No.7 休日
No.7 休日
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2/14,EAGLE第2支部基地____地下15階[慰霊碑室]。
花束を持った春が刻まれたばかりの名前の前で立っていた。
[........帰ったら、あげる約束だったよね]
置かれたハート型のチョコレートには、簡素なビニール袋に包まれ、色テープで作ったリボンがむすばれていた。
[.....お返しは、先でいいから_____多分これから当分会えないだろうし]
無理に笑顔を作るが、眉間にしわが寄り、また目頭が熱くなる。
[______ゲーム、もうちょっと借りとくね。
僕ヘタクソだから、やっぱ3日では無理だったよ]
____もう、泣かないと決めた。今更悲しんだって、いくらあの3人とはいえいい顔なんてするものか___
[もう、行くね。あっちでも_____元気でね]
熱い物が頬をつたう。それでも春は明るく笑っていた。
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「____なんて言ってた?」
由梨はカップを受皿に戻し、
窓を見ていた春に話しかける。
「...えっ!?」
「......」
聞いていなかったのか、と言いたげな由梨のジト目を見て、春が狼狽しはじめる。
「えっと........うんとね......ありがとうって」
一応聞いていたらしく、そそくさと答えると珈琲を口につける。
[.......そっか]
由梨は少しばかり安心する。
____3日は泣くかな、って思ってたのにな____
「...ところでさ、ハル」
「んー?」
春は口をつけつつ上目遣いで反応した。
「砂糖、入れてないよね?ブラック飲めたっけ?」
直後、黒い噴水が上がった。
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「これで3日分、か......」
追跡班を撃退して2日。今朝食べた乾パンとベーコンを最後に食料が底をついたことで頭を抱え始めていた蓮にとって、スーパーマーケット跡を見つけたことは天恵以外の何者でもなかった。
____[hunter]が自爆した場所から10Km。追っ手はそれ以上来ることはなく、2日間、刀を手入れの時以外抜いていない。____新鮮な事柄に、無意識に小さな笑みがこぼれていた。
______WARNING______
「...」
突如、多数の機械人形達が蓮を囲む。
______human Ⅰ型とⅡ型の混成部隊,か_______
一体のⅡ型が、円盤刃を唸らせ、地を蹴る____________
「もうちょっとくらいゆっくりさせろよ」
_______食料の入ったダンボール箱を一旦蹴蹴り離し、蓮は振動刀に手を掛けた。
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夜の廃墟街、燃え盛る炎。破壊の限りを尽くされた建物が、[崩壊の刻]の凄惨さを強調する。
______線を描くように地面が割れ、巨影が姿を現す______idola [centipede]。全長15m、ムカデ型のidolaである__________
牙を模した掘削装置、電磁エネルギー砲_____
EAGLEの装甲車部隊をいわゆる[ちぎっては投げ]する、確認されているだけで最も危険な種類の一つである_____いわば、[バケモノ]である。
と、小さな影がcentipedeの前に躍り出る。
___やや混じり気のある顔立ち、人形のような無垢な表情、目を合わせるだけで吸い込まれるような目。華奢そうな体。金と蒼のオッドアイ。それらと対象的な黒髪。
__________少年は、大鎌にもたれかかるように相手と対峙する。
「___君で、最後」
大鎌を手に取ると同時に地を蹴り、相手に肉薄する。
____対するcentipedeは、口から電磁球を発射する。
少年は右、左と小回りを効かせ、距離を縮めていく。
少年のすぐ後ろで、雷撃が炸裂する。
_____と、相手を見失う。
少年は一旦足を止める。
____centipedeが少年の背後の地面を突き破り、上から急襲する____ことを読んでいた。
大鎌を遠心力で背後に振り、相手の首根っこにあたる部分を刈り取った。
_____地面に倒れた首無しムカデは、当然二度と動くことはなかった。
少年はトランシーバーに淡々と、流暢に告げる。
「任務完了」
to be continued.......