No.18 崩れ始める日々
No.18 崩れ始める日々
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「......非常事態宣言?」
由梨は首をかしげる。スマホを手に取り、地震、洪水、暴風、いやまさかと大雨情報を検索しようが、出てくるのは二、三年前のデータばかり。またポンコツ放送局の誤報だろうか?そうか。そうだよね。非常事態宣言なんて映画でしか見たことないもん。そうと決まればさっさと二度寝......する前に昨夜の余韻に浸るとしようかな________
____静かに回転する思考を、ドアを叩き割らんばかりのノック音が遮った。
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よく子供は「退屈だ」、「遊びたい」だなんて言って走り回る。そして、花瓶やお皿、高い壺なんかを壊してしまい、親からきつく叱られる。が、彼らは「なぜ怒られるのだろう」、だなんて思ってしまう。
________何故か?それは「自分のモノ」ではないから。彼らに限らず、他人のものを台無しにしても、「そんなくらいで怒るな」なんて言う大人だっているくらいだ。それは他人の痛手なんて分かろうにも分からない故。誰も自分の痛みになんて置き換えられない。いや、置き換えようともしない。そして普段保護されている「子供達」は、時に暴走し絶対に壊してしてはいけないものに手をぶつけてしまう_________
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解錠するや否や、凄まじい勢いでドアが開かれ、少々肉の付いた、丸眼鏡の女性がまくし立てる。
「小雨さん!?落ち着いて下さい!何があったんですか」
御近所付き合いで顔見知りなこの女性は、小雨、というこじんまりして愛らしい苗字とは裏腹に、気が強く、1度興奮すると早口が止まらない、むしろ土砂降りのような人間として由梨に認識されていた。
「いきなりばぁぁぁぁってでっかいクモが降ってきて次に巨人が建物突き刺してそしたらめっちゃスリムなロボットが電動カッター振り回し始めて」
「つまりどういう」
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地獄絵図。心霊映像。スプラッタ映画。自身にトラウマを植え付けるには、実に様々なメソッドがある。
______その中で郡を抜いて効果的なのは、[実際に見る]ことである_________
返答の代わりに吐き出されたのは、赤黒い飛沫だった。
「............」
女性はゆっくりと顔をしたに向ける。
その先には、自らの腹部から突き出ているものがあった。
「.........なにこれ.....なによこれ...」
脚の力が抜け、ひざまず
「ズシャ」
目を見開いた顔は、右斜めに滑り落ちた。
「......えっ.........?」
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to be continued......




