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ブラックコーヒー

作者: 春砂美心
掲載日:2026/06/14

「久しぶり!元気してた?」


「久しぶり、ずっと元気なふりしてた。」


彼と出会ったのは高校一年生。


いや、厳密には高校に入るための集団面接。


彼とは高校三年間同じクラスで苦楽を共にした。


「大学生活はどう?」


元気なふり。


その言葉に詰まって異sまって咄嗟に余計なことを聞いてしまったかもしれない。


「楽しいよ。」


これもまた、楽しいふりなのか。


何故彼は元気なふりをしていたのか。なぜ元気なふりと言ったのか。


「高校と比べると大学って楽だよなあ。」


「まあね。」


何故だろう、何か言いたげな彼の表情を見て今度は本当に言葉が詰まる。


「実はさ、」


くる。なんて言うんだ。心が脅されている。


「高校三年間のうちに何もかも変わっちまったんだ。」


「何もかもってどういうこと?」


「いやあ、あのさ、今だから言えるけど、、、」


「いや、言わなくていい、辛いなら話さなくていい。」


何故だろう。彼はきっとSOSを発しているのに、迫り来る責任から逃れようとしている自分がいる。


「そういやお前、大学の単位大丈夫か?」


最悪だ。俺は最悪の友達だ。


彼の表情がみるみる暗くなっていく。


「単位やばいんだよね。」


「なんで?サボってんのか?」


「そういうわけじゃないけど。」


変に笑った。


この言葉がよくなかった。寄り添おうと、もう一度俺に責任を持たせてくれと気持ちを込めて、勇気を出して。


「いやあ、あのさ、」


「お前に言ってもしょうがねえことだわ。」


信頼を失った。親友からの親友を失った。


大人びた俺たちにブラックコーヒー氷抜きがやってくる。


お互い何も言葉を発さずストローが空の底をついた頃。


「やっぱ大学楽しいわ。」


彼は今、演技をしている。何故なら俺を三年間騙した名役者だ。


「お前が楽しそうならよかったわ。」


それからというもの、誰かが言い切った大学あるあるや高校時代の武勇伝を語り合った。楽しかった。


暗い空が顔を出す。


「あのさ、」


「どした?」


「今日最初に言ったこと、覚えてるか?」


「何だっけ。」


「お前、楽しいふりしてたって言わなかったか。」


「ああ、うん。」


「それさ、どういう意味だったんだ?」


「ま、色々あったんだよ。」





大学の最寄り駅徒歩5分の喫茶店。あいつと別れて一人で歩く。


何故だろう。調子に乗って普段に行かない喫茶店に行ったからだろうか。


今日という日と口の中。苦味が残る。


今思えば彼はカフェオレを頼もうとしていた。


なのに僕はブラックコーヒーを頼んでしまったんだ。





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