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魔法の使い方

「何にせよ、これから仕事だから話は終わった後だな。」


そう言って、お兄ちゃんはお店の方に行ってしまう。

すでに、サラさんも昼食の片付けを始めていた。

どうしようか、手持ちぶさたになってしまう。

こうなったら久々にゴロゴロして午後を過ごそう。

そう思うと、いくつか棚にしまってあるパンを拝借することにする。


部屋に戻ると、着たままになっていたローブを脱ぎ散らし、その上に剣を投げ出す。

ベッドに寝転がると、文字通りゴロゴロしだす。

あまり他人には見せられない姿だ。

つい、一月前を思いだしちゃうね。

そうしているといつの間にか眠ってしまった。

きっと、目に見えない疲れがあったのだろう。




しばらくして、心地のよいまどろみから目が覚める。

気がつけば、窓の外は真っ暗だ。

どのくらい眠っていたのだろう。

寝ぼけ眼を擦りながら、階下へと降りていく。

お店の方は静かになっていた。

何の気なしに覗いてみる。

もうあらかた店じまいが終わったのだろう。

お店のお手伝いをしてくれている人達も皆帰ったようだ。

帳簿をつけるお兄ちゃんとお爺ちゃんがそこにいた。

なんとなく気配に気づいたのか、お爺ちゃんが顔を上げるとこちらを見る。


「起きたようじゃな。無事に登録できて良かったのぅ。」


「うん、ありがとう。」


「さぁ、アリスも起きたことじゃし、今日はこの辺で切り上げて食事にしようかのぅ。」


「あ~、じい様先にやっててくれ。もうちょっとで終わるから、やりきっちまうわ。」


「ふむ、早めに終わらせるんじゃぞ。」


「はーいよ。」


居間に移動すると、すでに準備を終えたサラさんが待っていた。

テーブルに並ぶ数々の料理たち。

今日はとても豪華だ。


「今日は成人の祝いじゃからな。」


「う、うん。すごいね・・・」


確かに美味しそうだし、素直に喜ぶべき場面なんだけど・・・

そんな私の心情をすぐに察知したお爺ちゃんが、


「どれもこれも外で作らせたものじゃよ。」


と、こっそり私に耳打ちをする。

食事を始めていると、程なくお兄ちゃんが合流する。

とても美味しい食事になった。


「美味いが、何か物足りないな。」


とは、お兄ちゃんの弁。

すっかりサラさんの料理に毒される・・・もとい魅了されていたようだ。

食事が終わると、1日おあずけを食らう状況になっていた私は


「それでお兄ちゃん、魔法は?」


「そういやそんな話してたな。まぁ、腹ごなしにちょっと動くか。裏庭行くぞ。」


私とお兄ちゃんは裏庭に移動する。

サラさんが育てている花が植えられた花壇があるくらいの比較的殺風景な場所だ。


「んじゃ、やるか。」


「うん、お願いします。」


「俺が教えられるのはきっかけ位だな。とりあえず手を出せ。」


言われるままに両手を向けると、それぞれの手をお兄ちゃんが掴む。


「いくぞ。」


なんだか左の手のひらが温かくなってきた。

じわーっと、温まる感じだ。

次第にその熱は腕に、そして胸に至る。

すると、胸の中でその熱がグルグルと回っているような、変な感覚がやってくる。

その熱が私の体内で増幅されると、次第に右の手のひらから抜けていく。

体の中からその熱が無くなると、次は右の手のひらから熱が入り込んでくる。

そして、再び胸の中で熱が巡ると、左の手のひらから出ていく。


「ふぅ・・・こんなもんか。」


そう呟いたお兄ちゃんの額には大粒の汗が。


「呪文なんかもあるにはあるが、魔法はイメージが大事だ。手のひらの中に風を集めるイメージを浮かべてみろ。そして、それが実現するとイメージしろ。」


「う、うん。」


はっきり言って半信半疑だった。

こんなんで魔法使えるの?

でも、意地悪な事は言っても、嘘はつかないって知ってる。

お兄ちゃんを信じて、心の中でイメージしてみる。

とにかく風が手のひらの中でグルグル回りながら集まってくるイメージ。

すると、どうだろう。

右手のひらの中で、何かが渦巻いてきている。

ヒュォォォ・・・と音が鳴る。

きっと、風が集まるイメージが上手くいったんだろう。


「良さそうだな。それじゃ、その手のひらの中の風を空に放つイメージを浮かべてみろ。」


私はさらにイメージを深める。

自然と手を空に向かって延ばす。

手のひらから集まった風が一気に飛んでいくイメージ。

すると、ドムッという音とともに、空に向かって風がすごい勢いで昇っていく。


「おぉぉぉぉ・・・」


ついに使えた・・・

感動もあるけど、それ以上に何だか呆けてしまった。


「それだけ出来りゃ十分だな。魔導書くれてやるから、後は勉強あるのみだな。」


そういうと、私の頭を軽くはたくと戻ろうとする。

その後ろ姿に、


「お兄ちゃん!ありがとう!」


「あぁ。さて、風呂入って寝るわ。お前も早めに休めよ。魔法にまだ体が馴れてないから、一気に疲れが来るぞ。」


確かに、言われてみると何だか体がダルい。

すぐに部屋に戻り、ベッドに倒れこむ。

驚く程に体が疲れている。

でも、不思議と眠気はこない。

ただ、体が重くてダルいのだ。

でも、魔法が使えた。

私は眠りに堕ちる直前まで、魔法を使えた興奮に包まれていた。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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