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magnet  作者: 華梨
不穏な影、突然の再会
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第十二話:地獄の授業の弊害、人々の反応

朝。起きてマリシアとお話。「お姉様」と可愛らしい声で言われて幸せな気分になる。


昼。クロウリーに毒舌を吐かれながらお勉強。最近何を言われても笑って流せるようになる。これは進化かそれとも退化なのか…。


晩。ミネルとほぼ雑談で終わる精獣講座を受ける。ミネルはアリアの日常生活に興味があるらしく、質問攻めに遭う。これで良いのだろうか?


 これが、今のところのアリアの一日のサイクルである。

アリアはミネルの精獣講座を終えた後、クロウリーから山ほど与えられた課題に取りかかっている。

そのため、寝ようかと思った頃には夜が明けかかっていることもしばしばである。

 ユーイとの接点はおかげでゼロに等しい。元々、王女付きの侍女になった時点でそれは確定していたが、この地獄の授業のせいで、もはや見かけることすらない。考える暇も…ない。



「アリア、大丈夫?最近よく寝てないみたいだけど……」メイが心配してアリアに声をかけた。

「ふふふ、大丈夫、よ。このくらいまだまだ……」アリアが心なしかやつれたように見えるのはメイだけではない。本人以外全員がそう思っている。しかし肝心の本人だけ、その自覚がない。

「‥‥‥‥アリア、あなた何をしようとしているの?」

「何って、歯磨きだけど?」

アリアは櫛を持って歯磨き粉を付けようとしているところであった。

「‥‥‥‥アリア、あんた、目やばいんじゃない?」メイはアリアを医務室に連れて行くべきだと思った。しかしアリアの猛反対によって実現させることは叶わなかった。



「お姉様。本当に大丈夫ですの?」

 マリシアは日に日にやつれていくアリアに不安げな目をして言った。

「大丈夫です、マシリア様。朝餉を取りに行って参ります」

「いえ、もう他の侍女に行かせたからいいのですよ。お姉様はお願いですからここで座っていて下さいませ」

「…分かりました」

「出来ればここで横になって欲しいですけれど」

「それは無理ですね」アリアは笑って断言する。

「…………」

マリシアは黙りこくってため息をついた。



「昨日出した課題は仕上げてきましたか?」クロウリーはアリアに問うとアリアは笑って、

「はい!この通り。歴史のソマリア国の前身となったトランス国が何故滅びたのか、その原因と考察。後、薬草辞典のナ行とハ行の薬草についてレポートです」

アリアは太い紙の束をクロウリーに渡した。


「………よくもまあ続きますね」クロウリーはその紙の重さに呟いた。並大抵の努力ではこの重さにはならないだろう。

「私はやるって決めたことはやり通す主義なんです!」アリアはやややつれた顔で言った。

「…それは結構なことですね」

クロウリーは相変わらずの鋭い目でアリアに向き直る。

「それでは今日の授業を始めましょうか?」



「……ところで、アリアの目の下にある黒いのって何かしら?」

ミネルがアリアの顔を見ながらアリアに告げる。

「え?それって隈じゃないですか。ミネル様、隈というのはですね。夜も寝ないで頑張った者にだけ与えられる勲章なんですよ」

「まあ、そうなの?私も隈を作ろうかしら?」

「ミネル様!それだけはお止め下さい!!私が王妃様に殺されます!」

クロウリーが血相を変えて止めに入った。


精獣の授業はスローペースで進んでいく。

アリアにとっては、他の作法やら、歴史やらそしてダンスの授業はクロウリーによって恐るべき早さで進むだけに余計にゆっくり感じられる。



精獣使いとは文字通り、精獣を使役するものである。

精獣使いの力量は、いかに精獣を制御し心を通わせられるかにあるという。

 そのために、精獣つかいは精獣の宿る物、アリアの場合ペンダントだが、それを常に身につけ精獣と常に【対話】をする必要があるのだという。

また精獣にもそれぞれ個性があって、力の強さも違うし、特性も違う。


「例えば私のグランちゃんの司る力は、水。守りに特化しているの」ミネルは言う。

どうやらグランというのがミネルの持つ精獣の名前らしい。

「じゃあ、私のフレアは…」

「それは自分で見つけなきゃダメよ」

「どうやってですか?」

「聞いたら教えてくれるわよ」

「しゃべるんですか!?」

「そういうものじゃないの?」

二人は寝そべってあくびをしている最中のフレアを見る。

疲れたのか、目を閉じて、たまに耳がピクッと動いている。


「…。まあ、頑張ってね。心はきっと通じるわ」ミネルは励ましの言葉をアリアに送る。

「………」


 また、術を使うときは詠唱が必要である。それは、妖精たちに働きかける呪文と同様である。ただ、詠唱は呪文と違って精獣によって違う。それも対話の中で精獣から聞かなければならないらしい。


 アリアはここまで話をミネルから聞き出すのに五日もかかった。…先はまだまだ長そうである。

ミネルが嬉しそうに雑談するためアリアは止めることが出来ないのだった。側に控えるクロウリーは端から止めるつもりなどないらしい。

 これって、授業ですよね?アリアは疑問に思うも余りに嬉しそうな様子のミネルを見て何とも言えなくなる。


「クレア…あなたの属性はなあに?」アリアは話しかけてみるものの、クレアは何?と言った感じで首を傾げるだけである。

「もう。どうすればいいの?」アリアは途方に暮れた。



そして、迎えた六日目の授業の時のこと。クロウリーは用事があって席を外していた。


「何か精獣使いって色々と大変そうですね…。出来る気がしないです」

 アリアは不安になって言う。対話が成立するかすら怪しい状況で不安にならないはずがない。

ミネルはそんなアリアの様子を見て、少し考え込む。

「…そうね。ちょっと怒られるかもしれないけど…。ついてきてアリアさん!面白いものを見せてあげるわ」ミネルがそういって部屋を抜け出す。


「ちょっと。待って下さい!」

 アリアはミネルを止めることが出来ないままミネルの後を追う。……もう、クロウリーに無断に部屋を抜け出したとして怒られることは決定した。アリアは移動の途中でミネルを止めることを諦め大人しくついていくことにした。

「ここです。入って下さい」

 ミネルが入っていった先はミネルの部屋のようだ。女の子らしい、されど落ち着いた高級感溢れる部屋だった。ミネルは青色が好きなのか、部屋の家具や壁紙などは青色系統だった。

 アリアは見慣れない目新しい部屋を見渡していると、

「ふふふ。見て驚かないでね」ミネルはそっと部屋にある本棚の一つに手を置いた。

「………」何事かを呟いたかと思うと、恐らく呪文だろうが、本を五十冊は入っていると思われる棚が、いとも簡単に動いた。まるで、ドアのようだ。


「さあ、ついてきて下さいな。私の修行場へ連れて行って差し上げます」


本棚の後ろには下へと続く階段が見えていた。



アリア、奮闘中。

ミネルはものすごいマイペースです。


ユーイはあと二、三話後ぐらいに出てくると思います。



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