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第40話【翼無き黒竜 VS 偽りの星の使い】

「どうしたんですか? 早く続きでも」


 (カストールの強さはあの長刃を駆使した距離を保った戦闘術。 

 だからと言って近距離に持ち込むのは安易な発想だろう)とレヴァントは考えた。

 

「そちらが来ないのなら私から詰めるのみ」


 カストールが一歩足を動かす。

 その一歩が地面につく前にレヴァントの視界からは消えていた。


「最強パーティーのリーダーである存在がよそ見とは」

「.....」


 振り返ったレヴァント。

 顔面スレスレでカストールの長刃を抑えた。


「どけ」


 カストールはレヴァントの腹部に蹴りを入れた。

 レヴァントは吹き飛ぶ。


「期待した私が馬鹿でした。エルナト様、過大評価だったのではありませんか」


 立ち止まるカストール。

 剣を左上から右下へ、右上から左下へと二度剣を振るい始めた。


「『爆衝双閃(ばくしょうそうせん)』」


 交差し合った斬撃は光の如く立ち上がるレヴァントに向かって放たれた。


「この攻撃を避けられるわけがない」


 次の瞬間に斬撃はレヴァントを通り抜けた。


 ドゴォォォォォ!!!


 交差した斬撃は地面を抉り、地を掘り返すほどの大爆発を引き起こした。


 爆発の炎の中に人の姿はなかった。


「いない...?」

「星の使いとあろう者がよそ見とはな」

「っ!?」


 レヴァントは剣を振った。


「『黒霧(くろきり)』」


 咄嗟に剣を構えたカストール。

 二人の剣はぶつかり合う。


「...なんて威力」

「ふっ」


 カストールは力に押し負け吹き飛ぶ。

 しかしそこに追撃が迫る。

 『黒霧(くろきり)』、剣から黒いモヤが滲み溢れ、そのモヤは鋭い刃となり体勢の不安定なカストールへと迫る。


「レヴァント――!!」


 レヴァントは剣からモヤを払った。


「後ろががら空きだ」


 レヴァントはカストールの背後に剣を突きたて、立っていた。


「いつの間に?!」


 (前からはモヤが後ろにはあいつの剣が待っている。挟まれているこの状況。そしてこの体勢。

 どう足掻いても負傷は避けられない。ならば――)

 カストールはレヴァントの方に振り返りモヤの刃に背を向けた。


 カストールの左肩にモヤの刃が突き刺さる。

 血飛沫が舞うがカストールにとって想定内。


 カストールは地面に長刃を突き刺した。


「『地裂斬(じれつざん)』」


 レヴァントの地面が振動した始める。

 振動開始から僅か0.5秒にも満たない時間でレヴァントの足場が崩れた。

 同時に地から一筋の斬撃が天に昇った。


「距離は取らせはしない」


 レヴァントは軽く飛び、崩れる地面から離れようとした。

 そこにカストールが間合いを詰める。


 二人の剣は何度もぶつかり合い、その度に激しい爆風を齎した。


 激しいぶつかり合いの末、カストールは離れ飛び上がる。


「これは避けられるかな」


 先程の『地裂斬(じれつざん)』によって発生した現象がレヴァント周辺で連続的に発生しだした。

 どこもかしこも地面が揺れ動き崩れる。

 レヴァントは崩れる地面、昇る斬撃を躱しながら移動していた。


「『爆衝双閃(ばくしょうそうせん)』」


 躱しているレヴァントにさらなる斬撃が迫る。


「葬れ。『黒呑(こくどん)』」


 レヴァントが迫る斬撃を向いて剣を頭上で横に動かした。

 すると動かした道筋に黒いモヤが現れる。


「あれは一体。エルナト様にもあの様な情報は聞いていない――!」


 斬撃。

 本来ならば爆散するであろうその攻撃はモヤに衝突するやいなや、その存在がまるでなかったかのように世界から消えた。


 (『爆衝双閃(ばくしょうそうせん)』、高速に飛行し対象を斬りつけた後に炸裂を起こす剣術。

  その攻撃をいとも簡単に。あの男が使ったのは闇属性の消失か吸収系統の魔法剣術なのだろう)

