依頼の報告
そういえば、結局昼食を家でとり損ねたということを出てすぐに気付いた。
流石にお腹が空いた訳で、取り敢えず何か買い食いをしようと、朝と同じくパンでも買うことにした。
とはいえ、もうお昼時から大分過ぎてしまった。
あまり、いいものは売り切れてしまってるかもなぁ。
そんなことを考えながら道を歩く。
依頼の完了の報告以外、後は特にやることはない。
夜まで待機して、作戦実行。
そして、見事勝利を勝ち取る。
そのためにも、早く報告を終わらせてダラダラしよう。
ふと、視線を感じる。
しかも、下の方から。
目を向けると、「ニャー」と鳴くのは、部屋に寝かしてきた子猫だった。
なんでここに?
しゃがむと、ピョンと跳ぶようにして私の肩に乗り、そのままフードにスッポリと入りこむ。
よほどフードの中が気に入ったのだろうか?
何やら嬉しそうにゴロゴロと鳴いている。
その後適当にパンを購入すると、もさもさ食べながら移動する。
私が、パンを食べているのに気付いたのか、フードから顔を出すので、何となくちぎってあげてみると、喜んで食べていた。
猫ってパン食べるの?
ギルドに着くと、そのままリフィさんの所へ。
彼女は、ニコリと頬笑む。
「依頼の方はどうですか?」
「ええ、集めてきたんで見てもらえます?」
「えっ、もう終わったんですか?にしては手ぶらですけど・・・」
何も持たずにやって来た私を、不思議そうな顔で
見つめてくる。
腰に着けた魔法の袋を取り出すと、どうやら得心いったらしい。
「魔法の袋なんて持ってたんですね。」
「ええ、採集した薬草はここのカウンターに出せばいいですか?」
「はい、お願いします。」
そうリフィさんが言うので、私は袋を逆さにして、薬草のみを出す。
ドサドサと落ちていき、カウンターは薬草の山になった。
驚いた顔をするリフィさん。
だけじゃない。
例によって、他のカウンターに並んでいる冒険者の面々が何やらドヨドヨとしている。
後ろを見ると、
「なんだあの量!」
「あれ全部薬草か?」
「あそこで報告してるってことは、駆け出しだろ?詐欺じゃん。」
といった声が聞こえてくる。
そんなにすごい量かな?
家の手伝いで薬草集めるとすると、この量じゃまだまだ足りないって言われる程度なんだけど・・・
「で、リフィさん。これで依頼は達成って事でいいですか?」
「ええ、十分過ぎる量だわ。ちょっと待ってて。たまに毒草を間違って採集してしまう人もいるから確認しないと。」
そう言って、何やら呪文を唱え始めるリフィさん。
唱え終わると、目がうっすらと光を帯びる。
そして、山になった薬草を1つずつ椅子の横に落としていく。
覗くと箱が置いてあり、そこに落としているようだ。
しばらくかかりそうだったから、フードを引いて中を覗く。
どうやらお休みの様子で、気持ち良さそうに眠っている。
やがて全ての薬草を箱に落とし入れ終わると、光が消え、いつも通りのリフィさんの目に戻る。
「凄いわね、全部ちゃんと薬草よ。」
「一応、ここに来る前に家で仕分けてきましたから。で、今何してたんですか?何か目が光ってたけど。」
「ああ、鑑定の魔法を使ったのよ。確実に仕分けることができるから。」
こんなとこにも魔法!
鑑定の魔法とか使い勝手良さそう。
そう思っていた私の考えが何となく読めたのか、
「でも燃費が悪いのよ、この魔法。意識を散らすとすぐに解けちゃうし。」
「へー、でも凄い!」
「そうかしら。そんなに誉められると照れるわね。」
そう言いながらも満更でもなさそうだ。
「それで、薬草が十本で一束として78束ね。一束銅貨20枚だから銀貨15枚と銅貨60枚ね。カードを出してもらえますか?」
カードを渡すと、朝のようにカウンターに据えられていた小さな装置にカードを差しこみ、操作する。
その後、カウンターの下をゴソゴソするとお金を準備し、カードと共に渡してくれる。
「今日はお疲れ様。これが今日の報酬になります。これで、カードの方に今のランクが表示されましたよ。」
「ありがとうございます。」
「それでどうでした?初めての依頼は。」
「んー、以外と大変かなって。採集事態はそんなに大変じゃないけど、魔物と戦闘になったときはドキドキしちゃった。何とか倒せたけど。」
私の一言で少し目の色が変わるリフィさん。
「魔物と戦ったんですか?それはどこで?どんな魔物でした?」
「あー、北の街道から少しそれたとこにある草原ですよ。模擬戦闘で戦ったウェアラットより大きかったかな。」
「あぁ、あの辺りですか。でも模擬戦闘より大きなウェアラット・・・それで倒したウェアラットはどうしたんです?」
「そのままにして帰ってきちゃったけど、何かまずかったですか?」
「いえ・・・それはそれほど問題にはならないんですけど、持ち帰ってきてれば薬草採集より報酬がでましたよ。」
ガーン!!
それは考えが及ばなかった。
あのときは考えもつかなかった。
ガックリする私。
いつの間にか起きたのか、わたしを慰めるかのように、子猫が私の頭をペシペシ叩くのだった。
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