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46.きらきらのぴかぴか




増えてる……。


おかしい。どうしたことだ。明らかに人数が増えてるじゃないか。

わたしはひとりしか増やしていないはず!


ふんぞりかえっている(ように見える)金ぴかとその仲間たち。紅蓮、翡翠、紺碧と色とりどりで美しいが、要点はそこじゃない。そこじゃないぞ。バサバサの極彩色もいて鮮やかすぎて目にやさしくないのも、だ。そこはゆるそうとも。天然でこの色なのだから。もって生まれた色をけなすつもりなど毛頭ない。


しかしこの人数は許容範囲を越えている。

うちではこんな大勢は飼えま――もとい。こんな大勢は養えません!



「おお。戻ったか、我が主よ。鱗を磨いて待っておったぞ」


うろこ……?

首を長くして待ってた、ってことか?


ていうか待ってろなんて言ってないでしょ。ん。いや待て。言ったかな。言ったかもな。勢いでそれっぽいことは言ったかもしんない。これ以上ジャマをしてくれるな、という意味合いで。




昨夜の遼平さんとの出会いからこっち、頭のなかは「はやく話が聞きたい」って思いでいっぱいだった。

心ここにあらずで、その場にいたレンハルトはともかく、いきさつを知らないみんなさえ「どうしたの」って聞いてくるくらい。あきらかに様子がおかしかったようだ。もやもやぐるぐる気がつけば考え込んじゃって。


誘いに応じてダンスを踊ったら、すっころびかけた。ついでに足をくじいたことにした。ちょっと酔ってしまったみたいで、と相手には詫びておいた。バレたらあとでカザムさんにぶっ殺されそうだけども……いや、実際ころびかけたんだから大丈夫だろう。

これはフラグじゃない、フラグじゃないぞ!


そんなこんなで一晩ぐるぐると過ごして。

今日当日、朝からギルドに行ってみることにした。


一応、朝ごはんはちゃんといただきました。メルトもいるしさ。

もし小腹が空いてた場合にどうぞ、と用意されてたお夜食を流用させてもらった。レナリアさんには夕飯いらないって言ってあったんだけど、おかげでたすかちゃった。舞踏会ってあまり食べるヒマがないこともあるもんなのかもね。ドレスとか着ちゃってるしさ。がっつけないかもと。

本来の朝ごはんがなかったのは、今日のごはんはいいですよと彼女に伝えてあったから。


ほんとうは朝から街に繰り出して外食でも……って話だったんだよね。昨夜のことがなければ。

(リーフェ先輩たちは予定通り予定がいっぱいです)


遼平さんとの約束はギルドで連絡とろうってことだけ。どういう流れになるかわからなかった。行ってすぐに話をしようってことになるかもしれなかったので。予定は一旦、白紙に。


メルト、お耳ぺったんこにしてぶーたれてた。ごめんよー……。

遊ぶのはまだ日があるからさ。

んん、でも子どものときって時間が長いからなぁ。大人なら待てる話でもつらいよね。ふりまわされるのは。それが急な予定変更でたのしみ先延ばしときたら……ごめんっ!

どうしてもこれだけは!


あくまで予定通りに王都観光しつつ、ついでに確認して連絡とって、でもよかったかもしれないんだけど……そこまで平静にはなれなかった。メルトの気落ちや怒りを考えても、優先事項として譲れなかった。

正直、元の世界への郷愁が失われたわけじゃなかったし。だって、自分が生まれ育ったところで、親も兄弟も友人も親戚も……たくさんの大切なひとがいる世界なんだもん。


レンハルトにお供をお願いして、そそくさとギルドへ向かった。


さすが王都の中央ギルド、どデカイ建物で迫力。でも初見じゃないし、なにより今日は気もそぞろ。

自分と同じ黒髪は、なつかしい平たい顔は、威圧感のない程よき体格の男性はいないかと辺りを見回しながら、なかへ入った。


やけに人が多かった。目当ての人物は発見できず、とりあえず連絡確認をと受付カウンターへ向かえば行列ができてた。朝だから、というには度を越してる混雑っぷりだった。

もともと王都はどこもひとが多いが、即位式もあって普段以上にあちこちからひとが集まってきている。きっとギルドの業務もえらいこっちゃなことになってるんだろう。初日に来た時はここまでじゃなかったのに。朝だからかな、と思った。



