あの子といろいろあって一緒に暮らしている俺!?
ある日、自分の部屋の扉を開けたら、大好きな少女が立っていました。
俺は、熊野 剛。何もかも普通(成績は並以下)な高校生だ。得意科目は体育!サッカーをずっとしていて、自分で言うのもあれだけどエースを任されていた時期もある!こんな俺にも好きな人がいる。名前は佐間 理那。手入れの届いている腰まである長い髪。いつも教室の端で、小説を読んでいるような子だ。友達が少ないわけではなさそうだが、人と群れるのが苦手そうな感じだ。何故惚れたかと言うと、休み時間にグラウンドで友人達とサッカーしていると、視線を感じ上を見上げると佐間さんがいつも通り小説を読んでいた。その瞬間に風が吹き佐間さんの髪を撫でた。その時に髪の毛を耳にかける仕草をした佐間さんの姿に俺は目を奪われてしまった。この世の物とは思えないぐらい美しかった。それからは、佐間さんを見かけると少し目で追いかけてしまう。1度だけ話したことがあるのだが、慣れてない人と話すのが苦手なのか、少し戸惑いながら話していた。そこもまた可愛い。
こんな一途な俺も家でははサッカー命と言わんばかりのサッカー少年だ。母さんは、俺がすごく小さい頃に事故にあって父さんとの二人暮らしだ。それでか、仲のいい方だと思う。そんな父さんが急に
「剛。父さんが再婚するとしたらどうする?」
と聞かれた。俺は
「まぁ、いいんじゃない?その新しい母さんにもよると思うけど。」
と答えた。父さんは、何かを決断した顔をして頷いた。
「父さん再婚する。明後日からその新しい母さんとここで暮らす。その人も子供が1人いるそうだから、仲良くしろな」
「わかったよ。そいつの出方次第だけどね」
その時、俺は次の日大慌てすることになるとは思わなかった。
今日は日曜日だ。新しい母さんと兄弟が来るから部屋も片付け終わり真ん中で大の字で倒れている最中だ。家の大きさ的に俺の部屋が子供部屋になり、2人で寝るのだろう。もう一つの部屋にきっと父さんと新母さんが寝るのだろう。どんな奴が来るか楽しみだ。来た時は、やっぱり玄関でお出迎えするより、少し無礼に部屋から今出て来ました感を装い出て行った方が後々いいだろう。相手も緊張しているだろうし、俺はそんなに気にしてないし、緊張してません感を漂わせた方が相手も楽であろう。それに俺の部屋も分かるだろう。よし、そうしよう。
そんな事を考えていると、迎えに行っていた父さんのただいまという声と、失礼します。という声が聞こえた。そろそろ、俺の部屋の前に来るぐらいのタイミングの時にドアを開けた。すると、ゴンッと鈍い音とイタッという聞き覚えのある可愛らしい声が聞こえた。俺は、男が来ると思っていたのに女だった驚きと、タイミングが会いすぎて、これからの姉か妹になる存在のおでこにクリーンヒットしてしまった失態に驚きを隠せないでいた。そして、我に返った俺は目の前でおでこを抑えながらしゃがみこんだ女の子に
「ご、ごめん!大丈夫?」
と手を差し出した。
すると、
「だ、大丈夫…です…。す、すみません…心配かけてしまって…」
と、自力で立ち上がった女の子は俺が好きな人、佐間さんだった。
佐間さんも俺が兄妹になるとは聞いていなかったらしく、あれから一言も話していない。足をくずさないまま下を向き続けてもう2時間は経っている。新母さん曰く、佐間さんのお父さんは佐間さんが小さい頃に出て行って帰ってこなくなってしまったらしい。それでか人と群れるのが苦手になってしまったそうだ。新母さんも生活費を稼ぐために毎日朝から晩まで働いていて、いつも1人ぼっちだった佐間さんは、小説が好きな子に育ったそうだ。誕生日は俺の方が早いから俺が兄になるらしい。部屋は初めの一週間は、俺と父さんが一緒に寝て、そのあとは佐間さんと一緒に同じ部屋で寝ることになるそうだ。俺の理性が飛ばないといいのだが…慣れるとたまに毒を吐くそうだ。傷つかずに、心を開いたと思ったらいいそうだ。あと苗字は変えるらしいから、これから下の名前で呼び合わなければならないらしい。その話を聞いた時は、お互いすごくびっくりした顔をしていたが、呼ぶきっかけがないことが判明すると落ち着きを取り戻した。しかし、新母さんは、よく話す。育ちが関西の方らしく、たまにつっこんだりしているが、標準語を口にしている感じだ。そこがきっと父さんの心を打ったのだろう。そんな人の娘はものすごい口下手なのだが…
その後父さんと母さんは、晩御飯の買い出しに行ってしまった。2人残された俺たちは、お互い携帯をいじり塊あっていた。この空気に耐えられなかった俺は
「…なぁ、さ…り…り、理那…さん…」
と、言うと、
「ははははは、はい!?」
と、緊張しすぎてわけのわからない声が帰ってきた。急に呼ばれたのと、名前を呼ばれたからだろう。
「ゲームでもしない?一通り揃ってるけど…」
「…ゲ…ゲーム…?…うん!やり方わからないけど、やりたい!…あと…よ、呼び方…り、りなで…いい…」
なんでか、顔を真っ赤にしながら、そう答えた。少し見とれてしまい我に返った俺は
「わ、わかった!俺も剛でいいよ!ゲームなにしようかー…うーん…比較的簡単なパズルゲームにしよっかな」
ゲームを始めてすぐは、やり方を教えていたのだが、途中から頭のいいりなはすごい速さでマスターし、あっという間に俺の最高得点を抜かして行った。
「す、すごいね…さすが頭いい…りなだね…」
「そ、そうでもないよ!?ま、まずこんなに低い点数を取れる方が凄いんだよ…」
こ、これが毒か!?女の裏側ってやつか!?それとも、慣れて来てる証拠か!?どっちにしろ心に深くつき刺さるぜ…まぁ、学年の上位の成績のりなに言われても仕方ないけど…
父さんと新母さんが帰ってきて、久しぶりに美味しい手作りご飯を食べた。これから毎日食べれると思うとすごく嬉しい。さ…理那も料理をするらしく、今日も手伝いをしていた。理那の手作りご飯を食べれるなんて、昨日の俺は全くそんなこと考えていなかったから…正直幸せです!
その日の晩。父さんと俺は同じ部屋で寝た。その時に父さんは、
「…どうだ?新しい家族は」
「……すごくいいと思うよ」
「そっか…それを聞けて安心した。」
そのまま俺は眠りについた。
明日の学校に不安と期待で胸を膨らませて。