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第50話【魔剣】

「あ、歩いていたら第四箇区に来ちゃった。

 ほんとっ、第二箇区はそこまで広くはないからすぐこっちに辿り着いちゃうんだよねぇ」


 そこにはまるで別世界が広がっていた。

 辛うじて壊れていない建物の郡。

 あちこちに無造作に生える雑草。

 その中心の方には少し大きめの建物がぽつんっと建っている。


 ここが第四箇区。

 影人に襲撃された場所だ。

 この光景を見るだけで当時どれだけ影人が脅威であったのかがわかる。


「これ本当に全部影人がやったのかよ...」

「そうだよっ。奴らはこうやって何代にも渡って私達を脅かし続けてきたんだ」


 ガサッ。

 背後から音がした。


「貴様は何度言えば理解する。

 つい先刻前にも同様の言葉を言ったはずだが」

「あはは、ついついねっ! それにクロノスが認めた客人何だから色々と紹介してあげないとでしょっ!!」

「そんな事私には関係ない。研究の邪魔をしないでくれ」

「研究、研究って少しは休憩した方がいいと思うけどなぁ」

「貴様、もう忘れたのか。

 我々はこの代で影人に打ち勝つと約束したことを。

 その為には影人という存在の解明、そして彼らの目的を研究で導き出す事が必要だ。

 だが今こうして貴様らが私を邪魔しているということはそれらの研究の進行を妨害すると同意義。

 つまり極端に言ってしまえばこの国の終焉を望んでいることにほかならない」

「いやぁ、そういう事をしたかったわけじゃないよ。

 ただセカちゃんもクロノスも心配してるんだよ。

 アイオスは...どうか分からないけどっ」

「心配など無用。私が言っている事が理解出来たのなら立ち去り、第五箇にでも行っていろ」


 そう言ってカイロネスさんはスタスタと建物の方へ歩いていった。


「えへへ、ごめんね。

 ん〜じゃあ、カイロネスの言っていた通りに第五箇区に行ってみよう。

 でも、あんまり期待しない方が良い、かな?」


***


「ぬわッ!!」


 レインが吹き飛ばされた。


「ルディア、ここは護る者達が集う場所だ。

 観光するような場所じゃねぇ。余計なやつを連れてくるな」

「ちょっとお! クロノスの客人だよっ!!」


 吹き飛んだレインにサユが駆け寄って治癒をしていた。

 なんて不憫なんだ、レイン。


「客人だぁ? またクロノスの奴、変な事してやがんのか」

「協会は拒んでもそれ以外の人達を拒み続けたらオルグセイラは発展しないよっ!」

「俺達は護る、それだけだ。何だったら協会を潰しに行ってもいいぜ?」

「それは多くの民が望んでいる事かもしれないけど、私達だけで相手を出来る様な存在じゃないって、アイオスも理解しているでしょっ」


 アイオスさんは手で追い払う様な動作をして背を向けた。


「ほらね、脳に力しかない奴だから、気を付けてね」

「は、はぁ」


***


 その後俺達は第三箇区にやってきた。

 セカリアさんはどうやらどこかに行っているようで会う事は出来なかった。

 そして最終的に一日かけて第一箇区に戻ってきた。


「ちょっとはオルグセイラについて分かってもらえたかな? とは言っても協力的じゃない人ばかりだからあれだったけど...」

「話を聞いていたよりも他の様々な事を知れたので良かったです」

「ほんとっ? なら良かった。じゃあルディアはそろそろ帰るからまたねっ!!」


 手を振りながらルディアさんは走っていた。

  なんだか久しぶりに長く歩き回った。


「お兄ちゃん、疲れたぁ。宿に戻ろぉ」

「そうするか」


 ゾッ。

 体中に走る悪寒。

 それ程の気配を感じたということだ。

 俺は無意識に剣を握り振り返った。


「おっと」


 そこには細身の高身長の男性が立っていた。


「揃いも揃ってそう警戒をしないでくれ」


 気づけば皆、それぞれの武器を構え振り向いていた。


「一日中違う気配がしていたとは思っていたけれどもしかしてあなただったの?」


 ルナが言った。


「尾行していたと言われればそうだが、そういうわけでもない。