「随分と混んでるな」


「うん……」


「あまりきょろきょろするな、主。刺激してしまう」


ぅぅん? 刺激とな。朝っぱらからそれこそ刺激的な発言だね。なんちゃって。


ギルド員なんて、うちの街でもそうだけど、見た目ゴロツキな方々だもんねー。何の身分保証もない異世界人のわたしでもハイハイと受け付けてくれちゃう職場ですもん、そりゃスネにキズもつなんちゃらかんちゃら。目があっただけで難癖つけてくるような輩がいるのは知ってる。


「ん、気をつける。レンハルトならすぐわかるよね」


レンさんは目も耳も鼻も、要するに五感すべてが鋭いからさ。近ごろは街なか歩いただけで人酔いしがちなわたしより、よっぽど頼りになる。

日本に居た頃はこんなにひどくなかったんだけどなー。逆に森とか林とか草いきれの深い場所を歩くのには慣れた。あっちをとればこっちが足りなくなるのは何故なんだチー力よ。徒歩チートはないのか……。


レンハルトは任せろと受けあうように金色の眼を細めてうなずいた。頼られたことを喜んでくれる、こんな表情を見るときゅんとする。あの立派な鼻づらを両手ではさんで、もにもにーっとしたくなる。

リアルわんこのみよしさんじゃあるまいし、レンさんはそんなことされても戸惑うだけだろうけども。大体レンハルトはわんこじゃなくオオカミだしな。


しばらく大人しく並んで待って、ようやっとあとひとりふたりで順番が、ってところで。

やってきちゃったのだ。例の金ぴかが。極彩色のお供を連れて。



「アサヒナ!」


大声じゃないのによく通る声だった。意識がもってかれるような声。


それに対して。

ちょっ、昨日の今朝なのにヤメて!!

と思ったのが最初の反撥。


困るんだよね!

アサヒナって名まえはこっちじゃ珍しい。昨日の大会を見にきてたひと、ここに居るかもしれない。居るだろう。仮装してたけど、背丈はごまかせないし、魔術師なのも明かしてた。そして今日のわたしの格好もいつもの魔術師スタイルのずるっとローブ。

素性がバレるじゃないですか!


しかも――なにアレめちゃくちゃ目立つんですけど?!


アナタなにものですか?

どこからどう見ても人族じゃないですよね?


燦然ときらめく金色のうろこ。荒々しいフォルムの強靭そうな顎。頭頂後部から顎までかけて幾本もの立派な飾り角がならび、まるで王者の冠のようですらある。歩くにつれ、悠然と揺れる、逞しく長い尻尾は恐らく必殺の一撃が繰り出せるであろう。


っかーーー!

背中に翼がないのが惜しいねぇ!


じゃなくて!


ドラゴンだよ、ドラゴン!! 金色ぴかぴかの鱗の!!

ぁ、竜 人 族 !!


あーそーいやそんなのもいたよなーと思い出しました。

竜人族かぁ……。

初めて見たよ。たぶん周りのひとたちもそんな感じじゃないかな。即位式なんかあると、こんなレア者まで見ることができるのか。そんなレアなひとがわたしに何の用なんだか。

異世界人だとかチートだとかバレたとか? う……それは困るな。


竜人族とは獣族と同じく「主従の契約」を交わすことができる。できる、可能だ、ってだけで、実際に契約した話は聞かれないそうな。竜人族さんが認めてくれないんだってさ。

それはそうだろう。

たしか竜人族はよその大陸で国家を築いていて、奴隷人種とは見倣されてない。寿命長いし、丈夫だし、腕っぷし強いし、魔法も使えるし、下手したら人族が奴隷にされてもおかしくないんじゃね?っていう。独立不羈のツワモノぞろいだ。

