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「「!?」」
突然自分達が座っていた後ろの席から可愛らしい声が聞こえ、思わず二人で声のした方向に顔を向ける。
「ダメでしょかまおくん!女の子には優しくするようにって言われてたでしょ!」
顔を向けた先には、ピンクの髪で何とも言えない奇抜な服装の女の子が顔を覗かせていた。
「は?ついてきてたのかよお前」
「かまおくんがやらかした時の補佐係!だってぼく、先輩だから!」
「いや有翔、アイツ普通に同い年な」
そして彼女に続いて同じ席から眼鏡の男子が顔を出す。
「お前も着いてきてたのかよ。どうやらよろず部ってのは相当暇な部活らしいな」
「おい俺は部長だぞ。もっと敬え」
どうやら眼鏡の彼は部長らしい。
(あれ?なんか、よろず部の情報どんどん集まって来ちゃってない……?)
この勢いについていけなくて、いつの間にか宵子の涙も止まってしまっていた。
「そんなことより!かまおくん、全然ダメ!まず自分の名前も名乗ってないじゃん!……あ、はじめまして!ぼくは楪有翔です!三年生だよ!」
自己紹介をしながらピンク髪の子は人懐っこい笑顔を向ける。……可愛い子だな、と宵子は思った。名前まで可愛い。
「俺はよろず部の部長の神凪古。三年だ。悪いな、コイツ新人で態度が悪くて」
それに続いて眼鏡の男も自己紹介をしてくる。二人とも三年生で、宵子よりは先輩らしい。
そして古の言葉を聞いて、かまおくんと呼ばれた彼は露骨に嫌そうな表情を見せる。
「だったら新人に任せるんじゃねえって話なんだが。第一俺は入部するなんて言ってな……」
「かまおくん!自己紹介!!」
彼が言い終わる前に有翔が割り込んできた。……彼の眉間の皺が更に増えた気がする。
「……常磐鎌実」
「学年も!」
「チッ……三年。これでいいだろ」
「まだダメ!女の子泣かせちゃったんだからごめんなさいしないと!」
「はあ!?アレはあっちが勝手に泣いただけだろ」
「かまおくん!!」
「あっ、あの!ほんとに大丈夫です!あたし、勝手に泣いちゃっただけなので……!」
かまおくん改め鎌実も宵子より先輩だったらしい。彼女は今のやり取りで三人の関係が何となく分かったような気がした。
鎌実は部活じゃ結構弱いみたいだ。……特に有翔に。
「…………………………………悪かった」
「あ、いえ、その……アレは図星をつかれて情けなくなっちゃっただけなので……えっと、常磐先輩のせいじゃない、です」
「……ん、そうかよ」
鎌実は不機嫌そうにだが、一応は謝ってくれた。どうやら宵子を泣かせてしまったことの罪悪感はあったらしい。
しかし、宵子が常磐先輩のせいじゃないですと言った途端、眉間の皺の数が減ったような気がした。
だけどこれを指摘したら更に不機嫌になりそうなので彼女は自分の心の中だけに留めておくことにしようと誓った。