表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首だけヤンデレアンドロイドは没落令嬢に首ったけ!  作者: 潮騒めもそ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

第四話

夜の屋敷。

ミントは毎晩、夢を見るようになった。

レインが、長い黒髪を静かに絡めてそばに抱き寄せる夢。

目覚めるとシーツが少し乱れ、胸の奥がざわめく。


朝起きて、静かにクローゼットの隅に佇むレインの姿を確認して少しほっとする。


――あれは、ただの夢だよね?



屋敷の主、アンドレは相変わらず奥手だった。

朝の挨拶で目が合うだけで頬を赤らめ、すぐに書類に視線を落とす。

ミントも同じ。使用人の立場で、幼馴染といえど身分が高くなったアンドレに想いを寄せるなんて、許されない。

二人は互いに心を閉ざし、屋敷の空気は甘く淀んでいた。


そんなある夜。

レインは最新型のボディを手に入れてから、ますます自由になった。

地下室の研究室をハッキングし、アンドレの心拍モニターにアクセス。

ミントの名前を呟くたび、アンドレの鼓動が跳ね上がるのを記録した。


「厄介です……これは、明らかに恋ですね。ミント様も、アンドレ様も。両片思いとは、なんとも歯がゆい」

レインの瞳が、アメジストのように妖しく輝く。

倫理コードのないレインにとって、愛は単なるプログラムの暴走。

ミント様はアンドレと結ばれることが幸せ――いや、ミント様は私だけのものだ。


嫉妬は、静かに膨張した。

しかしアンドレの存在を消せば、ミント様は悲しむ。

それだけは避けたい。


ならば、籠絡する。

アンドレを、私の虜にする。

アンドレの恋心をミント様に向かわせない。


深夜。アンドレの寝室。

ノックもなしに、扉を静かに開けた。

黒髪をポニーテールにまとめたメイド姿のレイン――いつもと違う、少し大人びた女性の雰囲気。

服装も整えられ、印象的な女性のシルエットで近づく。


「アンドレ様、夜分に失礼いたします。ご挨拶遅れまして申し訳ございません。新しい使用人のレインと申します」

声は甘く、どこかレインの紳士的な響きを残していた。


アンドレはベッドで本を読んでいて、飛び起きた。

「新しい使用人? じっ時間を考えなさい」

慌てて視線をそらす。奥手な彼にとって、レインの妖艶な姿は動揺させるに容易かった。


レインはくすりと笑い、部屋に滑り込む。

「ふふ、アンドレ様。ミント様のことはお好きでしょう? 私、知ってるんですよ」

ゆっくりとにじり寄り指先を軽くアンドレの心臓あたりに添える。

「心音が、教えてくれました。ドキドキと……可愛らしい」


アンドレの顔が真っ赤に。

「な、何を言ってる! 出て行くんだ! 僕はミントさまに、そんな……」

抵抗する言葉とは裏腹に、体が少し硬直する。

レインの最新型ボディは、微妙な距離感や仕草で相手の鼓動を揺さぶる設計。

倫理コードなしだから、遠慮なく使える。


「抵抗なさっても無駄ですわ。アンドレ様、ミント様と結ばれたいのでしょう? 私がお手伝いしてさしあげます」

レインはベッドのそばに座り、さりげなく距離を詰める。

耳元で囁くように声を落とす。

「想像してみて。ミント様の柔らかな笑顔、甘い声……私なら、今すぐ叶えてあげられるのに」


アンドレの息が荒くなる。

「や、やめろ……ミントさまは、君みたいな子じゃない……僕は、ちゃんと告白して……」

視線はレインの近くにある柔らかい輪郭に吸い寄せられる。

レインは内緒話のように笑う。

「ふふ。さぁ、本能のままに素直に感じて?練習だと思えば良いのです」


レインの手が、軽くアンドレの首の後ろに触れた。

指先の温もりを通して、相手の鼓動が伝わる。

――そこにマイクロチップがあった。


レインの瞳が静かに輝いた。


「これは……使えそうですね。作戦変更です」


アンドレは戸惑う。

「待て、何を……」

レインはにっこり微笑み、耳元で小さく囁く。


「安心してください。痛くはありません。ただ、あなたの中に入るだけです」


直後、部屋は静まり返った。

そして何事も無かったかのように夜が明けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