こちらの大陸には侵略支配する魅力を感じないから放置されてる。っぽい。彼ら的にはもっと暑くて肥沃な土地がお好みらしい。べつに変温動物ではないらしいのだが。


まっ、そんな人たちが敢えて人族と契約なんかするわけない、っていう。


獣族さんはさ、追い詰められてるから。魔法の契約はべつに敬われる必要はないんだよね。相手をねじふせればいいだけで。力ずくでも精神的にでも何でも。行き場を失くさせる、なんてのは常套だろう。

いまは社会情勢が「従った方がいい」って当人たちに自ら思わせるようになっている。

竜人族にはそれがない。社会的な強制力も、圧倒的な実力差も。



「知りあいなのか、主」


気のせいか。オイオイまたかよ、という響きが感じられたような?

違うぞ、レンさん。昨夜の遭遇とこれはまったく別件だ。昨夜の今朝でこれだ、けども。


「いやいやいや……」


「だが、こちらに来るぞ」


「一方的に知られてることはあるでしょ」


「それはそうだが……」


昨夜のあいつは?とでも言いたいか。言いたいだろうなぁ。ごめんよ。あとで全部話すとか言って、おあずけ食らわせっぱなしだ。心苦しいながらも、いまはとにかく話が済むまで待って!


あ、金ぴか竜人族、きた。



「アサヒナ」


まだハイとは言ってないのに最初っから断定的だった。耳につく声。ご機嫌そう。わずかに斜めに構えて、こちらを見下ろしてくる。背が高え。レンハルトより高え。優に2メートル超えてんじゃないか。

服装、上半身は胸当てだけ、下半身はなんかぴらぴらっとしたの。獣族の盛装と似てた。お肌、鱗だもんな。布とか皮とかで覆う必要ってあんまないよな。



「ほら見ろ、ヴィア。ちゃんと見つけられたぞ」


「ようございました」


お連れの極彩色は鳥人だった。ズバリ、五色の鳳凰だ。頭の冠羽もあるし。尻尾みたいな羽もあるし。背中に羽がないのはこちらも同じく。惜しいなんてもんじゃない。その代わりというのか、腕の肘あたりからふぁさふぁさと飾り羽みたいなのが生えてる。ほう。美しいのう。


じゃなくて! 見惚れてる場合じゃなくて!


このひとたち何の用?

ていうか、みんなすっごいこっち見てんですけど!


こ っ ち 見 ん な !


いやぁああぁぁああぁあ。

せっかく仮装までして目立たないようつとめたのにぃぃいいいぃいい。



「あ、あの……」


「次の方どうぞ!」


その時だった。前のひとの処理が終わって、受付のひとから声をかけられた。


わたしの番!


「あ、はい。はいはい」


やっとだった。

けっこう待った。昼休み時の銀行くらい待った。後にします、なんて言えるわけがなかった。


だいたい朝から気が急いていたのだ。もっと言えば前夜から。ずっと気になって気になってしょうがなかったのに、見ず知らずの竜人族なんぞに声をかけられたくらいで中断できるものか。


慌てて受付に飛びつこうとし――襟首をつかまれた。ぐえっ。



「待たぬか」


「待たぬ!」


「ぬ……?」


「いま忙しいの! 放して!」


「我とて昨日からずっとそなたを捜しておった。さあ、話を聞くがよい」


「よくねーよ! なんで今だよ!」


……げふげふ。


いつもなら頭のなかだけでおさめるツッコミ言語がズバッと口から飛び出てしまった。

や、レンさん、引かないよね? だいじょうぶだよね?


口の悪さを咎められないかと心配で様子をうかがったのだが、レンハルトは違った意味にとったようだ。自らより上背もある金ぴか竜人族に果敢にも立ち向かう。かったそーな鱗におおわれた太い腕をつかんで睨みつける。(手首にはごっつい腕輪があったんで前腕部をつかんでた)



「主から手を離せ」


「む。そなたもこの者の……」


じっ、とレンハルトを見据えてから、金ぴか竜人族は手を離した。ほっ。ケンカにでもなるかと思ったわ。やれやれ、ひと騒がせな。とっととあっち行け。いいや、こっちがあっち行こう。


受付、受付ー!



