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「……とりあえず、これで改造計画の第一段階は終了かな」
将吾が何か書類に目を通しながらうんうんと頷く。恐らく改造計画の詳細でも書かれているのだろう。
「本当は髪も切らせたかったけど、まあこれで妥協ってことで」
「そ、それは本当にごめんなさい……」
「良いよ良いよ。本気で嫌がるようなことはさせるなっていう、うちの会長からのお達しがあるからね」
……会長。そういえば古や有翔も会長が何とかと言っていたことを宵子は思い出す。
その "会長" がよろず部の一番偉い人なんだろうか。彼に会うことが出来れば、よろず部の全貌が分かるのだろうか。
そうすれば千暁の願いも叶って、自分も家族から責められることはなくなるだろうか。少しは扱いを良くして貰えるのだろうか。
────ほんとにいいの?
こんな、あたしなんかに優しくしてくれる人達を探るようなことして。
でもやらなきゃ。
やらなきゃ、また役立たずだって言われちゃう……────
「……おい、聞いてるのか鳥女」
「……!ご、ごめんなさい。聞いてなかったです」
「だろうな。マヌケ面で口開けてたぞ」
「う、うぐ……」
そこまで言わなくても……と抗議したかったが、話を聞いていなかったのは事実だ。反論出来ずに宵子は口を噤む。
「思ったよりも二人が仲良くなってくれたから明日は改造計画二段階目ってことで話を進めたいんだけど、大丈夫そう?」
「……お前、これが仲が良いように見えるのか?お前の目は節穴なのか?」
「そ、それに関しては同意です。仲が良いっていうか、その、うう……怖いです」
「そうかなあ。息ぴったりに見えるんだけど」
将吾は相変わらず二人を見てにやにやしている。何か良からぬことを考えているに違いない。
「まあ、第二段階には進んで貰うんだけどね。次は……二人でデートして貰うよ!」
「「はあ!?」」
宵子と鎌実が同時に聞き返す。
「デート!?デートって、何!?何でですか!?」
「次はコミュニケーション能力をアップして貰うことになってるからね。でもどう見ても恋愛一年生の二人にはふたりっきりのデートとか無理だろうし……ちゃんと先輩カップルに色々ご教授して貰えるから安心して」
「……待て!そんなこと俺は聞いてない!」
「あ、あたしだって、そんな、デートとかそんなの……!」
「九条ちゃんは契約書にサインしたでしょ。それと、常磐先輩は会長には逆らえないよね?」
契約書の話を出されると弱い。ちゃんと読んだ上でサインをしたのは自分だからだ。
「く、クソ……これだから奉日本は……」
「ふふん。まあせいぜい会長の犬として頑張ってね。九条ちゃんもデート、楽しんで」
(嫌だ……!こんな全身から不機嫌さを滲み出してる人とのデートとか楽しめる訳が無い……!!)
割と失礼なことを思う宵子。でもまあ嫌なものは嫌なのだから仕方ない。
「おい、鳥女」
「は、はいっ!?何でしょうか!?」
一瞬、嫌だ嫌だと考えている自分の思考が読まれたのかと思って飛び上がったが、そうでは無かった。
「明日鬱陶しい前髪で来てみろ。どうなるか分かってるだろうな」
……彼のあまりの怖さに思わず彼女の喉からひゅっと息が漏れる。
「返事は」
「だ、大丈夫です!上げてきます!」
逃げ出したい……そう思いながらも契約書にサインした以上、宵子は逆らうことが出来ない。
(ああもう……!あたし、どうなっちゃうんだろう……!!)
「……成程。あの子が "会長のお姫様" か。興味深いな」
そんな宵子を見つめている謎の人物がいることを、今の彼女は知る由もない……。
第三話に続く……




