お家へ帰ろう
とにもかくにも、模擬戦闘は終わった。
ガイエンさんも、さっさと戻ってしまったし、私も帰ることにしよう。
何かやる前に、気付いたら全て終わっていた気もするけど、ちょっと疲れたし。
それにしても、クルスさんの身のこなしは異常だと思う。
例え格下の魔物だとしても、あれだけの連続攻撃を躱し続けるなんて。
相当な実力者なのは間違いないだろうな。
でもそれ以上に気になるのは、あのリスだ。
凄くキュートなのに、ウェアラットを簡単に倒してしまうとか。
凄く気になる・・・
せっかくだし、ちょっと話かけてみようかな?
そんな事を考えてる間に、クルスは建物の方に向かって行ってしまった。
タイミングを逃したけども、この街で冒険者を続けていくのならどこかしらで会うこともあるだろう。
そう思い直すと、
「帰ろ・・・」
ボソリと呟くと、私もその場を後にした。
ギルドの建物に入ると、その足でそのままリフィさんの所に向かう。
帰るにしても、ちょっとご挨拶。
相も変わらず沢山いる人の群れをかわしていく。
リフィさんは朝と同じく、冒険者の登録カウンターの前に座っていた。
こちらは全然人が並んでない。
リフィさんはというと、何やら書類仕事をしている様子。
例え人が並んでないとしても、仕事はあるようで忙しそうだ。
私が近づくと、それに気づいたのか顔を上げ、私の顔を見ると笑顔を浮かべる。
そんな笑顔を向けられたら、私も思わず笑顔になっちゃうよ。
「お疲れ様でしたアリスさん。講習の方はどうでしたか?」
「ん~、なるほど~って感じでした。」
「まぁ、講習で出る話って、冒険者をやってく上で最も基本的な事を教えるだけだから、退屈なのは仕方ないわね。」
「あ、やっぱりわかります?」
さらりと心を読まれてしまった。
そりゃ、登録する前に何度も確認した話を聞かされればね・・・
リフィさんは、ちょっと真剣な表情に変わると、
「退屈な話かもしれないけど、とても大切な事だから、それこそ耳にタコができるくらい聞かされるの。」
「はい、肝に命じます。」
「うん、よろしい。」
ちょっとふざけて返事を返すと、リフィさんもそれにのってくれる。
そして、二人は顔を見合わせると笑ってしまう。
「それで、楽しみにしてた魔法適性はどうだっの?」
「ガイエンさんが、高い素養があるって誉めてくれたよ。」
「あら、支部長が魔法適性の確認をしてくれたの?珍しいこともあるのね。あぁ、お兄さんの事もあるものね。」
どうやら、いつもは魔法適性の確認をするのは別の人が行っているようだ。
どうも、お兄ちゃんの適性を確認したときもいたらしく、同じように高い素養があるのか自分で確認したかったようだ。
「高い魔法の素養がある人は貴重だものね。きっと支部長、アリスさんにも期待してたのね。」
「そうなんですか?」
「そうに決まってるわ。じゃなかったら自分で確認しないはずだもの。ほんと、自分の気になったことしかしないんだから。」
その後、ガイエンさんに対するちょっとした愚痴を聞きつつ、会話を続けた。
暫くすると、お昼を告げる鐘の音が辺りに鳴り響く。
「いけない、もうお昼になっちゃった。」
「うん、そうみたいだね。私もそろそろ帰るよ。」
「あら、長いこと引き留めるような感じになっちゃったわね、ごめんなさい。」
「ううん、気にしないで。私も楽しかったし。」
これ以上とどまるのも迷惑になるかと思い、その場を辞すことにする。
「じゃあね、リフィさん。」
「えぇ、またお待ちしてます。」
私は、また再び来ることを告げると、真っ直ぐに家に帰った。
ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。
また、様々な感想を頂けるとありがたいです。
今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。