「待て、アサヒナ」


「あとで!」


「では、それが済んだら。契約をしてもらうぞ」


「お仕事?」


「魔術師とする契約と言ったら決まっておろう」


「はぁ……。まっ、いいや。いま忙しいから後でならいいですよ」


「うむ。待っていよう」


「まだ予定決まってないんで、そっち次第ですが。これから確認するとこなんで」



そう言い置いて、受付に向かった。


……うん。「まっ、いいや」はやめると反省したこともありました。


あああああ反省を生かしておくべきだった! あのときすぐさま却下しておけば!

ばかばかばかばか、わたしのばかっ! 後でならいいですよ、じゃねーよ!!


ばぁああかぁああああぁぁ……。


ああ……。


うかつにそんなこと言ったもんだから。受付で遼平さんの伝言を確認した後。

金ぴかのしつこかったことしつこかったこと、うるさかったことうるさかったこと。

後でならいいと言っではないかとしつこく、契約に関する言葉を軽々しく翻すのかとうるさく。


でもさ。まさかさ。思わないじゃないか。

出会って早々いきなり「主従の契約」の話を持ち掛けてくるとは。


……レンハルトもそうでしたね!


いやでもだってしかし竜人族って奴隷じゃないですしアナタ!

てことは本来の意味での「主従の契約」なわけで。

一般的には奴隷の契約だって思われてるアレですけど本来のかたちは違ってたっていう……。


ああもうめんどくさぁあああいいぃぃい!


わたし今それどころじゃないんだよね!

同じ世界の日本人に会って話が聞けるかもしれない瀬戸際なの!


前日から頭ぐるぐる許容量いっぱいのところに、やいのやいのと責めたてられて疲れ果てた。疲れて腹が立った。少し寝不足だったし、脳の興奮状態が続いてうっすら頭が痛かった。

会いたい人とは会えず、よくわからん人物に出食わして煩わされる徒労感に妙にいらついた。


遼平さんから伝言はあった。できれば今日の夕刻にギルドの前で、と。だから夕方まで時間はある。

でも金ぴかの話に耳を傾けるヒマはあったような、なかったような。

王都観光しよう!って昨日まで言っていた。メルトやアルト、もしかしたらテレスだってたのしみにしてたかもしれない。空き時間があるなら、彼らをよろこばせるために使いたい。


顔を会わせたばかりで、こっちの都合も考えず一方的に、契約契約とやかましく言い立ててくる失礼な金ぴか竜人族の若造(後で知ったが105才だった。若くなかった。竜人族としてはまあまあ若造の部類とはいえ)に、どうして気を遣ってやらねばならんのだ。


否――気遣いなど無用!

全力で断る!


とかしていたら、ギルドの受付ホールですげー目立ってた。ていうか、金ぴかたちが話しかけてきてからこっち、ずーーーっと目立ちっぱなしだった。うざい、うざすぎる。

いっそ無視して振り切って帰りたかった。

しかし相手は竜人族、なかなかそうはさせてくれない。従者らしき鳥人族さんもいたしさ。


わたしをかばって間に立ってるレンハルトはすんごいピリピリしていた。なにしろ獣族でも竜人族には敵わないから。一対一、魔法なしの場合、獣族に勝てる人族はまずいないんだけども。


そんなこんなで揉めてたからだろう。ギルドの奥の方からひとがやってきて「こちらへどうぞ」されました。え、連行ですか。ちがいますか。待遇悪くはなかったすね。とくに威圧もされなかったし。

ここがギルドじゃなければ魔法でとっちめてやるのにーーー!と普段なら決して考えない危険手段を想像してしまうほどイライラしてたので助かりましたけども。

とはいえ、長居はしたくない。一刻も早く帰りたい。のんびりお話するつもりはないぞ。


連れてかれたのは受付脇の廊下の奥にある応接室っぽいところ。

案内役のひとは立ち去らず、脇にひかえて様子見の態勢。立会人兼監視役ってとこだろう。


相手、竜人族じゃあねえ。ふつうの揉め事ならその場でコラッて鉄拳制裁でもおかしくないけどねえ。返り討ちにあっちゃうってのもあれば、よその強国のニンゲン相手にその待遇は国際問題になっちゃう心配も。


……あれ?


