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第29話【父の教え】

 魔巣(まそう)の中は前とは似てもいない。

 あればあるほど中の種類も相応にあるのだろうか。

 いや、今はそんな事を考えている場合ではない。

 魔巣(まそう)に入ってすぐルナは違う道へ自ら進んで行った。


 魔巣(まそう)でソロプレイ?! と思わず声を出したのだがルナ曰くここではそれが当たり前らしい。

 一般が簡単に入れるということはそれほど危険ではないのだろう。

 だがそれでも魔巣(まそう)を1人というのは恐ろしい。

 前回の出来事もあるし尚更だ。

 ルナは大丈夫だろうか。

 まあ、大丈夫か。

 俺よりもここの事は知ってるだろうし。

 むしろ心配すべきは自分自身なのかもしれない。


 さてさて、魔物を狩ってポイントを稼ぎたいところ。

 魔巣(まそう)に入って10分程度、魔物の痕跡すらない。

 他の冒険者に狩り尽くされたんじゃ無いだろうな。


 魔巣(まそう)にも関わらずこの緩さ。

 それに俺は油断していた。


「ウォー!!」


 !?

 左右の分岐に差し掛かった時、右側の暗闇から声と共にゴブリンが姿を現した。

 手には石の棒を握っている。

 殺意マシマシのようだ。


「させるか!」


 俺は剣を抜きゴブリンの振るう石の棒にぶつけた。

 違和感。

 普通のゴブリンよりも微かに力が強いような...。

 というかゴブリンが何故魔巣(まそう)にいるのか。


「ウォーー!!」

「しつこいな」


 石の棒を押し返す。

 同時にゴブリンも軽く下がった。

 そこに俺は畳み掛ける。

 次の行動を起こすまでに発生する一瞬に剣を横に一振。

 ゴブリンは魔石となり姿を消した。


「やっと1体か。ちょっとまずいかもなあ」


 ルナは今頃10体とか行ってるんじゃないか。

 てか魔巣(まそう)についてちっとも知らない俺が単独で行動ってあまりにも不利過ぎるだろ。

 ちょっとくらいハンデをくれても良かったんじゃないか?


 そんな事をグチグチ言っていても意味はないか。

 次だ次。

 魔物を狩って狩るぞ。


 ***


「はあ、疲れた」


 あれから数時間が経ったと思う。

 今の討伐数は13体。

 しかも小物ばかり。

 正直勝てる未来が見えない。

 どっかに強い魔物とかいないのか?


 俺はそんな事を思いながら座った状態で後頭部を壁に当てた。

 ガコン。

 微かに頭に感じた押し込み。

 耳に聞こえた音。

 突如周りからゴゴゴという何かがずれる音が聞こえだした。

 同時に床が斜めになり俺は見えぬ暗闇へと誘われた。


 ***


「いってぇ...」


 尻から落ちた。

 吸い込んだらむせてしまいそうな程に舞っている砂埃の中で立ち上がる。


 しばらくして砂埃が消える。

 目に映るのは何の変哲もない広い空間。

 天井も高い。

 少し上の壁には穴が空いている。

 今いる場所からして俺はあそこから落ちてきたのだろう。


「......」


 馴染み深いこの気配。

 無意識に手が柄を握りしめている。

 ここには何かがいるに違いない。


「...!」


 やはりいる。

 微小ながら存在を感じる。

 この広い空間、道中に感じた魔物とは違う気配。

 これらから推測するにここには強敵がいる。


「モゥオオオオ!!!」


 薄暗い空間の中、魔物の唸り声だけが響き渡る。 

 手に持っていた火をつけた木の棒を自分の前、やや上に掲げる。

 微小の灯りに照らされた魔物の体。

 いや、足。

 上に火を移動させるとその姿が鮮明になっていく。


 さらに上に向けると魔物の目がギラリと光る。


「!?」


 魔物は不意をつくようにして重たい拳を振り落とした。


 間一髪でその場を離れることができたがあんなのが当たっていたら...。

 魔物の拳がぶつかった地面は光に照らされているところだけれでもバキバキになっている。


「ふぅ」


 いきなりの攻撃に動揺しながらも相手の様子を伺う。

 それにしても暗い。

 火の灯りがあるとはいえ見えにくい。

 それにこれを持ったまま戦闘など不可能だ。

 

「モォォォ!!!!!」


 来る。

 

 俺は魔物の攻撃を躱した。

 

 あれの攻撃はなんとか躱せられる。

 だがそんなことを繰り返していれば体力の限界が来るのは目に見えている。

 どこかで蹴りをつけないといけない。

 

