第15話 目が合った瞬間
バイト帰り、コンビニの前で待ち伏せされていた
「いい加減こい」「今日で終わりにしてやるから」
“今日で終わる”――それはもう何度も聞かされた言葉だった。
髪を巻いた愛美が、薄い笑みを浮かべながら男に言う。
「この子、ちょっとバカだけど、顔はいいから。な?」
男は無言で日向の肩を掴む。
日向は抵抗しようとした。が、足がすくんで動かない。
手首は痛いほど握られ、力で引きずられる。
「や、やめて……!」
「やめたら、写真ばらまくからね」
芽衣がスマホを振りかざす。
「大丈夫よ、ただ変態オヤジ達とご飯食べにいくだけだからさ」
「ちょっとエッチな事されるかもしれないけどねw」
こっちは前金で20万もらってるんだから、早く来いよ!
周囲は高い塀。逃げ場はない。
叫んでも、誰も来ない場所を選んだのだろう。
心が、折れかけたその瞬間――
夜。コンビニのシフトが終わった 怜音は、たまたま自転車で帰る途中だった。
ふと、工場の隙間から、暴力的に引きずられる少女の姿が見えた。
目が合った。
日向の目には、恐怖と絶望が宿っていた。
時間が止まったように感じた。
蓮の中で、何かが弾けた。
彼の視界には、少女の腕を掴む男の手が、異世界の“オーガ”の手と重なって見えた。
弱者を虐げ、支配しようとする力――
怜音は走り出していた。
塀を越え、何も迷わず中へ飛び込んだ。
日向だった。
だが、その前に立っているのは、学生には見えない20代半ばの男3人と女子高生3人
派手な髪とジャージ姿、不自然な笑顔。
「今日だけでいいんだよ。1日だけ。」
「また何かされるの、嫌でしょ?」
日向は震えていた。
逃げ出そうと一歩引いたが、男が腕をつかんだ。
その瞬間――
「やめろ!」
怜音が叫び、男に突っ込んだ。
突然の衝突に、男は後ろへよろめいた。
「なんだてめぇ!?」
怜音の体はまだ完全ではない。
それでも、その目は異世界で幾多の修羅場を超えた戦士の目だった。
「明らかに怯えてるじゃないか!」
「その子を離せ。」




