異世界で暇してたら ――ご令嬢は爆破系――
王立騎士学園中等部に通うクロガネは、退屈な日常を大きなあくびで迎える。だが、その平穏はご令嬢フランソワーズの父である成金侯爵が逮捕されたことで吹き飛ぶ。成金侯爵である彼女の父の馬車から“盗品”が見つかったという。
事情を聞けば、どうやら借金のカタに男爵家から持ち出した物が原因らしい。真相を確かめるため、二人は騎士団庁舎へ向かうが――
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(物語)
「ふわぁ~……」
大きなあくびが出た。王立騎士学園中等部に通う俺、クロガネの一日は、いつも通りの退屈から始まる……はずだった。
「クロガネ君。父が逮捕されたわ」
教室の扉が『バァン!』と開き、金髪を揺らして飛び込んできたのは、侯爵令嬢であるフランソワーズだ。
青い瞳は怒りでメラメラ燃えている。
「……は?」
「父の馬車から盗品が見つかったらしいの。そんなはずないわ」
フランソワーズは俺の腕をつかみ、そのまま廊下へと引きずり出す。
「状況を説明してくれ」
「借金のカタに、男爵家から『預かった物』があっただけよ。父は悪くないわ」
いや、それ普通にアウトでは。
心の中でツッコミを入れつつ、俺たちは騎士団庁舎へ向かった。
◆
騎士団庁舎・面会室の重たい扉が閉まった。
「父は冤罪よ! いますぐ解放しなさい!」
フランソワーズが、怒りにまかせて机を叩く。
「言い訳なんか聞かない!」
騎士団も机を叩いて、どちらも引かない。
『ドォンッ!』と爆発音。
庁舎全体が揺れた。爆発音……これ、俺が仕掛けた「魔道具の音だけ花火」だ。
庁舎内は、テロが襲ってきたのではと大騒ぎになり、全員が避難を始め、俺たちも外に出た。
「私の話を聞かない騎士団なんて……」
怒りが収まっていないフランソワーズが、魔力を練り上げる。
「ちょ、待て! まさか――」
「吹き飛びなさい!」
『ズガァァァン!』
騎士団庁舎が全壊した。
「やりすぎだろ!!」
「父を疑った罰よ」
完全に逆恨みである。
◆
俺とフランソワーズは、成金侯爵の豪華すぎる馬車に乗り込み、男爵の屋敷へと向かった。
「父を陥れたのは男爵よ」
「つまり、男爵は盗品だと知っていた?」
「そう。密売人と組んでるに決まってるわ」
馬車は街道を疾走する。
◆
屋敷へ馬車で飛び込むと、男爵と密売人たちが、盗品を前に取り引きしていた。
「やっぱり黒じゃねぇか……」
俺が呟いた瞬間、男爵がこちらを指差す。
「その馬車の盗品を返してもらおうか!」
「返すわけないでしょう。あなたが父を陥れたんだから!」
フランソワーズが杖を構え、魔力を練り上げる。
そのとき――
「そこまでだ!」
騎士団が飛び込んできた。どうやら俺たちを追ってきたらしい。
そして、男爵と密売人の取り引き現場を“バッチリ”目撃。俺の作戦どおりだ。
「ち、違う! これはだな――」
「言い訳は庁舎で聞く!」
騎士団はそう言うが、俺たちの言い分を聞かなかっただろうが……
◆
男爵と密売人たちと騎士団が衝突し、火花が散る。
しかし、人数の少ない騎士団のほうが押されている。
「父のカタキ!」
フランソワーズが飛び出し、男爵を魔法で吹き飛ばした。なお、彼女の父のである成金侯爵は亡くなってはいない。
それを機に、騎士団だ次々と密売人たちを取り押さえていく。
「くっ……覚えていろ……!」
男爵と密売人たちは捕縛された。
◆
そして、全壊した騎士団の庁舎前――
「騎士団の皆さま、このたびは密輸団を一網打尽したことに感謝し、新しい庁舎を寄付いたします」
成金侯爵は満面の笑みで言った。
騎士団員たちは微妙な歓声を上げ、フランソワーズは胸を張り、俺はため息をつく。
「クロガネ君の魔道具のおかげね」
「いや、フランソワーズ嬢の魔法のせいだろ……」
そんな俺のぼやきをよそに、フランソワーズは満足げに笑っていた。
今日も、俺の平穏は遠いけど、彼女の笑顔が気持ちいい。
―― またね ――




