No.8 不穏
いろいろ忙しくて更新できませんでしたごめんなさい
m(._.)m
No.8 不穏
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夜の街。といっても、明かりはない。人もいない。今は何の意味も持たない廃墟ばかりが不気味にそびえ立つだけである。
_____警戒しつつ、短機関銃を右、左とせわしなく動かし、移動を続ける。
白木 由梨の左目の戦況計測装置が絶えず[DANGER]と訴え続けるが、無視する。_______敵が近くに存在することなど百も承知。今回は単独での作戦である以上、敵をできるだけ避けねばならないため、相手のだいたいの位置は把握する必要はあっても、警告にいちいち反応する必要は今回に限ってない。
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「___単独調査、ですか?」
_____長官室。そこは並々ならぬ緊張感の張り詰める部屋。
「ああ。_____先日送り込んだ討伐隊との通信が途絶えた.....といってもここでは日常茶飯事だが、一つ妙でな......」
「了解。」
おもむろに痩せぎすの初老の男____兼坂 刀治司令が椅子を由梨の方へ向ける。
「それと____通信が途絶える直前、隊とは別の人間を発見したような痕跡があった。隊を襲ったのは____idolaではないかもかもしれん」
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_____[DANGER]!!
一際警告表示の点滅が早くなっていたことに気付き、後ろから飛びかかってきていた物体に反応できた。
____タタタンッ!!
短機関銃が火を噴き、
物体は飛びかかってきた時とは逆の方向へ吹っ飛ぶ。
小柄のそれは、両手の鉤爪をアスファルトに突き立て、ブレーキをかける。
_____[claw monkey]。霊長類型のidolaである_____
___キアアアアアッ‼︎キアアアアアッ‼︎
claw monkeyが威嚇の声をあげ、鉤爪を少女に突き立てん跳躍する。
「ああッ」
気合を込め、由梨は右足でソレを蹴り上げる。
______グエアッ‼︎
claw monkeyが苦痛の声を漏らし、地面にもんどりうった_______
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_____idolaは生物と寸分変わりないのは姿だけではない。彼らの主動力は電流によって操られる[人工筋肉](装甲と骨格は鉄筋)であるため、二足歩行ロボットによくあるぎこちない動きではなく、自然を生きる者と同等、またはそれ以上の俊敏な体捌きを実現したうえ、身体の異常を察知するための[痛覚]、さらにはなぜか[声帯]まで、性質は違えど自然のソレを再現するかのように設計されている_______
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____タタタタンッ‼︎タタタタンッ‼︎
「畜生ッ」
いつの間にか群れに囲まれ、焦りと苛立ちで思わず声を荒げてしまう。
______こんなのキリがないじゃない‼︎_______
最後のマガジンを交換すると、薙ぎはらうように全弾を一斉射する。数匹が苦悶の声をあげ地面に倒れ伏すが、次の数匹が襲いかかる。この繰り返しが十回以上続いていたが、もう弾がない。
________銃が使えなくなったら、体術がある。
由梨はclaw monkeyの一匹の顔面を両手の掌で挟み込み、膝蹴りで首を叩き折りつつ、頭を回転させる。
____前に遭遇した時はこんな戦略的に攻めては来なかった。というか一匹攻撃した瞬間に後ろから攻撃しようとする辺り到底自我の強いこいつららしくない。司令の言ってた[襲ったのはidolaじゃないかもしれない]っていうのはまさか_________
振動刃を両手に抜き放ち、一匹を引き裂く。左後ろから突進してくる一匹を左で払い、ひるんだところを壁に蹴りで叩きつけ、そのまま圧し潰す。2時の方向から跳び上がった一匹を飛び回し蹴りで吹っ飛ばす______
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少女がclaw monkeyの群れを相手取り、大立ち回りを繰り広げる中、廃墟からそれを見下ろす人影がいた。
「......」
ガスマスクに防護服といった物々しい格好のその人物は、無言のまま廃墟の奥へと消えた_____
to be continued..........