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移動は続くよ

ゴトゴトと揺られる馬車旅は、今なお続く。

カーマイルに向かうというが、特に特徴を知らない。

いったい、どんな国なんだろう?


ベッラから見て、北東に位置する国で、気温が低く、海に行こうにも険しい山に阻まれて、移動も困難なため、塩については他国に依存している。

そんな、学校の授業で習う程度のことしか知らない。


それにしても、いい加減馬車に乗り続けるのも疲れる。

夜は、護衛の依頼で馬車に乗っている関係上、野宿をする際、周囲の見張りをしている。

それ以外は、ずーっと馬車の中だ。

これが客車であるならば快適なのかもしれないが、今乗っているのは商人が荷物を運ぶためのもの。

荷馬車に乗り心地を求めても、それは酷なものだろう。


5日目に突入しているのだが、今だに街や村に出くわさない。

これほど他の街と離れているというのに、ベッラは栄えている。

なかなか不思議な街だな。


おじさんには、極力昼間は動かないように、ノンビリしておくように言われている。

何なら眠っていてもいいとすら言われている。

熟睡は禁止だけど。

でも、自分の意思で熟睡する、しないなんて選択できる分けないよ。


仕方がないので、ナイトにちょっかいを出して時間を潰す。

魔導書があってもこの揺れの中では中々読もうという気にはならなかった。

気持ち悪くなること、必至だからだ。

最初のうちはナイトも構ってくれていたが、今ではそれほど反応しなくなってきていた。

まさか、面倒くさいと思われてる?

そんな私たちのことを、微笑ましく見ている姿が馬車の中にはある。


「どうしたの?カイン君。」


彼は、この依頼を一緒に受けた冒険者の一人だ。

私よりも後から冒険者になったらしい。

Dランクと同じランクであることや、歳も近いこともあって(カイン君の方が年下なんだって)仲良くさせてもらっていた。

彼にも同行者がいるのだが、御者席に行っている為、移動中はあまり顔を会わせる機会が無い。


「いえ、アリスさんもナイトくんも仲がいいと思って。」


「そうかな?」


端から見たらそんな風に見えるのね。

私も、仲がいいとは思っているので、そういう風に見える事に否定はない。

わしゃわしゃと、ナイトをもみくちゃにするように撫でる。

それには堪らなかったのか、手元をするりと抜けて、カイン君の横に逃げると、そこで丸くなる。


「あはははは・・・逃げられましたね。」


「むぅ。」


思わず笑われてしまう。

少し膨れる私と、緩やかに尻尾をくゆらすナイトが対照的に見えたのだろう。


「それにしても、アリスさんはカーマイルのどこに向かっているんです?」


「カーマイルに向かっているとしか聞いてないよ?」


「そうなんですか?すごいザックリしてますね。そういうことなら、もうカーマイルの国の中を移動してますよ。」


「えっ、そうなの?」


「ベッラから抜けて少しすると、すぐ国境を超えることになるから、一日目の内にカーマイルに来てることになりますね。」


「うそー。」


ちょっと驚いた。

確かにカーマイルとは国名であり、いくつか都市に別れているということは知ってはいた。

でも、国境なんてどこにあるのか知らなかった。

地面に線でも引いといてくれればいいのに。


「この辺の境は分かりづらいですよね。実際、明確な線引きがされてるわけでもないですから。」


「そうそう、分かりづらいよね。」


「ベッラが国境の街のような感じになってますからね。周りの国から見たら、なかなか辺境の地にあるように見られてるはずですよ。」


「そうなんだ。」


「国境線が曖昧なのも魔の森のせいですし、近くに街や村が無いのも魔の森のせいですね。」


魔の森の影響力に驚かされる。

実際問題、自分の住む家の直ぐとなりで魔物がうろうろしていたら落ち着かないだろう。

そう考えると、やはりベッラという街は変わったところにあると思い知らされる。

自分にとっては普通のことなので、ある種のカルチャーショックだ。


「カイン君って物知りだね。」


「そうですか?」


「私よりも年下なのに、私が知らない事知ってるもんね。」


「うーん、たまたま興味が有るものの話しになったからですよ。」


謙遜も使えるとは、ますます良い子だ。

きっと、地元では優等生で通っているんだろうな。

談笑を続けていると、ふいに馬車が止まる。

思わずバランスを崩してよろけてしまう。

その時、頭を打って星が回った。


「ったー。いったい何?」


私がよろけている間に、カイン君は馬車の外に飛び出していった。

バランス感覚いいね・・・

私も急いで外に出る。


「おう、出てきたか。もう少し対応が早くなるといいんだがな。」


「ごめんなさい、おじさん。それで、急に止まってどうしたの?」


「見てみろ、珍しいものが見れるぞ。」


そう言って、馬車の進行方向を指差す。

そこには、立派な甲冑に身を包んだ、恐らく騎士と呼ばれる人達がいた。

そして、木で出来た簡素な柵が、道を分断していた。


「こんなところに柵なんぞ無かったからな。この辺を治める貴族が欲目でも出したかな?」


おじさんが、くつくつと笑う。

道を通らせないように柵を作るとすると、最初に思い付く理由は、関所を設けたのではないかということだろう。

急に出来たとすると、商人の人も驚いているだろう。


「ようやく旅が楽しくなってきたな。これは揉めるか?一悶着あるといいんだがな。」


「私は嫌だよ。すんなり目的地に行きたかった。」


「なーに、こういうときに上手く対応してこその冒険者だろうが。」


実に楽しそうだ。

私は不安の方が大きいというのに。

しばらく様子を見ていろというので、静観する事にした。

『異世界で生きていく事になりました』の方にも書きましたが、

『異世界で生きていく事になりました』とリンクしております。

そちらも試しに読んでみていただけると、より話を楽しめるかもしれません。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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