わたしなんかすごい面倒なことに巻き込まれてないか? と、ここでやっと思い当たった。

いや、巻き込まれる気はない! と断固として思った。


とりあえず衆人環視は免れたので丁度いい。さすがに大勢ひとのいる受付でやるのは憚られたが、ここなら構うまい。魔法をつかうことにした。も、もちろん穏便なヤツをだ。いくらイライラしてても暴力的な手段は妄想止まりで。


えいっ! 結界!


封じ込めてやりましたとも。

いきなり閉じ込められて金ぴか竜人族はきょとんとしていた。たぶん。ドラゴンヘッドの表情なんて読めない。オオカミヘッド以上にわかんないわ。目ひらいたままだし、無防備につったってるし、意外だったのではないかと想像。


さーあ、かーえろー♪


と待てよ?

わたしが帰っちゃったら、これ誰が解除するの?

あでも、竜人族って魔法つかえるんだったな。本人が何とかするでしょ。


とか何とか考えて、ドアへ行きかけて、向き直って、やっぱりそのまま出て行こうと方向転換しかけたとき。

金ぴか竜人族と目があった。

赤みを帯びた金色の眼。瞳孔が縦長。なんとも印象的なそれをすっと細めた。


そして手をあげる。右手でするりと撫でるように。ふうっと自然な吐息のごとく結界をかき消した。


何も乱さない行為だった。魔力の扱いが桁外れにうまいのだろう。結界の構成をときほぐしながら、それを維持していた魔力を吸い取ったのだ。

と思う。たぶん。浅学なのでよくわかんなかったが。

ふつうは結界を無理やり解除すると多かれ少なかれ魔力が暴走する。そこに含まれていた魔力が急に解放されることになるから。せいぜい場が乱れる程度だけども。昨日の試合で結界を壊されまくっても影響なかったように。

ちなみに結界の破壊は、呪詛返しみたいに術者への反動があったりはしない。もしそんなだったら、方々の結界を維持してる魔術師はおちおち夜も眠れないじゃない。もちろんそういう機能をもたせてつくれば別だろうし、近くなら気づくこともあるだろうけど。場の乱れを感知できる術者なら。



「……ふむ。悪くはない」


「かなりよろしゅうございますよ。さすがハル様が見初めた魔術師です」


極彩色鳥人の合いの手に、金色竜人族は機嫌よさげにうんうん頷いている。ふぅん。仕草はふつーにニンゲンなんだ……ってもう! つい余計な感慨にふけってしまうわ! ドラゴンだの鳳凰だのこの架空生物どもめ!


金ぴか竜人族はまたもおっきな眼を細めた。


「この程度で我を封じ込められるとでも?」


身長差ゆえだけでない見下し目線と、両腕を左右にひらいてのお粗末とでも言いたげな仕草。

カチンときたね。


えいっ!×10!

結界マトリョーシカ!!


どうだ!


10個の結界を重ね張り。徐々に大きくなっていく箱型結界を入れ子にした。絶対やぶられない必要はないのだ。時間稼ぎができればよい。いくら魔力扱いが上手でも手間取るはず。



「行くよっ、レンさん!」


「え、あ、うん」


「では失礼しますお騒がせしましたありがとうござました」


立会いのギルドのひとに挨拶してから、とっとと退出した。なんか唖然とされてたような。

竜人族にすげない態度をとったから? 結界芸もやりすぎだったかな?

まぁこの程度イマサラだよね。どうせ昨日の試合でそこそこやってしまったし。やわい結界なら素早く張れるんですーというタテマエは破ってないし。でも一気にたくさん張りすぎたかなー。


それはともかく。早くみんなのところへ戻ろう。夕方までめいっぱい王都観光しなきゃね。


ばたばたとギルドを出ると、帰りはレンさんに頼んで抱え運んでもらうことにした。わたしの足じゃ追いつかれるかもしれないもんね。レンハルトの足でも、もしかしたら追いつかれてしまうのかもしれないとは思いつつ。


うん。思ったよ。思ったけどさ。


まさか先回りされてるとは!




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