「...あれをやってみるか」


 昔父さんから色々と教えてもらったことの一つに【察知】というものがあった。

 これは魔法とかそういうものじゃないそうだ。

 簡単に言えば技術。

 つまりは簡単に成せることではないということ。

 

 ただ察知と言ってもただの察知ではない。

 気配を感じることは誰にでもできる。

 父さんから教わった察知というのは視界に無い存在の全体、動き、それらを見通す力だ。

 ただ、小さい頃から練習してきたができた例がない。

 前者ならば簡単なんだけど。


 だらだらとやれないわけを探す時間など無駄だ。

 出来なかったらそれはその時、今はただ実行することだけを考える。


「かかってこい、魔物!!!」

「モォォォ!!!!!!!!!!」


 魔物は俺の声に反応するかのように叫ぶ。

 同時になにかが空を切る音が聞こえた。

 攻撃が来る。


「あぶなっ」


 見えはしないが何とか存在を感じられる。

 

 ドンッと重々しい音が鳴る。

 魔物の攻撃が地面にぶつかったようだ。


 油断大敵、追撃はすぐに来た。


 もう片方の拳を躱す。

 体勢を立て直し火で照らす。

 そこには牛の様な見た目...ミノタウロス。

 いや、ミノタウロスに似たなにかだろうか。

 似てはいるが明らかに通常よりも見た目が異形だ。

 魔巣(まそう)による影響なのだろうか。


「.....」


 魔物はこちらをギロリと見つめてきた。

 

 今か。

 二発の攻撃を繰り出した魔物は地面に跪く形でこちらを凝視している。

 様子を伺っているのか、理由はわからないが好機。

 攻めるしかない。


 俺は手に持っていた火のついた木棒を魔物めがけて投げつけた。

 火が宙を舞うその瞬間、俺は剣を握った。


「お前の首は貰った!!!」


 俺は飛びかかった。


「モォォォ!!!!」


 魔物は両腕に力を入れ地面を掴みだした。

 

 一体何をする気なんだ?!


「モォォォ!!!」


 なっ!?


 魔物は地面の一部をえぐり上に向けて投げ上げた。

 俺は完全にその攻撃に流された。


 魔物から距離が離れる。

 火の灯りは遠に消えた。


「...はぁ」


 細かく砕けた石に注意して地面に着地し体勢を立て直す。

 辺りは暗闇。

 情報は遮断された。


 俺は目を瞑る。

 今は感覚を研ぎ澄ませるべきだ。

 

 気配、いや、とてつもなく薄い紫のモヤ....そんなものが見える。 

 目は開いていないはずなのに。

 こちらへ迫るモヤ。


「くっ!!!」


 咄嗟に剣を構え、魔物の攻撃を流す。

 握る腕に力を込め次の攻撃に備える。

 ぶつけ、流す、またぶつけ、流す。

 暗闇から現れる攻撃に幾度と立ち向かう。

 だが、すべて一歩遅い。


 もっと早く、もっとだ。

 見えなくとも食いつけ。


「モォォォ!!!!!」


 ドン。

 重々しい魔物の攻撃が剣にぶつかる。

 押された衝撃で魔物から遠ざかった。

 

 近づけ。

 距離が離れていては今の俺には魔物を捉えられない。 

 必死に距離を詰めろ。


「『加速(アクセラレーション)』!!!!」


 斬れ。


 剣を思いっきり横に振るった。

 しかし勢いは殺されなにかとぶつかり合う。

 

 でも感じる。

 俺はこの魔物に今攻撃出来ている。

 この暗闇の中で。

 

 捉え、剣を握り、振り続ける。

 

「モォォォォ!!!!!!!」


 暗闇の中、パキンという何かが壊れたような音と魔物の叫び声がうるさく響く。


 その時からだろうか。

 魔物の動きが鈍くなったように思える。

 一度も傷をつけられた感覚はなかったが今では何十回かに一度、感じる。

 

 行ける。


「おらァァァ!」


 渾身の一撃。


「モォォォォォ....」


 魔物が引き下がった気配。

 今なら殺れる。

 一人でも....俺はやってみせる。


「『参斬(さんざん)太刀(たち)』」


 暗闇を斬り裂く三つの刃。

 耳が痛む程に叫び声をあげる魔物。

 

 それから数秒。

 ドン、ドンと音が鳴り風が吹いた。


 それまで剣の音、魔物の声とひたすらにうるさかった暗闇は静寂と化した。


「はぁ....はぁ....殺ったのか」


 先程まで感じていた薄いモヤは見えなくなっていた。

 魔物を倒したということなのだろうか。


 俺は手に握る剣を見つめた後、深く息を吸い込んだ。

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