No.1 プロローグ
No.1 プロローグ
走る。名を叫びながら、走る。すぐそこでは、[何か]が人間を無残にも引き裂いたり、突き刺したり、マシンガン(?)で蜂の巣でしたり________だが今そんなことは気にしていられない。[そんなこと]などという言葉では、済まない地獄絵図だ。上がる悲鳴、飛び散る血飛沫。携帯電話のように痙攣する者、人形のようにだらしなく壁に倒れかかる者。
その中、少女は自らが目にした光景が声も出なかった。
目の前で、大切な人が、______たった1人の家族が、傷つけられようとしている。
それは腕の刃を振り上げた。
叫ぶ。喉が裂けるほど叫ぶ。
全てがスローモーション。それは腕を振り下ろし__
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..........り。
聞こえた音は、ぼやけた視界が晴れるのと比例して、だんだんと大きくなる。
[由梨!]
[うわあっ]
由梨と呼ばれた少女___白木 由梨は、実に6回目の耳元の叫びにようやく反応した。
[.......春]
戦友であり、学校で親友だった一条 春の顔が覗き込んだ。
「またあの夢?」
気が滅入る夢を見るといつもうなされる。同じ部屋の春が寝付けない程だ。
周りを見渡すと、隊員達がこちらを見ている。
それに、自分のスーツが汗でびしょ濡れ、それに夢と見抜かれたからには、いつもの3倍はうなされていたらしい。外から響く機動音に、だんだんと意識がはっきりしてくる。
「降下1分前」
アナウンスで、機内の空気が一気に張り詰めたものに変わる。
隊員達がヘルメットをかぶり、次々に立ち上がる。
「準備しつつ、静聴」
殲滅隊隊長が精一杯の大声を機内で張り上げる。
「相手は取るに足らない小物ばかりだ。万物の霊長の叡智を、我々人間の意志の強さを!あの機械仕掛けのオモチャ共に見せてやるのだ」
隊員はアサルトライフルのマガジンを確認し終わった者から降下のパラシュートを手に取った。
「降下10秒前」
重々しい音を立て、射出口が開く。
_____カウントダウンが始まった。
「5,4」
また、始まるのか。
「3,2」
またあんな所に行くのか。
「...1」
また_______人が死ぬ。
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時計の針の音が五月蝿い。
.....否、五月蝿いほど静かというべきか。
それもそのはず、ここは厳かな雰囲気な中年男性が3人も存在する空間。
________並みの隊員には入ることすら許されない、長官室__________________
「戦果は着実に出ている」
いかにも武闘派という雰囲気の男がやっと口を開いた。
「だが犠牲も多い。本来未来ある者が次々と......虚しいものだな」
「全くだ」
痩せぎすの男に、武闘派らしい男が相槌を打った。
「まだ17歳の少年少女に、人工肉体改造などと.....いくら志願してきた者がほとんどとは言え」
「そして奴らの力を借りねば奴らに勝てないとはなんとも」
[こちらの支部には適合者は2人....しかも17歳の少女だ。たった2人で作戦の柱となるなどと、無理があるのではないか]
「あー、その話だが」
ようやく口を開いた長身の男が、水を一口ふくみ、平坦と述べた。
「適合者の少年の訓練が完了した.....いつでも実戦投入できるそうだ」
to be continued.......