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会社小説  作者: 古河晴香
6/11

「もう結婚しない人」 その後(2)

電車が到着し、会社帰りの乗客たちが駅から出てくる。

金曜日なので、他の平日よりは皆、多少晴れやかな顔をしている気がする。

その人波の中から、恵を探す。

すると、向こうも探している様子で左右を見回しながら、

人波の中で歩調が乱れないように気をつけながら歩いてくる姿が見つかった。


ちょっと手を挙げて合図をすると分かったようで、

にこっと笑ってそのままの歩調で

人にぶつからないよう気をつけながら、こちらへ近づいて来た。


「お疲れ様」

「お疲れ様です。すみません。遅くなってしまって」


申し訳なさそうながら、

ちょっとはにかんだような笑みを見せたことが、

新鮮で、はっとさせられる。


「全然構わないよ。それより、トラブルって大丈夫だった?」と聞くと、

やれやれ、といった様子で、

「あ~、それが、なんとか。また後で話しますね」とのこと。

この、溜息ついて、やれやれ、といった表情は会社でもよく見る。

さっきの笑顔は見たことがない種類の笑顔だった。


自然な会話を心がけるが、社外で待ち合わせて会うという、

初めてのシチュエーションで、

先日、車で送った時とは違って、

ついでだから、といった言い訳が立たない。

緊張して変なテンションになりそうだ。


それじゃあ、お店こっちだから、と歩き出して、気付いた。

「あれ、都築さん、今日スカートなんだ。珍しいね」

そう言うと、

「あっ、ちょっと、久しぶりに引っ張り出して、はいてみました……。

せっかく飲みに誘っていただいたので、ちょっとはお洒落をしなければと思って……」


そう言いながら、恥ずかしそうにちょっと身をかがめて膝丈のスカートを抑えて、

少しでも丈を長くして足を隠そうとする仕草をした。

そんなことをしても丈は長くならないのだが、何か可愛らしい。


20代の女性が、自信ありげに細い生足を惜しげもなくさらして

ミニスカートやショートパンツで歩いているのを、

三輪は「おお~」と素直に感心して、

色気よりも健康的な印象を受けていたものだが、


こうして普段パンツスタイルの女性が初めて見せた膝下というのも、

新鮮で、見てはいけない物を見たような、得した気分である。

夏の間も日に焼けなかったためか色も生白そうなのが、

ストッキングを透しても分かる。


いつものヒールの太い黒パンプスではなく、

甲に宝石を模した飾りのついた

女性的なラインのベージュのハイヒールをはいていて、

足首にストラップがあるのもいい。


三輪は靴フェチとまではいかないが、どちらかといえばハイヒールが好きだ。

前に、オフィスにピンヒールをはいて来た女性に対して、

「ああ、なんか、踏まれたくなるようなヒールだねえ」と軽口を叩いたら、

セクハラですよ、と言われたことがある。

もちろんマゾの気もない。


「あの、恥ずかしいので、あまり見ないでくださいね」

三輪の視線に恵がそう言うと、

「え、せっかくだからよく見せてよ」

と言って三輪が恵から距離を取って、全身を眺めるふりをすると、

「やっ……だ、ちょっと、やめてください!」

と恵がまたスカートを抑えて逃げ出しそうな足取りになるので、

「分かった分かった」と、三輪は恵の横に並びなおす。


いかん。

これではただのエロ親父と会社の女の子の会話だ。

今日はもっと大人のデートにしなければ……。


しかし恵も、会社での虚勢を張っている様子とは違い、

三輪と二人きりで、しかもプライベートということだからなのか、

いつもより雰囲気が柔らかいような気がする。

さっきから時々見せる、はにかむような笑顔など会社ではまず見られない。

会社では、どちらかと言えば、理知的に取りすましている。

 

恵はプライベートではどんな女性なんだろうか、

と考えながら、とりあえず飲み屋に着いた。


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