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第42話【VSカストール 後編】

 魔巣(まそう)都市マネスト周辺、ネスタナとルーゼルトの緩衝地帯。


「はぁ...はぁ...。認めましょう。

 どうやら名声に見合った実力はあるようですね。しかしその実力で追いつけるのはここまで」

「そうか。だがその前に少し休憩でもした方が良いんじゃないか? 随分と息があがっているぞ」

「なっ、そんなものは不要です。この私に情をかけようとは。愚かな竜」


 すっかり荒れ果てた緩衝地帯。

 もはやその姿は緩衝地帯としての意味をなくしているほどだった。


「星々の流れ行く果てでは貴様らの様な存在は塵に等しいだろう。そんな者を私達協会が直々に手をくだしてあげましょう」

「好きにしろ」

「『加速(アクセラレーション)』」


 カストールは異常な速さで接近しレヴァントに剣を振るう。

 剣を片手で持ちカストールの剣を受け止めたレヴァント。

 衝撃で激しくカストールのコートが靡く。


「最期くらい素で殺りあったらどうだ。エルナトがどうした? 今は剣士同士の戦いだろ?」

「...己、エルナト様を呼び捨てにしやがって」

「ようやくか」

「何故貴様は我々の邪魔をするんだ! 罪を犯した者を罰する、それは正当。

 故に我々がクライド・アンサラーにあの様な対応を下したことは間違っていない!!」

「冒険者協会、お前達は間違えすぎたんだ」


 二人の剣は高速に乱れ合う。


「間違えた? 笑わせるな。何も間違っちゃいない!」

「勘違いをするな。協会が今も滅んでいないのは反協会が今もお前達を生かしてやっているからだ」

「貴様、国家の重要パーティーでありながら反協会と手を組んでいるのか!」

「別にそこまでは言っていない。知り合いから聞いた話だ。

 まぁ、つまりだ、冒険者を甘く見ない方が身の為だぞ」


 レヴァントが強く剣を振りカストールを引き離した。


「...良く分かりました。あなたが協会に対する考えは。もう尚更生かしてはおけない」

「俺を殺しても良いのか?」

「重要パーティーは一つだけではありませんから。人々から反発を受けたのなら理由をつければいい。

 簡単なことですよ」

「どこまでもクソだな」

「そんな大口を叩けるのもここまです」


 カストールの剣に魔力が集中し始める。

 それは全身に巡る全てだった。


 魔力の激流を感じ取ったレヴァントは気づいていた。

 これがカストールの最後の攻撃であると。

 一撃必殺。 

 魔力の大放出だ。


「落ちろ――『天墜斬牙(てんついざんが)』」


 膨大な魔力を纏う剣をカストールが振り下ろした。

 その瞬間、轟音と共に雲を斬り裂く巨大な形を成した斬撃が落下してきた。


「わざわざ一人で行動していた理由はこれか」


 巨大な斬撃が接近してくる程、地面にいるレヴァントに圧力がかかる。


「ものは試しだ。『黒呑(こくどん)』」


 剣を大きく振るった。

 黒い霧はいつも以上に広がっていく。


「はぁ...はぁ....この技を葬るなど不可能ですよ!!」

「どうかな」


 ついには斬撃がレヴァントの剣にぶつかった。

 激しい衝撃。

 地面は亀裂が入り振動していた。

 爆風の中、レヴァントは黒い霧が斬撃を呑み込むのを待っていた。

 

「馬鹿な...!!!」


 徐々に呑み込んでいく。

 進行するごとに斬撃の力は吸収され弱体化していった。


 ピキピキ。

 しかしレヴァントにも限界が近かった。 

 身に纏う黒い鎧に亀裂が入った。


「はぁ...こんな事があっては!!」

「あぁあああ!!」


 そして巨大な斬撃は霧に呑み込まれ風と共にどこかへと消えていった。


「血が――鎧が――これ程までになったのはいつ以来か」

「私の、攻撃が...」

「せっかくだ。俺もお前に見せてやろう。これでフェアだな」

「っ!?」


 異様な雰囲気が漂う。

 どんよりとした暗く重い。


「『黒牢崩天(こくろうほうてん)』」

「!!!?」


 その瞬間、大量の魔力が放出された。

 そしてレヴァント、カストールを含む一定範囲の空間は全て存在しない闇の世界へと変わった。


「こ、これは...」

「せいぜい頑張るんだな」

「何を!」


 レヴァントがカチャッと剣を鞘に納めた瞬間、暗闇の空間は天から崩れ落ち始める。

 パラパラと落ちるまるでガラスのような鋭利なそれはカストールめがけて無数に迫る。


「なぁぁぁあああ!!」


 魔力を大量放出したカストールはこの状況においては成すすべがない。

 故に暗闇の空間による攻撃は全てカストールへと命中する。


「あぁああああああ!!!」


 剣を振れども闇の残骸は斬れずすり抜け、カストールの体に突き刺さる。

 躱せたとしてもその先にも闇の残骸は降り注ぐ。


 しばらくして闇の空間は完全に崩れ落ちた。

 カストールの体には今は何も刺さってはいないが白いコートは赤に染まり、地面に膝をつけながら俯いている。


「まだ意識があるとは。さすがは選ばれし者だな」


 息はあるがカストールからの返事はない。

 

「何か来る――」


 レヴァントは剣を構えることはなかったが軽く辺りを見渡した。

 その時、カストールの近くに黒い円の様なものが現れた。


「魔力の無い己に私は攻撃はしない。大人しくしていれば、だが」


 黒い円から現れた一人の黒いコートを着た男。

 手には剣を持っている。

 その剣は縦に細長く丸い、不思議な形をしており主に黒い色だが中心は光輝いているようにも見える。


 謎の男はカストールを持ち上げた。


「お前は誰だ」


 レヴァントが問う。


「言わなくとも分かるだろう。私には時間がない。ここで喋っている時間もない」


 そう言って黒い円に向かって歩き始めた男。

 黒いコートの右肩部分に金色に輝く星の紋章が光った。

 レヴァントはそれを見て察した。

 あの者は――。


「またいつ――」


 謎の男は言葉を言い切る前に消えた。

 その後レヴァントは体力を回復する為にその場で倒れ込んだのだった。

 

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