もし、私がいなくなっても
この世界は美しい故に汚く醜い。
都合の悪い事は無かった事にして、やがて忘れ去られる。
全ての物事が情報化される様になった世界では山に靄がかかる様に大切な物事も時間が経つに連れ霞みがかってやがて見えなくなっていく。
例えば学校でプリントが配られる。
それもバックアップデータが取られている。
例えば男女が恋仲に落ち結婚をする。そうする為に婚姻届を役所へ提出する。勿論データとして組み込まれる。
誰かと思い出を残す為に写真を撮る。誰が、何時、何処へ行ったかが分かるデータだ。
ありとあらゆる出来事がデータ化された為に起きた緩やかに消えていく感情、感傷、思い出。
データを見返せば知りたい物事について知る事ができる。
そんな美しい故に汚く醜いになった。
だけれども私が愛した唯一人だけ、貴方だけでも覚えていてくれるのなら私にとっては愛しい世界になる。
「だからね...」
病室のベッドの椅子。つまり、隣に座る貴方に声を掛ける。
「私を忘れないでね?」
目から少しだけ涙が溢れる。
貴方がそれを拭う。
こんな幸せな時も忘れられてしまうのだろうか?やはり少しだけ寂しい。
.........いいや、そんな事はないかな。
貴方は覚えていてくれるだろう。
私はゆっくりとこの世界に別れをした。
いかがだったでしょうか?今回は『私を忘れないで』や『思い出』をコンセプトにしました。
全ての物事が情報化した世界の中で感性が衰えて行く悲しい世の中で生きる人。死に行く人を書きました。
と、いう事で今回の花は『勿忘草(全般)』です。
次話も読んで下さると嬉しいです。