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その男、狂暴につき

「アリス、久しぶりだな。」


そう言いながらおじさんはズカズカこちらに向かって歩いてくる。

まるで散歩をするかのようだ。

魔物が数多くいるにも関わらずなのにだ。


「大きくなったなぁ。成人を迎えたんだっけか?」


おじさん歩みを止めるように魔物が襲いかかるがものともしない。

魔物に対し、殴る蹴るただそれだけ。

ただそれだけで膨れ上がった風船を叩き潰すかのように、魔物を倒していく。

その光景に、ティムさんもエルさんも唖然としている。

気づけばおじさんは私の目の前に立っていた。

私の頭を力強い手でガシガシと撫でる。


「おじさん・・・」


「いやー、本当に久しぶりだわって、何だ?泣いてんのか?」


そう言って頭を撫でる手を止め、私の顔を覗きこむ。

それまでの飄々とした空気が消え去る。


「どいつだ!俺の可愛い姪っ子を泣かせやがったやつは!」


叫び声が辺りの空気を震わせる。

目がつり上がり、周りを見渡す。

その視線がある一点に止まる。

それに呼応するように、おじさんの目線の先にいた魔物、ブラッドベアがのそりと近づいてくる。


「お前か、ぶっ潰す。」


肩を怒らせて、一直線におじさんはブラッドベアへと向かう。

ブラッドベアは立ちあがり、体を大きく見せると響く鳴き声をあげる。

そして、おじさんが攻撃圏内に入るやいなや、右手を振り下ろす。

その大きな腕がおじさんの肩に当たる。

その一撃でおじさんの足が地面にめり込む。

しかし、さほども気にしないといった風情でその場に微動だにせず立ったままでいた。


「弱ぇ!俺の肩叩くならもう少し気合い入れて叩きやがれ!」


そう言いながら胸の部分を掴むと、思いっきり引っ張る。

それだけで体勢を崩すブラッドベア。

前屈みになり、がら空きの肩を思いきり殴り付けると、


「最低でもこのくらいやってみやがれ!」


殴られた肩の部分が陥没し、一気に怯む。

その大きな隙を見逃すこと無く、次は顎を殴る。

すると顎が吹き飛び、そこからおびただしい量の

血が流れだす。


「オラっ!熊公!最初の勢いが無くなってんじゃねえか。」


四つ足になって立ったところを、胴を蹴り上げる。

ドムっという音を立て、巨体が宙に浮く。


「とっとと目の前から消えやがれ、このど阿呆が!」


腕に纏うかのように炎を出現させると、浮いた巨体に突き出す。

突き出した腕がその巨体を貫くと、纏っていた炎が一気に燃え広がり、ブラッドベアは断末魔の叫びを上げること無く、灰となって風に舞っていく。


それはあまりに呆気ない幕切れだった。

今までの私達の行動や感情はなんだったんだろう。

いや、Aランク相当の魔物だよ?

理解の外にある結末に唖然とする以外無い。


「何て奴だ・・・ブラッドベアが赤子同然とか・・・」


「ヤバい、カッコいい・・・」


ティムさんは驚きの声を上げ、エルさんはなんか恍惚の表情を浮かべる。


「ハッ、この程度かよ。さて、こっちは終わりだ。」


そう言って、再び周りを見渡す。

言外に、「俺にかかってくるやつはいないのか。」と言っているようだった。


ブラッドベアが倒れたことでなのか、または隠すことの無い威圧感でなのか、周囲にいたはずの魔物は姿を消した。

まれに逃げ出すものもいるとはいえ、全て逃げ出すとは思わなかった。


「嘘・・・いなくなった・・・」


私の呆けた表情を見ると、ニッカリと笑いながら


「ま、こんなもんだな。どうだ、おじさんは凄いだろう。」


といいながらガッツポーズを見せる。


「うん、凄い!」


私が素直に感想を述べると、とても嬉しそうだ。


「さて、後は・・・あいつか・・・おいハゲ、助けが必要か?」


「誰がハゲだ!って豪炎の。お前か、助かる。」


ハゲという言葉に強い反応をしめすレギンさん。

こちらをチラリと見て、おじさんの姿を確認すると驚いた様子を見せつつも、助勢を要請する。

それに答えるように、おじさんは先程と同じように、一直線に突っ込んでいく。

そして、目前まで走り込むと飛びあがり、


「ジャーンプキーーック!」


と、叫びながらブラッドベアを蹴り飛ばす。

その蹴りが見事に頭に当たると、ボールのように遠くへと吹っ飛んでいき、残った胴体がその場に倒れこむ。

ピクピクと痙攣しながら、頭があった部分から血が吹き出していく。


「よし、終わり!」


至近距離でその光景を見て、あんぐり口を開けたガルシアさん。

ひたすらに攻撃を仕掛け続けたのにも関わらず倒しきれなかった相手を、一撃でものの見事に倒されてしまったのだ。

そんな顔になるのも、十分に納得できる。

レギンさんはというと、驚くような様子もなく、


「相変わらずの人外っぷりだな、豪炎の。今回は助かったわ。」


と賛辞を送る。


「レギンのおっさんは耄碌したな。そろそろ引退時期かねぇ。」


「俺を年寄り扱いするんじゃねえよ。」


と、軽口を言いあう。

さっきもハゲとか言ってたし、昔からのなかなのだろう。

レギンさんは固まっているガルシアさんの肩を叩く。


「よし、アリス。家に帰るぞ。」


おじさんがそう私に告げ、戦闘は終わりを迎えた。

おじさん無双の回。

この作中でのチートキャラとなっております。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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