 どちらかというと待っていたの方が正しいか」

「誰なんだッ!」


 レインが言い放った。


「ああ、まず自己紹介か。俺はルゴール・エリオットだ。

 うん、そのリボン、特徴的な黒い剣、魔法士、間違いないようだ」


 自己紹介をしてきたあとに何やらブツブツ呟いているルゴールという男性。

 一体こいつは何なんだ。

 どうしても拭いきれない謎の気配。

 殺意の類ではない、もっと別の何かだ。

 それを他の皆も感じているようで警戒を止めない。


「そう固くならないでくれ、クライド、サユ、ミーシアス...えーっと残り二人」


 ルゴールは何故か俺とサユ、ミーシアスの名を知っていた。

 だがルナとレインの名を知らなかった。


「とくにクライドは竜殺しに失星まで、到底無能と呼ばれるには程遠い功績だ」


 この男、一体どこまで俺の情報を知っているんだ。


「それよりここだと誰に話を聞かれるか分からない。少し人のいない場所に移動しよう」


 ここで反対すれば何をされるかわからない。

 だからここは大人しく従うことにしよう。

 ただ警戒を怠らず。


***


 俺達は人通りの少ない路地にやってきた。


「うん、ここなら落ち着く。

 周りに誰もいないみたいだ」


 ルゴールは辺りを見渡して言った。

 すると先程から感じていた謎の気配が消えた。


「まぁ、まずは君達が疑問に思っていることから説明でもしようか。

 何が知りたい?」

「どうして名前を知ってるの?」

「それはとある人から聞いたんだ。

 というか俺は使いのようなもんさ。

 他二人は申し訳ないが初見なもので分からない」


 サユの質問にルゴールは率直に答えた。

 どうやら本当に怪しい者ではなさそうだ。

 俺は少しだけ安堵した。


「他にはないか?」

「さっきから感じてる気配は何だ?」


 レインがルゴールに聞いた。


「それはちょっと答えられないな。

 でもそのうちわかると思うけど、まだ俺達は手を組んだ中じゃないからそう安々と教えられはしない」


 そこで質問が途絶える。


「ないみたいだ。それじゃあ本題にしよう。

 クライドはヘルベティオス・クロードを倒した。

 そして君の名が載っている記事を見てやっと理解した」


 ルゴールは俺の目を見てきた。


「その瞳、あいつそっくりだ。

 ルーク・アンサラーに」


 なんで父さんの名前を。


「君達は俺達と共に世界を変えるべきだ。アイーダさんもそれを望んでいる」


 世界を変える?


「決断をまだ急ぐ必要はない。ただこの地の観光を終えるまでには決断をして欲しい」

「...どうして父さんの事を知っているんですか!!」

「いきなり逸れたな。まぁ、良い。俺はルークと友だったからよく知っている」

「なら父さんは!!」

「ルークは最期まで戦い、立派な姿でこの世を旅立った」


 やっぱりそうだったのか。

 父さん...。


「ルークは本当に凄いやつだった。

 あいつほどの剣士はいないだろう」

「お兄ちゃん、お父さんはどんな人だったの?」

「魔法剣士だったらしい」


 そうだった。

 サユが家に来た時にはもう父さんはいなかった。

 だから知るわけもないか。

 それに俺もついこの間まで知らなかったわけだし。


「あぁ! それも()()の魔法剣士だ」

「!?」


 ルゴールの発言で俺達は驚いた。

 父さんが魔剣の魔法剣士だって??



「にしてもあいつはどこに魔剣をやったんだか...」

「父さんが魔剣を持っていたって本当何ですか!!」

「何だ知らなかったのか。あぁ、それも凄かったぞ」


 ルゴールが剣の形を手で表そうとしているが何もわからない。


「あいつの魔剣を前にした悪人は皆揃って真実を口にしていた。

 それほど恐ろしかったってわけだ。

 さらにルークは一撃者とも呼ばれていた。

 その魔剣を振れば、先手は確実だった。

 それがルークの持っていた魔剣――()()()()()()だ」

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