解散
街に着くと、冒険者ギルドへ向かう。
討伐達成の報告と共にブラッドベアの出現を伝えるためだ。
今回は運良くおじさんが現れてくれたため助かったが、他の冒険者に同じ幸運が訪れるとは限らない。
レギンさん達のパーティーですら、あれだけの苦労をしたのだ。
よりランクの低い冒険者にしたら出会いは即、死につながる。
ギルドから警告を出してもらえれば、犠牲者も減らすことが出来るだろう。
ギルドに着くとリフィさんの姿を探すが、どこにも見られない。
朝の段階ではいたのに・・・休憩中かな?
そんなことを考えている間にレギンさんが手の空いていそうな職員をつかまえると、
「至急、支部長に話さねばならない事案が発生した。ガイエンのやつはいるか?」
「支部長は現在外に出ておりまして・・・」
「何?いつも肝心なときにいなくなりやがるな、あの野郎。それで、いつ頃戻るか聞いているか?」
「大変申し訳ないのですが、何も聞いていないのです。リフィを伴ってどこかに向かわれたようなのですが・・・」
どうもリフィさんはおろか、支部長もいないようだ。
どうしたものかと思案するレギンさん。
「まぁ、いねーんじゃ仕方ねーな。とりあえず解散でいいだろ。」
そう言うのはおじさんだ。
確かに、いないのであれば留まる理由はない。
討伐の報告を行い、その際に言伝を頼めば良い話だ。
「しょうがないか・・・それじゃこれで今回は解散とするか。内容が内容だ、報告は俺がしておく。報酬は後日分けることにするか。それと、回収したブラッドベアの素材を売った分はジャネルお前のもんだ。それについてもこちらでやっておく。」
「いや、別に要らねーけどな。特に依頼請けてやった訳じゃねーし。つーかいつの間に回収してたんだ?」
「そりゃ俺だわ、ジャネルの旦那。」
小さく手を上げるティムさん。
いつの間にとも思うが、そのくらい要領よくなければ冒険者なんて勤まらないんだろう。
「さすがにAクラスの魔物の素材を放置しとくのはあんまりにも勿体ないからな。」
「なら回収したお前のもんでいいだろ。仲間内で分ければいい。」
おじさんは報酬に全く興味なさげに言う。
「そうか。それじゃ報酬はありがたくいただいておく。」
「おう、そうしといてくれ。アリスがいるからついては来たが、どこで倒してきたか説明するのも面倒なんでな。」
こうして、臨時パーティーは解散となった。
レギンさんは依頼カウンターへ、ティムさんは買取カウンターへと向かう。
いつもならリフィさんと少し話をしてから帰るのだが今日はいないので、そのまま家に帰ることにしようとすると、
「アリス、ちょっと。」
こちらへ手招きするエルさんに引き留められる。
「エルさん、どうしたんですか?」
「まだ、お昼食べてない。一緒に、行こう。」
「そういえばお腹すきましたー。なに食べましょう?」
お昼ご飯を共に取ろうと提案してくる。
早めに仕事が終わると、よく一緒に食べていたからその流れはいつも通りだ。
「ジャネル様も、一緒に、どう?」
「俺もか?そうだな、アリスも行くなら行くか。」
「えっ、ジャネルさんも行くなら俺も行きたい。」
おじさんにも同道を打診するエルさん。
その提案をおじさんが了承すると、ガルシアさんも自分も連れてけと言い出した。
「え?ガルシア、来るの?」
「なんだよ、俺は行っちゃダメだって言うのか?俺だってジャネルさんの話いろいろ聞きたいぞ。」
「そう・・・ジャネル様、アリス、いい?」
ガルシアさんがついてくるのが嫌そうな表情をしている。
「私は大丈夫ですよ、エルさん。たまにはいいんじゃないですか?」
「そうだな。別にいいんじゃねーの?それより、あー、エルとかいったか?様扱いはやめてくんねーか?背中がむず痒くていけねぇわ。」
「でも、助けて貰ったから・・・」
「あ?呼び捨てで構わねーよ。ほら言ってみ。」
「・・・ジャネル。」
顔を赤くしながらエルさんは呟くようにおじさんの名前を呼ぶ。
さすがにここまで露骨に反応をしめすと、エルさんの気持ちはわかってしまう。
いや、わからない方がおかしいか。
颯爽と現れて危機を救ってもらえばそんな反応になってしまうのも理解できる。
エルさんにとって、おじさんは白馬の王子さまといったところなんだろう。
白馬に乗っていないし、王子さまなんてものでもないけど。
「それじゃエルさん、行きましょうか。」
その場に留まり続けていても仕方がない。
エルさんに移動を促すと、エルさんはコクリと頷く。
私達はどこで食事をしようか話ながら移動するのであった。
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