No.17 変わらぬ家族
No.17 変わらぬ家族
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「......それでスカートにコーヒー、ねえ」
マンションの一室。借りているのは当然高校生である由梨であるはずなのだが、ちゃぶ台を挟んで説教をするのは中学生の椿である。それでいいのか?答えはいわば、[それを言っちゃおしまい]というものである_______
「ご、ごめんなさいぃ......」
今この時、白木 由梨に姉としての尊厳は皆無であり、年齢上本来説教される側となるであろう白木 椿に正座をさせられる始末である。[自称クールビューティー]はどこにやら。
と、椿が手を叩く。
「はい、もう終わり。姉貴のドジは慣れっこだから一々長説教してたらキリがない」
「ちょっとそれどういう」
「何か?お姉様」
有無を言わせぬ切り返しに、由梨はいえ、と蚊のなくような声を出すしかなかった。
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「「いただきまーす」」
テーブルには野菜の玉座に黄金色に揚がった鶏の唐揚げがふんぞり返り、2人の手には青空の雲の色にも似た白米が食欲をそそる淡白な香りを乗せた湯気を上らせている。
「うまっ」
椿に間の抜けた声を出させたのは、黄金の唐揚げ様、その薄皮の衣の裂け目から溢れ出す、肉汁の甘みと黒胡椒の辛みのハーモニーだった。
「姉貴のご飯やっぱおいしいわ」
そう言いつつほおばった熱々の白米が、口に広がった唐揚げの旨みを優しく受け止める。
「えへへ、ありがと」
由梨はエプロン姿のまま、食事を口に運んでいる。
「あとはダサいところ直せば......」
「うるさいよ、ほっといて」
嬉しそうな笑顔から一転、ムスッと頬をふくらませ、ご飯をかきこむ。
_______案の定、噎せてしまうのだが。
「あっは、やっぱそのままでいいや」
「~~~~~~!!」
椿のクスクス笑いに、由梨は言葉にならない抗議をするしかなかった。
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「んじゃあ、おやすみ」
そう言いドアノブに手をかけるが、袖に背後からの引力を感じた。
「寒いから、一緒に寝ない?」
_____由梨は顔に熱を感じ、身体がムズムズし始めた。両親が離婚、親戚の家を転々とするなど、付き合いの長い弟のサインはすぐにわかる。ましてこれは初めてのことではない。
______[したい]のサイン。不謹慎にも弟に対して不埒な感情を持ったことがないかと言えば嘘になる由梨に、拒否など出来ない。いや、したくないのだ______
「...姉貴?」
答えも言わず、振り返りざま椿の唇に重ね、自分から部屋へと引きずりこんだ。
「姉貴......好きだよ」
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_____部屋が揺れる音で目が覚めた。
時計を見ると、朝10時をまわっていた。確か今日は日曜、か_______
隣に椿はいなかった。確かカラオケの約束があるんだっけ。そう思いつつ布団を出ようとする。が、直接肌が布に擦れ、もう一度布団にもぐりたい誘惑が襲う。
「うー、負けて...」
布団をひっつかみ、
「......たまるかあっ」
_____ひっくり返した!
「......テレビ見よ」
そう言い、由梨は生まれた姿のまま部屋を出た。
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「今回は、少年犯罪に詳しいモギ先生にお越しいただき......」
そんな声をズボンをはきながら聞き流す。
「今時の子供たちはね......」
続いてTシャツを羽織る。部屋の中だから、つけなくてもいい。むしろその方が気持ちいい。
ところで、テレビがつまらない。変えてしまおうか________
「......番組の途中ですが、お伝え致します。先ほど非常事態宣言が出されました。これは訓練ではありません。繰り返します。先ほど__________」
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to be continued......