 これまでに見たことのない技を前にカストールは深く考える。

 あれを見てしまえば安易に攻撃は出来ない。


 吸収されるのなら無闇に技を繰り返せばそれこそ体力の消耗は激しくなり戦況は大きく傾く。

 カストールはそれを危惧した。


「肩書相応の実力があることは認めましょう。しかし私には勝てはしませんよ」

「お褒めの言葉感謝する。勝てないとは君が敗走するからなのか?」

「ッ。全くヘルベティオスの様なうざさですね」


 宙に浮いていたカストールはコートを靡かせ、レヴァントに急接近した。


「己の長所を殺した動き。勿体ないやつだ」


 レヴァントは剣でカストールの剣を抑え弾き返す。

 カストールは喰らいつき、何度も剣を振る。

 その度にレヴァントは何の迷いもなく的確に剣の筋道を見分け受け止める。


「ッ!」


 カストールは足でレヴァントの腹部を蹴ろうとした時にレヴァントの片手によって防がれた。

 それだけでなくレヴァントはカストールの足を握りしめた。


「レヴァント!」


 片足で耐えるカストール。

 しかしその体勢はあまりにも不安定でレヴァントとの交戦をするには厳しいものだった。

 これでもかと言うほどにレヴァントはその状況のカストールに向かって剣を力強く振り切った。

 カストールは転んでは終わりだと考え、必死に堪えながらその攻撃を防ぐ。


「アアアア!!!!」


 カストールはレヴァントの剣を押し返した。

 それでもレヴァントはカストールの足を離そうとはしない。


 カストールは自身の前で剣を横に向けた。


「『斥裂散衝(きれつさんしょう)』」

「っ!!?」


 レヴァントは少し焦った。

 すぐにカストールの足から手を離しその場を離れようとした。

 しかし遅かった。


「滅びろ」


 カストールの剣の刃から不規則に散る斬撃。

 斬撃同士の間隔は狭く回避、止める余地などない。

 まさに逃亡戦術。


「――!」


 ひとつの斬撃が当たったレヴァントはまるで衝撃波でもくらったかのように吹き飛んだ。

 吹き飛ぶレヴァントにさらなる斬撃が衝突してくる。


「私を甘く見ない方が良いですよ。翼無き黒竜よ」


 砂埃が薄くなり人の姿が現れる。

 そこには鎧に無数の傷が入り、額からは血を流しているレヴァントの姿があった。


「お前にだけは言われたくないな。偽りの星の使い」


***

***


「はぁ....はぁ...」

「少し休みましょうよ」

「そうだな」


 あれからしばらく俺達はひたすら走った。

 最初こそは協会の人間が追いかけてきていたがマネストを出て森に入ってからは彼らの姿はなくなった。

 

「はぁ....」


 俺は木を背もたれにして座り込んだ。

 かなり全力で走り続けたから疲れた。


「それでこれからどうするの?」

「場所がバレてしまった以上、ここにはいられないな」

「...そうなのね」

「まぁ、まずはこの状況をどうにかしないといけないな。

 もしかしたら奴らはまだ探し回っているかもしれないわけだし」


 ルナも俺の横に座り込んできた。


「はぁ...ほんと私は厄介な人と知り合っちゃったなぁ」

「それは我慢してくれ。長居はするつもりはないから」

「.........」


 !?

 何かがガサガサと鳴り、遠くからは人の声が聞こえてきた。

 それらは少しずつ近づいてきている。


「はい。奴らはこちらの方面へと走っていきました。

 逃げるならこの森の中である可能性が高いでしょう」


 一人の協会の人間らしき男が誰かに丁寧に説明している声が聞こえてきた。


「そうか。あとは任せておけ」


 俺は思わず口を手で塞いだ。

 この声、嫌なほどに聞き覚えがある。

 どうしてここにヘルベティオスが来ているんだ。


「いるんだろ!! クライド・アンサラー!! 諦めて降伏しろッ!!」


 誰か姿を現すか。

 このまま隠れ過ごしてやる。


「そうかそうか、姿は現さねぇか。ビビってんじゃねぇぞ!!」

「ヘルベティオス様、一体何をするおつもりですか!」

「どけ」


 協会の人間が焦ったような声でヘルベティオスに問いかけているようだ。

 

「お前がその気なら見つけ出してやる。『爆震衝(クエイク・インパクト)』ッ!!!」


 茂みの隙間から奴の姿が見えた。

 ヘルベティオスは力強く握りしめた拳を地面に勢いよくぶつけていた。

 その瞬間、俺達のいるところまで地面が振動した。

 木は激しく揺れ、鳥が羽ばたく音が良く聞こえてくる。


 次に地面に亀裂が入り始めた。

 次第に地面は浅く割れ、足元が不安定になった。

 割れた事により周囲の木は根の力が緩み木が傾いたり、地面に倒れたりと周りの環境は一瞬にして最悪になった。


 そして――。


「クライ、危ない!」


 木が俺達の方に倒れてきた。

 俺とルナは立ち上がりその場を何とか離れた。

 だが――。


「見つけたぞ、無能のクライド・アンサラー」


 木の下敷きにならない代わりとしてあの男に見つかってしまった。

 見つかったらもう逃げられない。

 前回の時に痛いほど感じたことだ。


 今度はきっと逃げられない。

 今度こそは本当に決着をつけないといけない。


「勝者を決めよう。ヘルベティオス」


 俺は剣を抜き、ヘルベティオスに向けたのだった。

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