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第18話 禁忌の魔法



異世界から来た勇者が、現代の日本で使う初めての魔法。

簡単に人の命を奪ってしまう勇者の魔法を、怜音は封印していた。

この世界では魔法を使わずに何とかしようと思った。だけど——


頬を打たれた時、世界がスローモーションになった。


血が、雨に混じって地面へ滴る。


倒れ込みそうになった瞬間、 怜音の指先が、ふと“癖”のように魔力を求めた。







それは反射的な動きだった。


魔力を練り、空気の流れを読み、

相手の動きを止める――初級の《ウィンドアロー》を撃つだけで、

相手の男は地面に叩きつけられて動けなくなるはずだった。


けれど、 怜音はやらなかった。


やれなかった。







『この世界は、魔力の制御が利きにくい。下手に使えば、命に関わる』




魔力密度が薄いこの世界では、異世界での魔法を使うと破壊力が異常に跳ね上がる。


それは、“木を切るための斧”が、“ビルをなぎ倒すミサイル”になるくらいの差。


たとえ相手がただのチンピラでも、

魔法を使えば――殺してしまう。


それが、たとえ悪人だったとしても。







怜音は奥歯を噛みしめた。


こんなとき、自分が「ただの人間」だったら良かったとさえ思った。


力があるせいで、力を使えない。


だから、


何度も殴られても、自分の拳でしか、守れなかった。







(こんな身体じゃ、まともに戦えない……)

(でも、魔法を使えば……殺してしまう……)



だけど——あの瞬間、迷っている時間はなかった。


少女の悲鳴。

そして……男の腕からこぼれ落ちそうになるナイフ。


怜音の体は、意思より先に動いていた。


「……《ウィンドアロー》」


低く、震える声で呟いた瞬間。

空気が震え、男の手からナイフが弾かれる。

周囲に誰も気づかぬほど静かに、しかし確実に、空間を歪める魔法が走った。



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