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magnet  作者: 華梨
不穏な影、突然の再会
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第八話:初耳です、そんな話

そのあと、色々な話をした後、ソレイユはアリアに向かって言った。

「色々不可解な点については僕が調べてみます。分かったら教えましょうか?」

「よろしくお願いします。私も出来ることがあったら協力します。情報でも集めましょうか?」

アリアも手伝えることがあるのなら何でもしたい一身でそう言った。


「そうだね、もし貴女が黒髪じゃなく金髪だったら一緒に情報集めも出来たかもしれませんが」

この国では黒髪は目立ちすぎて不向きですからね、ソレイユは笑ってそう言った。


残念だと思いながらも、道理だと思ってアリアは納得した。

そして、二人は別れた。



ペンダントを探さなくては。

そう思ったアリアは駆け足で、昨日ユーイといた場所の真下と思われる所へ向かった。

これは、ソレイユが「僕は記憶力に自信があるので言っておきますが廊下にペンダントは落ちていませんでしたよ」と告げたためである。

窓からペンダントが落ちる…こともなくはない!アリアはそう願った。

 一階の来客の部屋がある練に向かったアリアは誰も見ていないことを確認すると、窓からひょいと出た。

 城の外と城壁の間はこの場所では狭く、人二人が並んで歩くぐらいしかない。

だから、多分ペンダントはもしここに落ちているなら誰にも拾われていないはずだ。アリアは祈りながら、窓から見られないようにしゃがんで歩いた。


それから歩くこと数分。

「あった…」アリアはペンダントを見つけることが出来た。拾って軽くついている土を払うと、そのペンダントを抱きしめる。

ありがとう神様。ありがとうソレイユさん。

アリアは有りとあらゆるものに礼を述べる。もちろん心の中で。

「良かった…」

なんだかよく分からないけれど、見つかって良かった…。


その時、人の話し声がアリアの耳に届く。何を話しているかは分からないが、すぐ近くにいるようだ。


こんな所で、誰?好奇心にかられて思わずアリアは草むらに隠れながら覗く。

 庭師の手がここまではなかなか行き届かないらしく、草むらがこの辺りには生い茂っている。

そのことにアリアは感謝しながらも聞き耳を立てた。


「それで、どうだったの?」女性の声がした。顔を見れば金髪のもの凄い美女だった。

 豊満な胸を強調するようなそれでいて、気品溢れる高価な服に身を包むその美女はかなり高貴な身分の人だろうとアリアは見当をつけた。

美女に尋ねられた男性が口を開く。男性の髪はオールバックの薄い青色で瞳も同じ色。身長は高めで、声の調子は低く冷たい雰囲気だ。顔はよく見えない。どちらも年は三〇代ほどだろうか?いや、美女は二十代かもしれない。


 ああ、これはメイの言っていた、デートというやつなのだろうか?恋人同士??

恐らくメイに言わせれば「これは密会現場ね!既婚者同士の危ない恋…、ああ素敵」という返答が期待できるだろうがアリアには分からなかった。



「そのことですが、王妃様。動きが…」


え?今なんて言った?


アリアは自分の耳を疑った。

そのことですが、王妃様…、そのことですが、王妃様…。

さっきのセリフがアリアの頭の中で何度も再生される。オウヒサマ?追う日様?…王妃様?


「ええ!王妃様!?」アリアは思わず声に出して言う。

「何者だ!出てこい」腰に帯びた剣を抜いた男の怒鳴る声にアリアは身を竦ませた。


…うう。この自分の短慮さに泣きたい。

アリアは胸元のペンダントを両手で握りながら思った。


*     *     *


アリアは王妃様に関する評判を思い起こした。

 確か、王妃には三人の子供がいて、王亡き後も王子が成人するまで支えると言って、実質政権を握っている政治的手腕に長けた人だと聞いている。

 実物を見て、子供を産んだとは思えない完璧なプロポーションを見て、天はこの人に何物与えたのかと本気で疑った。まさに、才色兼備であった。


分かっている。これは現実逃避だ。

 この状況をどうしようか、取りあえずアリアは現実と向き合うことにした。

そしてその結果、このまま隠れていようかと思ったが、見つかったらもっと怒られると思ったのでおとなしく出ることにした。


「…!!」おとなしく出てきた瞬間に男に剣の切っ先を向けられてアリアは恐怖に震えた。

ぎゅっとペンダントを強く握った。その時のことだった。


ペンダントが赤く光ったかと思うと男の持っていた剣が音もなく真っ二つに折れたのだ。

「な、何!?」男の焦った声。王妃様?も驚いて目を見張っている。


もちろんアリアがそんなこと出来るはずもなく、何故こうなったのかさっぱり分からなかった。

「キュウ~」自分の足元を見るまでは。


 可愛らしい鳴き声をする生き物がアリアの足下でアリアの足に顔をすりすりしていた。

 その生き物は小型犬ぐらいの大きさで、犬に近いが、顔が小さく狐に似ていて、目は大きくつり上がっていて、空のように透き通った青色の目、耳は兎のように長い。尻尾は長く、すらりとした体型は猫を思わせるがその体を覆う毛は燃えるような炎の色だった。


「かわいい…」アリアは思わず呟いた。何だろう、この生き物は。


「わぁ、珍しいわ。これって精獣よね?」王妃様?が目をきらきらさせて言う。


初耳です。そんな話。



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