第34話【一波乱】
一方その頃、ルーゼルト王国の周辺国や村に大規模な魔巣災害が発生した事が新聞を通して大々的に報道された。
「まさかまた起こるなんて、ね。
当時の記憶はあまりないけどよくお兄ちゃんから話は聞いたことがある...。
凄く恐ろしいものだって...」
「私は当時、ネスタナ王国にはいなかったので詳しくはわからないですけど、とても残酷な出来事だったと聞いてます!」
「あぁ、あの時は本当に大変だった」
三人、いや彼らは今とある酒場に来ていた。
というのもクライドが失踪してから一ヶ月が過ぎ、捜索の疲労や精神的な疲労で三人ともぐったりとしていた。
その様子を見かねたレヴァントがロイスにご馳走してあげて欲しいとお願いをし今に至る。
勿論、代金は全てレヴァント持ちである。
「我々の時のような悲惨な結果を迎えて欲しくはないですね」
「確か、マネストは冒険者が多いんだったよな!」
「そうですね。魔巣が多くあり、魔物が豊富なので素材集めやお金稼ぎの為に多くの冒険者がマネストに在中または訪れていますよ」
サユが「ん〜」と頭を抱える。
「でも今回みたいなことが起きたら大変になっちゃうよね...」
「そうかもしれませんがそもそも魔巣が暴走する確率は極めて低いです。
なのでマネストにある魔巣がいくつも暴走するなんてことはないでしょう。
ですから冒険者も多いマネストなら被害は抑えられると思いたいですね」
頷きながら料理を頬張るサユ。
飲み物で食べ物を流し込んだレインがロイスにある事を聞く。
「もし魔物と戦えていたとしてもどうやって魔巣の暴走を終わらせるんですか」
「過去の災害から終わらせる方法は2つしかわかっていません。
一つは魔素侵食体を地上に引き出している大本の魔物を討伐することです。
そうすれば他の魔物は自然に消失します。
もう一つは聖剣によって魔巣を浄化することです」
「一つ目は分かったけど二つ目の聖剣による浄化って何ですか?」
ロイスはコーヒーを一口飲み、レインの問いに答える。
「遥か昔に魔剣に対抗する剣として存在していた唯一の剣のことで今は百年も前の災害で失われたんです。
なので現在では浄化する術がなく大元の魔物を討伐する事が終わらせる鍵となっているんです」
「そうなんですね。一体誰がそんな大事なものをなくしっちゃったんだろう」
ロイスは話終えると残っていた少量のコーヒーを飲み干し再びテーブルに置く。
「そろそろ皆さん食べ終えましたか?」
「あとちょっと」
サユは口に沢山ご飯を頬張った。
しっかりと噛み、飲み込む。
「私はもう大丈夫!」
「私もです」
「俺もそろそろ限界」
「でしたらお会計をしましょう。レヴァントさんから頂いたこのお金で」
「「「ご馳走様です」」」
食器をまとめ四人が立ち上がる。
その時、店の入口の扉が大きな音をたてて開いた。
サユ達だけでなく、その場にいた全員が扉の方を見た。
「全員、その場を動くな。安心しろ、我々の言う事を聞いていれば危害は加えない」
「あいつらは...」
レインが言う。
いきなり入ってきた三人の男性の服には星の紋章が入っていた。
それが意味するのは協会の人間であるということ。
ロイスはさらに気づく。
もし彼を探しているのだとしたら王都ルグリアを未だに探しているわけがない。
あの一件から既に一ヶ月。
協会ならば捜索網を広げているはずだ。
ならば、どうして協会がルグリアで、それにあえてこの酒場に...。
あれ以降新聞に載っていないことから一ヶ月で手がかりはゼロ。
協会のトップもピリピリしだす頃。
見つからないのならおびき寄せる。
その人質を...
ロイスは咄嗟に三人に彼らの目につかないよう顔を伏せるように言った。
しかし時は既に遅し。
「あの大きな赤いリボンはまさに...」
「その周りにいるのも追加で聞いた情報と一致しているな」
協会の人間が一人、四人のもとにゆっくり近づいてくる。
「そこの者達、今すぐ身につけている武器を投げ捨て我々についてくるがいい。
最初にも言ったが言う事を聞くのなら危害は加えない」
「.....返して」
「あ? 何だ、言いたい事でもあるのか」
「お兄ちゃんを返してっ!!!」
サユは顔をあげてそう叫んだ。
「殺人未遂をした人間をかばうとはいい度胸だ」
「っ!!」
男はサユの頬を叩いた。
「やめろ!」
「謝って下さい!」
サユの前にレインとミーシアスが立つ。
ふたりとも計り知れない怒りを抱き男を睨んでいる。
「お前達、こいつらを拘束しろ」
「「はっ」」
二人の男がサユ達に近づいてくる。
「これ以上、この子達に近づかないで下さい」
ロイスが三人の前に立つ。
片腕で剣を握り、男達に突きつける。
しかし協会の男達はそのロイスに対して全くもって恐れてはいなかった。
彼らの目は見下していた。
「片腕で何が出来る? 部外者は引っ込んでおけ」
「馬鹿にするな!」
レインが近くのテーブルに置いてあったコップを手に取り男に投げつけた。
中身が盛大に撒き散り男はびしょ濡れになってしまった。
「貴様ッ!」
男は怒り、剣を手に持った。
そして振り上げる。
迫る剣をロイスが抑える。
その間、残り二人の男も剣を抜き迫ってきた。
「土の精霊よ、我が敵を射る弾丸となれ。『土弾』」
杖を向けたミーシアスは詠唱をした。
土の弾が一人の男に直撃した。
「クライドを返せ!!」
レインは一人の男に対して思いっきり剣を振る。
男はその攻撃を防ぐがとてつもない力の乗った剣に押され吹き飛ばされた。
二人の男はミーシアスとレインの攻撃で押し飛ばされ、テーブルやイス、飲み物や食べ物をひっくり返しながら店の壁にぶつかった。
「三人とも今のうちに店の外へ」
「「「はい!!」」」
三人はロイスと男の横を走り通り抜けた。
店を出た事を確認したロイスは剣で競り合っている男の横腹を足で蹴り飛ばした。
「...ま、待って!」
ロイスはその言葉を無視して、テーブルに食事代だけを置いて去った。
***
「はぁ...はぁ...」
四人は店から出たあと追いかけられないように必死に走った。
そしてかなり離れた路地までやってきた。
息をきらしている四人。
呼吸を整える。
「みんなありがとう」
「気にするな。クライドだったらやるであろうことを俺達が代わりにしただけだし」
「それにしても協会はついにクライドさんじゃなくて私達を狙い始めたのでしょうか?」
「その可能性は十分にあると思います」
レインは大通りの様子を確認した。
「こうなったらこの街を出るしかないのか?」
「多分それは難しいと思う。今頃、門は閉まっているか警備が厳重になっているだろうし」
「つまり今の私達はこの街でバレずに潜むしかないということですね!」
ミーシアスがひらめいたように言った。
「皆さんはひとまず家に隠れてください。私は黒龍の皆さんや反協会派の方に相談してみます」
「わかりました!」
「では、私はここで。皆さんお気をつけて」
ロイスは左右を確認して誰も来ていない事が分かると路地を出ていった。
「私達も急いで戻ろ」
「はい!」
「だな」
三人も家に向かって急いで帰ったのだった。




