No.3 闇夜の邂逅 (前編)
No.3 闇夜の邂逅 (前編)
[チームδ(デルタ)より全チームへ。human Ⅱ型と思しき残骸発見せり。....この跡は_______刀か?]
____ザザーッキュピーッ
[チームα(アルファ)より全チームへ。こっちは野宿の後があった。まだほんのりと赤い。奴はここを離れて数分も経ってない。つまり近くに居るってことだ。どうぞー]
_____ザザーッキュピーッ.........
[.....................]
少年は後ろで倒れているEAGLE 隊員から奪った無線機を放り投げ、傍にあった黒い刀を左手に引っ提げ立ち上がった_________
_________________________________________
人式Ⅱ型______それは、射撃が主で歩行システムが簡素なⅠ型とは対照的に、機動力が高く近距離戦に重きを置き、両腕の着脱式フリスビー型ブレードで圧倒的な殺傷能力を持つ。
通常、 [並みの人間]では近接戦は歯が立たない為、一体発見すれば隊員3人以上で短機関銃による集中攻撃が常套手段である。
_______追跡班 チームδが発見した痕跡は、そのⅡ型を近接戦で撃破する程の戦闘能力を持つ_________________[改造人間]が近くにいることを示していた。
_____________________________________
[チームδより、以上。_____了解。]
隊長服の男は、無線機をしまうと、
しゃがみこむ青年に視線を移した。
[おい、新入り]
[はい。]
青年____萩原 龍司は顔を上げた。
[現場検証はもういい。屋内偵察に切り替える。お前が先頭だ_____奴と同じ身体を持つお前なら真っ先に対処できるはずだ]
[...了解]
言うと萩原は立ち上がり、ハンドガンを取り出した。
__________________________________
萩原は親が疎ましかった。彼らが大学を決め、結婚相手を決め、仕事は医者を継がせるの一点張り。小学生の頃は医者以外の志望を口にするとすぐにぶたれた。とにかく早く親から逃げたかった。中学、高校は柔道部に入った。
_____警察官になって、寮暮らし。親の顔も見ず、決まったところに住む(最低限の勉学で)。そのための努力だった。だがそれどころではなくなった。
____高校を卒業し、公務員採用試験に合格した翌日______[崩壊の刻]事件が起こった。その日たまたま親の五月蝿い声から逃れるために居た図書館は、
幸いにも避難地域に続く地下道への入り口のうちの1つがある、その建物だった(idolaの存在がまだ都市伝説だったころ、当時の政府はidolaの存在を実証している状態であり、内密に解決できなかった時のために地下道が建設されていた)。
____それから親とは会っていない。死んだかもしれない。生きていても会うつもりもない。
_____避難地域に移住してどれだけ経ったか。
志願兵募集のポスターがそこらじゅうにばら撒かれた。当然誰も行くはずがなかった。
_______[食料と住居保証]の条件がなければ。
臨時住居に配布される生活用品は、寄せ集めのTシャツの繋ぎ合わせで作られた寝袋、1年は替えがない歯ブラシ、食事はインスタントスープ(味は素っ気ない)と堅パンのみ。これらにうんざりしていた萩原は、
乗り掛かった船とばかりに志願した_____
________________________________
[チームα(アルファ)より全チームへ。現在移動中。
先程からチームβ(ベータ)から連絡がない。何かあったのかもしれない。くれぐれも警戒されたし。こちらからは以上だ]
______丁度、路地裏から用事を済ませて出てきた。
そんな自然で、しかし流れるような動きで数十メートル先に立ち塞がった_____
平均的な身長。それなりの肩幅。
_____どこにでも居る少年である。[ここが数年前の街]で、[刀を提げていな]ければの話であるが。
_____[奴だッ‼︎足を撃てッ‼︎]
隊員達が銃を構えるのと、
少年が刀を抜き放ち地を蹴るのは同時だった___
to be continued.........