帰り道
戦闘が終わり、私はまずフードの中にいたナイトを確認する。
私が不意打ちを受けた時に、どうにも気を失っていたようで、そのまま外に出すのもどうかと思ったのでそのままにしておいたのだ。
ぐいっとフードを引っ張り覗きこむと、眠っている。
その姿にほっと胸を撫で下ろす。
街へと帰る道すがら気になったのか、おじさんが質問してきた。
「それにしても、アリス。なんであんなとこで魔物とやりあってたんだ?」
「えーっと、私冒険者になったんだけど。」
「ほー、そうなのかー・・・・・はぁ?」
「いや、だから冒険者になったの。」
「こいつは一体どういうこった?俺はてっきり店の手伝いでもしてて、護衛でも雇ってんのかと思ってたぞ。おい、ハゲどうなってんだ。」
「いちいちハゲって呼ぶんじゃねぇよ!そこの嬢ちゃんが望んでなったんだろ。俺は嬢ちゃんが、冒険者になってから知り合ったんだしなんも知らんぞ。」
おじさんがレギンさんに悪態をつきながら説明を求めると、ハゲ発言に怒りを表しながらも答える。
その答えに納得出来なかったのか、他のメンバーに視線を移す。
「俺も大将と同じだぜ。」
「俺もだ。そういやアリスはなんで冒険者になったんだ?」
「私も、知らない。」
ティムさん、ガルシアさん、エルさん3人とも分からないと首を横に振る。
「ふーん。そうなんか・・・あ、あと斧野郎テメェ何アリスのこと呼び捨てにしてんだよ、あぁ?」
「おじさん、自分の意思で冒険者になったんだよ。それと、ガルシアさんは年上だから呼び捨てなんて普通だよ。」
ガルシアさんに詰め寄ろうとするおじさんをなんとかいなす。
その際、おじさんの腕を掴むと機嫌が良くなったように見えたので、そのまましておいた。
「まぁ、その辺は家帰ってから家族でやってくれや。それより、豪炎の。えらく久方振りに会う気がするが、今まで何やってた。」
「あー、適当にフラフラしてたな。」
「らしいというかなんというか・・・」
おじさんの答えに呆れ顔になるレギンさん。
でもその気持ちはわからなくもない。
前に街に来たときもフラッと来てフラッと去っていった。
「生粋の根無し草らしからのぅ。それもしかたあるまいて。」
とはお爺ちゃんの弁だ。
「んで、大将。ちょっと聞きたいんだけどいいか?」
「なんだティム?」
「いや、普通に場に溶け込んでるけどそっちのご仁は?」
「私も、気になる。」
「あ、それは俺も気になってた。レギンさん、確か『豪炎の』って呼んでたし。」
確かにいきなり現れて、嵐のように暴れて、今は軽口をききながら街へ移動している。
ティムさんの疑問も当然か。
エルさんとガルシアさんも気になってるみたいだし。
「だとよ。お前の事が気になって仕方ないみたいだぞ。自己紹介でもしてやれよ。」
「なんで、んなことしなくちゃなんねーんだ。めんどくせぇ。」
レギンさんが話を振るが、乗り気ではない様子のおじさん。
仕方ないから助け舟を出そう。
「おじさん、名前くらい教えてあげなよ。」
「しょうがねぇな。俺はジャネル。ジャネル・ガーランドだ。」
おじさんの名前を聞き、騒然となる3人。
「やっぱりか!大将が『豪炎の』なんていうからもしかしたらと思ったが。」
「フフフフフ・・・ジャネル様・・・」
「やべー、超絶有名人じゃねーか。サインくんねーかな。」
それぞれがそれぞれ、三者三様に反応をしめす。
その様子にうんざりした表情をするおじさん。
「だから嫌だったんだよ。」
私とレギンさんは顔を見合わせると、互いに笑いあうのだった。
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