子猫飼育作戦打合せ
しばらく歩くと街に着く。
草原からの移動中は別段なにもなかった。
もっとも、それこそ魔物が蔓延るような状況では、誰もこの街を訪れるものがいなくなるのだろう。
それに街道は街を囲む4国の騎士団に、街の周囲は冒険者による常時依頼によって魔物は駆逐されている。
魔物避けの魔法もかけられていることにより、出現するのはまれだ。
通行門を通り、一度家に戻ることにした。
わざわざ食べに行かなくても、家で食べればすむ話だ。
ついでに採集した薬草のうち、どれが有用なものか判別したいとも思っていた。
さらにもう一つ、フードの中で気付けば眠っている存在についても話をしなくてはいけない。
ほどなく家にたどり着くと、サラさんの姿を探す。
何せ裏山での薬草採集の手解きをしてくれたのはサラさんだからだ。
どこかなと、台所の方に向かう。
しかし、姿を見つけることは出来ない。
それならばと裏庭に出ると、花壇の世話をするサラさんを見つけた。
「あ、サラさん。ちょっと時間ある?」
花への水やりを止めると、
「お帰りなさい。大丈夫よ、どうしたの?」
「いや、薬草の採集の依頼を請けて、沢山採ってきたんだけど、いまいち判別つかないのがあるから、見て貰おうと思って。」
すると、笑顔で
「えぇ、いいわよ。それじゃ、作業室に行きましょうか。」
「うん、お願い。」
「ところで、そのフードの中に何を隠してるのかしら?」
流石にサラさんだ。
フードの中に気付いたようだ。
軽くフードを触ると目を覚ましたようだ。
ひょこっと顔を出す。
「まぁ、猫?にしてはやけに小さいわね。」
じーっと、子猫の顔を見つめるサラさん。
子猫は顔を隠してしまう。
「およ?」
「あら、嫌われちゃったかしら?」
すると、子猫はフードから出て私の肩に乗る。
私は、手を伸ばすと胸に抱く。
「まぁ、可愛いわ。」
サラさんが恐る恐る子猫の頭に触れる。
それにも抵抗は無しだ。
相当に人懐っこい。
サラさんはこれぞ至福と言わんばかりの笑顔で頭をなで回す。
そして、それが気持ち良さそうにしている子猫。
「で、この子どうしたの?」
「外の草原に行ったとき、魔物に追われてたところをたまたま助けたんだよ。そしたらずっとついてくるから、そのまま連れてきちゃった。」
「そうだったのね。いいことしたと思うわ。」
「それでね、家で飼ってあげれないかなって。」
「きっとアリスちゃんが頼めば、お爺様は許してくださるでしょうけど、あの人はどうかしら?」
「そこで、サラさんにも協力してもらえないかな?」
うーん、とサラさんは悩むそぶりをする。
どんな答えが出るかな?
「そうね、協力するのはやぶさかではないわ。だってこんなに可愛いんですもの。」
そして、抱かせてと手を伸ばすから、子猫を手渡した。
どうやら、サラさんに抱かれる事に抵抗は無いらしく大人しくしている。
「それで協力はいいけどいつ頃話すの?」
「夕食終わったくらいかな。仕事が終わって、少し気が抜けるぐらいがいいかなって。」
「確かにいい頃合いかもしれないわね。」
「じゃあ、そんな感じで。」
サラさんが味方についてくれれば、勝ったも同然。サラさんがお願いすれば、きっとお兄ちゃんは首を縦に振るはずだ。
それから、少し打合せをすると、子猫はひとまず私の部屋に隠しておくことにした。
子猫を私のベッドに寝かせると、私の部屋ということもあってか、丸くなって眠り出す。
そのあと、サラさんに見てもらいながら採集した薬草の判別を行う。
薬草4割、毒草3割、雑草2割、そして使い方次第で毒にも薬にもなる草が残りだった。
薬草はギルドに届け、毒草と雑草は処分し、残りはしばらく保管しておくことにした。
有用かどうかの判別も終わり、私はギルドに依頼の達成を報告するために向かうことにした。
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