人から、誕生日の祝福を言葉を受ける。
「お兄ちゃん、お爺ちゃん、サラさん、ありがとう。」
私も心からの笑顔で応える。
「さて、成人の祝いじゃが、わしからはこれを贈ろうかの。」
と、お爺ちゃんが取り出したのは小さな袋だった。
ありがたく受け取りながらも、何なのこれ?と思っていると、
「これはな、いわゆる魔法の袋というやつじゃな。冒険者をやってく上でこれが有るのと無いのとじゃ、全く違うからのぅ。」
と、疑問を解消してくれる。
これがねぇ・・・と袋に手を入れてみる。
ん?袋の底に手がつかない!
何か物凄い物貰ってしまった?
テンションが上がって、何度も手を出し入れしてる私を見て、お爺ちゃんは微笑んでいた。
「お爺ちゃん、ありがとう!」
「んじゃ、次は俺か。」
続いてお兄ちゃんはローブを渡してくれた。
せっかくなので早速着てみる。
ちょっとヒンヤリ気持ちいい。
「これは、水の精霊の加護を受けたローブだ。旅をするお前をきっと守ってくれる。1ヶ月そこらしか働いてないお前にゃ、ちょっと・・・いや、かなりの高級品だが、成人の祝いだしな。ありがたく貰っとけ。」
これまたなんか凄そう。
精霊とか、学校の授業でチラッと話聞いたくらいだけど、存在してるんだ。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「お前も成人か・・・」
そう呟きながら私の頭を撫でる。
なんとも言えない感慨深い表情をしている。
お父さんとお母さんがいなくなってから、一番に面倒を見てくれたのはお兄ちゃんだ。
そう思うと、何か込み上げてくるものがある。
「最後に私からもいいですか?」
私とお兄ちゃんの様子を見ていたサラさんが話しかけてくる。
「今日の成人祝いで、一番エゲツないプレゼントが来たな。」
「あなた、そんなことないです。」
そう言いながら、渡されたのは小振りの剣だった。
見た目以上に軽い。
いや、むしろ重さを感じないといった方が正解かも。
鞘から抜くと、一瞬薄ボンヤリと発光したように見えた。
「ちゃんと、剣が認めてくれたみたいね。これは、私が現役時代に使用していた内の一つです。手入れはちゃんとしてありますから、大事に使ってあげてくださいね。」
それだけ言うと、お兄ちゃんに目配せをして一歩引いた位置に戻ってしまう。
「なんでか知らないが、説明を託されちまったな。そいつは風の精霊が宿った剣だ。そんじょそこらの武器屋じゃ手に入らない一品だな。きっと力になってくれる。」
そして、サラさんに振り替えると、
「本当にいいのか?くれちまって。」
と、一言。
その問いに対して、サラさんは静かに頷いた。
「あと、ついでにこれも持ってけ。」
と、渡してくれたのは沢山の回復薬。
「この1ヶ月の間に、おまえが自分で作ったやつだ。早速その袋が役に立つな。」
お兄ちゃんの言葉に従い、私は渡された回復薬を袋にしまう。
流石、魔法の袋!
全て入ってしまった。
それどころか、まだまだ容量は余裕そうだ。
どんだけ入るんだろ、コレ。
「さて、これからお前は冒険者ギルドに行くんだろ?今日の夜は成人の祝いってことで豪華にいくからな。ある程度の時間で帰ってくるんだぞ。」
「うん、わかったよ。」
私はそういうと、すでに用意されていた朝食を済ませると、早速出発することにした。
ジャンルにファンタジーを選んだだけあって、剣と魔法はデフォルトです。
今回、一気に色んな要素が出てきました。
が、今後もあまり深くは触れずにさらっと登場しているはずです。
その辺は、
この作者なら仕方がない!
と思っていただければよろしいかと思います。
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また、様々な感想を頂けるとありがたいです。
今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。