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呪われた金塊

 これは俺が怨ちゃんと付き合う前、高校一年生の時の話である。


 鳴り物入りで野球部に入り、先輩にも可愛がられていた。特に二年生の松岡先輩は俺を可愛がってくれたのだ。


 自分でいうのもなんだが、松岡先輩と俺は野球部きってのイケメンコンビである。しかも同じ外野手なので練習中も一緒にいる事が多かったのだ。


「おい、霊視。今度合コンいこうぜ。バスケ部の山田が企画してくれたんだけど、イケメンオンリーで参加したいらしくてさ。お前なら俺の次くらいにイケメンだから、山田もオッケー出してくれると思うし……」


 松岡先輩の次かよ。まあいいけど……。


 当日、俺はめかし込んで約束のお店に向かった。野球部の練習はナイター照明の元、行われているが、松岡先輩の口利きてであっさり休むことができたのだ。


 お店に入り、みんなでジュースを頼んだ。バスケ部の山田さんの乾杯で合コンは幕を開ける。


 四対四の合コンだったのだが、その中にタイプの女性がいた。優花(ゆうか)さんという清楚なイメージの女性。一つ歳上らしい。


 松岡先輩の明るさで合コンは盛り上がった。そして怖い話をしようと言うことになったのだ。


 そして、俺の番がまわってきた。幽霊の見える俺は、その店のカウンターの一番端に今実際に少女の幽霊が見える。その話をしようと思ったのだか、優花さんに気持ち悪がられるのも嫌だったので、過去にあった実際の話を作り話のような雰囲気で話し始めた。


「あれは僕が小学生の頃でした。同級生の友達と、そのお姉さんと三人で胆試しに行ったんです。神社に隣接する廃屋です。ドアは鍵がしまってたんですけど、リビングの窓ガラスが割れていたのでそこから中に入りました」


「霊視、なんだか怖そうだな」

 松岡先輩がそう言って身をのりだした。


「一階にはリビングがあり、その隣に事務所があったんです。その家の主は会社を経営してたようです。デスクの上はファイルやらブラウン管テレビのような形の古いパソコンやらが散らばっていました。その後二階に上がったんです」


 みんなが俺の顔を覗き込んでいる。


「二階の寝室らしき部屋に三面鏡があり、そこに宝石箱のような箱があったんです。恐る恐る開けてみたんですが何も入っていませんでした。何も入ってなかったので友達はは残念がり、箱から離れようとしたんですが……」


 俺は一旦話を止めてみんなの顔を見回した。


 優花さんが乗り出してくる。

「ど、どうなったの?」


「友達のセーターのほどけた毛糸が箱にひっかかり、箱が床に落ちたんです。何もなかったはずの箱から金塊が出てきました。友達のお姉さんは止めたんですが、友達は金塊を持ち帰ったんです」


「その後その友達に何かが起こったとか?」

 松岡先輩が口を開いた。


「はい。首を吊って自殺しました。友達だけじゃなく……そのお姉さんも」


「えー! 霊視君こわいんですけどお」

 優花さんが怖がって俺に抱きついてきた。うっしゃ! 心の中でガッツポーズをとる。


 すると四人の女の子の中の一人がガタガタと震えだした。


「歩美! どうしたの? 歩美、しっかりして」


 まずい! 俺には見えた。


「救急車!」

 松岡先輩が叫んだ。


 十分も経たずに救急車は到着。歩美さんは運ばれていったのだ。


 女の子二人が付き添いとして一緒に救急車に乗り込む。

 残りの五人はタクシーで病院に向かった。


 病院に着き、歩美さんの処置を待っていると一人の綺麗な女性が俺たちに声を掛けてきた。


「あの、わたし、念田紫怨と申します。さっき皆さんと同じお店で隣の席に座っておりました」


 これが怨ちゃんとの出会いであった。


 まもなくすると歩美さんが出てきた。気丈に歩いているのでもう大丈夫だろう。


「歩美、大丈夫? なにがあったの?」

 優香さんが心配そうに歩美さんの顔を覗き込んだ。


「うん。もう大丈夫。なんか急に息ができなくなっちゃって……。誰かに首を絞められてるっていうか、そんな感じだったの」


 俺は正直に話すことにした。


「あの……さ。俺、幽霊が見えるんだよ。あのお店のカウンター席の一番奥に一人の幽霊がいたんだよ。その幽霊が急に歩美さんに襲いかかって首を絞めたんだ」


「キャー! 霊視君、それほんとなの?」


 松岡先輩が真面目な顔で口を開いた。

「多分、ほんとだよ。こいつ、ほんとに霊が見えるんだよ」


 空気が凍りつく。


「あなた、ほんとに見えるのね? わたしには見えないけど、霊の声が聞こえるの」

 この台詞は怨ちゃんである。俺たちの輪の中に入ってきたのだ。


「その霊の声も聞こえたわ。首を絞められる直前だと思うんだけど……」


「な、なんて言ってたんですか?」

 松岡先輩が恐る恐る怨ちゃんの顔を覗き込んだ。


「あのね……『お前が(のろ)いの金塊を持ってた家の娘だな。弟とわたしの命を返せー』って」


 そこに居合わせた全員、鳥肌を立てた。


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