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「うーん、ギャル系もいいけどちょっと難易度高いかなあ。やっぱりカジュアル系か清楚系にして……」
「あ、あのっ、直樹くん、まだですか……?」
あれから一時間程宵子は将吾の着せ替え人形にされている訳だが、そろそろ限界である。正直、彼女は本当に顔を出したくないのだ。早くこの髪留めを取ってしまいたいと思っている。
「まだダメ!これとこれを組み合わせて……」
どうやらまだ将吾のお気には召さないらしい。宵子は何となく恥ずかしくなって鎌実の方にちらりと目をやると……彼はめちゃくちゃ不機嫌そうだ。何とも分かりやすい。
きっと彼は彼女がいたとしてもその彼女の服選びを待っていられないタイプだろう……その時点で付き合う相手としては有り得ないな、などと宵子は思った。
(まあ……そもそもあたしなんかが選べる立場でも無いだろうけど)
「……何で俺の方を見る。お前の服選びだろうが」
「あう。……ごめんなさい」
服を選んでいるのは将吾で、宵子にはそんな彼に口出し出来るほどのセンスはなく、手持ち無沙汰になってしまった。だから何となく鎌実の方ばかりを見てしまうのだが……鎌実はそれが不快なようで。
「あ!まさか、そういうこと?」
ふいに将吾が口を挟む。見たところ、服選びはまだ終わっていなさそうだが。
「えっ?そういうことって、どういうことですか……?」
「へえ、ふーん、成程ねえ。正直趣味がいいとは言えないけど……ふふふ」
将吾は意味深に笑う。宵子は自分が何か変なことをしただろうか、と不安に思った。
「常磐先輩!そんなに暇なら九条ちゃんの服選び手伝ってよ!」
「はあ?何で俺が」
「いいからいいから!ね、これどっちが好み?」
「知らん」
「そう言わずに!そっちの方が九条ちゃん喜ぶと思うし!ね?」
(……あれ!?これってもしかして何か勘違いされてる!?)
ここでようやく宵子が将吾の笑みの意味に気づく。恐らく将吾は宵子が鎌実のことを好いているのだと勘違いしたのだ。
「な、直樹くん!違いますからね!?」
「大丈夫、バッチリ常磐先輩の好みにしてあげるから……!」
(ああやっぱり勘違いしてる……!)
慌てて否定したがもう遅い。完全に勘違いされているし、聞く耳も持って貰えない。
(別に好みになりたくないし寧ろ苦手なのに!さっき付き合う相手としては有り得ないって思ったばかりなのに!)
心の中で毒を吐く宵子。鎌実に届いていたら10倍返しで毒を吐かれていただろうが、幸い今の彼は将吾に付き合わされている。渋々、ではあるが。
「さあどっちが好み?」
「…………こっち」
このままでは埒が明かないと思ったのだろう。鎌実は大きな溜息をついた後に片方の服装を選んだ。……清楚系が好みらしい。
「その服ならこの小物を付けて……よし完成!試着室で着替えてきて!」
妙にうきうきしている将吾に押し付けられた着替えを、宵子は黙って受け取ることしか出来なかった。




