夜のお話し合い
その日の晩、店仕舞いをして家族が食卓を囲む。
いくら危険度の高い、サラさんの用意した食事とはいえ、食べざるおえない。
お昼はともかく、夜なら尚更だ。
まぁ、少しでも安心して食べられるように、夕食の準備はいつも手伝っている。
お兄ちゃんはともかく、私とお爺ちゃんが危険なのだから。
食事をしながら、他愛の無い話が繰り広げられる。
やれ商品がどうなのとか、来店した客がどうなのとか。
粗方食事が終わった頃、
「お爺ちゃん、相談が有ります。」
「ん?なんじゃな?」
意を決して私は話を始める。
「私、冒険者になろうと思うの。」
「いいんじゃないかのう?」
返ってきた答えは、あっさりとしていた。
あっさりしすぎていて拍子抜けもいいところだ。
「いいの・・・?」
「いいも悪いも、なりたいならなればええ。」
「いいのかよ、じい様。」
お兄ちゃんも驚いているようだった。
「やりたいって言ってんだからやればええ。どのみち来月には成人むかえるしの。」
「まぁ、じい様が言うなら、いいけどさ。」
お爺ちゃんに話を投げた手前仕方ないと、お兄ちゃんもどうやら認めてくれるようだ。
「よかったわね、アリスちゃん。さぁ、お茶を淹れてきましたよ。」
「サラさん、ありがとう。」
いつの間にか席を離れていたサラさんが、お茶を淹れてくれていた。
「サラさんの淹れるお茶は旨いのぅ。」
お爺ちゃんも、にこやかにお茶を飲んでいる。
確かに、お茶は美味しいものね。
「それでだ。冒険者をやってくにあたって、色々揃えなけりゃいけないが、その辺はどうなんだ?」
「うん、その辺も少し考えたんだけどね。お兄ちゃん、装備一式貸して。」
「バカ言うなよ。たまに採集にでるのに使うから、貸せれる訳ないだろ。」
まぁ、そう言うだろうとおもった。
とりあえず、頭を切り替え、顔の向きを替える。
「お爺ちゃん、助けて。」
「フォフォフォ・・・自分に都合のいい、ストレートな物言いだのぅ。」
回りくどい言い方を嫌う、お爺ちゃんの性格は理解しているつもりだ。
だからこその直球勝負なのです。
「まぁ、可愛い孫娘の頼みは無下には出来んのぅ。」
おぉ、上手くいった!
「じい様、流石にそこまで面倒見てやるのはやり過ぎだろ。」
「うむ、そうじゃのう。条件くらいはつけるかのぅ。」
むむ・・・お兄ちゃんめ、余計な事を。
「サラさん、お願いしてもよいかのう?」
「えぇ、構いませんよ。」
サラさんにお願いって、一体何するんだろ?
サラさんも、あっさりオッケー出してるし。
「じい様、サラに何をさせるんだ?って、あぁ、そういう事か。」
「うむ。アリスには明日より、成人を迎えるまでサラさんについてもらって家の手伝いじゃな。」
「えーーーー。」
心底嫌な表情が、今なら出来てるハズだ。
「だらけきった生活してたからのぅ。いいリハビリになるじゃろ。」
私の表情を思いっきり、スルーしてお爺ちゃんは笑顔を浮かべる。
「ま、確かにいいリハビリにはなるわな。サラ迷惑かけるな。」
「迷惑だなんて、そんな。家族なんですから。」
「やっぱりサラは最高の嫁さんだな。」
「まぁ、あなたったら・・・」
などと、二人は話し合っている。
一瞬で二人の世界に入るのは、やめてください。
とにもかくにも、明日から頑張るしかないようだ・・・
ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。
また、様々な感想を頂けるとありがたいです。
今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。




