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第28話『マネストのギルド』

 翌日。

 湯に浸かった時は本当に気持ちが良かった。

 全ての疲れが取れたって感じだ。

 そして俺達は今魔巣(まそう)都市――マネストに来ている。


 というか本当にかなり近かった。

 せめて馬車とかでも使うのかと思っていたが使わず。

 徒歩数十分でマネストに着く事が出来た。

 ここの存在を知っていたらきっとこっちに来ていただろう。

 もう少し調べるべきだったか。


 マネストの門をくぐるとそこはどことなくアスフェルと似た雰囲気を感じた。

 出店を多いし、出歩く人も多い。

 見ている感じにはジュエリーショップや武器屋が多い印象だ。

 それにかなりの頻度で武装した者――冒険者と出くわす。


 ここに来るまでの道中にルナから聞いたのだがこの魔巣(まそう)都市――マネストはやはり魔巣(まそう)都市と言われるだけあってかなりの魔巣(まそう)が出現しているそうだ。

 魔巣(まそう)があって被害がないのかと思ったのだがどうやら出現する魔巣(まそう)が基本的に中規模や小規模だそうでマネストに集まる冒険者だけで鎮圧出来るそうだ。


 そんな魔巣(まそう)には沢山の魔晶石、そして魔物が落とす魔石が沢山あるそうだ。

 資源も豊富だからこそ武器屋も多いし、収入目当てで滞在する冒険者も多いのだろう。

 何とも羨ましい限りだ。

 だがこのマネスト、魔石とかが沢山で商人も冒険者もうはうはな感じがするがそうでもないそうだ。

 やはり沢山あるといっても有限だ。

 新しい魔巣(まそう)が出現しない限りマネストにある魔石、魔晶石は減る一方。

 さらにマネストにはダンジョンがないらしい。

 つまり魔巣(まそう)が出現した時はうはうはだが時間が経てば経つほど旨みがなくなるということだ。


「もうすぐでギルドよ」

「あぁ……」


 もうすぐでギルド……。

 心配で仕方がない。

 一応ルナから家にあった口以外隠れている仮面を貰ったけど、逆に怪しまれそうだ。

 あとちょっと邪魔。

 まぁ、ここまで来てしまった以上、何かを言っても意味がない。

 突っ走られるだろう。


 ***


「あっ! ルナちゃんやほ〜」

「こんにちは!」


 ギルドに入った。

 中はルグリアのギルドとほぼ変わらない。

 ギルド全体で室内の趣向を統一でもしてるのだろうか。


「あれ、そっちの子は....?」

「あっ、えーっと……その、えー、あぁー」


 こいつ、嘘を考えるのが遅すぎる!!

 良くそれでこんな事をしようって言えたな。


「あ、俺はルナの親戚です」

「そ、そうそうなの! 彼はクライド……あっ、ちがっ、クライ・ウェルナンって言うの!」


 今、俺の名前を普通に言おうとしてたぞ。

 本当に隠し通して行けるのか。

 否、こいつには無理だろう。


「へぇ! あ、そうなんだね! それで今日はどうしたの?」


 何故か行けた。

 勘の悪い人で良かった。


「あ、あの今日はクライ……の冒険者登録をしてほしくて、登録に何か必要なものってあったっけ……?」

「ルナちゃんの親戚ならいらないよ〜。

 この紙に色々と書くだけでおーけー!」

「ありがとう!」


 受付の女性は下から紙とペンを差し出してきた。


「じゃあ、ここに名前とか書いてね」


 紙には名前、年齢、性別、役職、出身地、現住地、魔力保持の有無などなど様々な項目があった。

 名前はルナが咄嗟に生み出したクライ・ウェルナン。

 なんかもっと捻った名前にしたほうが良かった気もするけど良いか。


 役職は一応は剣士、出身地は旧第三都市ルサーリア、現住地は……あそこどこだ。

 林の中か? なんて書くべきなんだ。


「なぁ、なぁ」


 俺はルナに小声で話しかけた。


「現住地ってなんて書けば良いんだ? 林の中か?」

「そんな事書いて通ると思ってるの? とりあえずマーセル村って書いておいて」

「大丈夫かそれ? 俺やばいやつだと思われないか?」

「良いから、書いて!」


 渋々、マーセル村と書いた。

 次に魔力保持の有無。

 ルグリアのギルドでも最初書かされたな。

 これはダンジョンや魔巣(まそう)に行く為には知っておかなければならないことだ。

 魔素耐性がないと侵蝕されかねない。

 だから冒険者には魔力が必要なのだ。

 とは言ってもこれらは多少の魔力があればなんとかなる。

 大抵の人が微小な魔力を持っているから無と回答する人はほとんどいないだろう。


 俺はその後も色々とある項目に記載をしてい数分後に書き終えた。


「よし、これで君は晴れて冒険者ってわけだぁ! レベル1だけど頑張ってねぇ!」

「ありがとうございます」


 俺が礼を言っていると何故かルナがその場を去ろうとする。

 依頼を受けないのだろうか。


 ***


 ギルドを出た俺達。

 またどこかへと歩いていく。


「以来は受けないのか?」


 気になった事を聞いてみた。


「ここはあんまり依頼がないのよ」

「ならどうやってレベルをあげるんだ?」

「それは簡単よ! 魔巣(まそう)に行って魔物を狩る。

 その量や質によってその人の実力が決まるの! まぁ、珍しいわよね」


 他のギルドよりもここのレベルアップの条件の方が良さそうな気がする。

 いつもならしょぼい依頼をちまちまとやっていたらいつかは上がるけど、ここマネストではちまちま魔石を集めても評価には繋がらない。

 より強い魔物を倒して初めて評価される。

 やはりマネストの評価方法の方が理想的だ。


「ちなみに私はレベル3よ」

「クライドの方の俺もレベル3だ」

「だから何よ! 今のあなたはレベル1だから!!」

「すぐに追いつくからな」

「やれるもんならやってみなさい!!」


 ルナはそっぽを向いた。

 全く変なやつだ。


「おい!!!」


 どこからかそんな声が聞こえてきた。

 ただその声は俺達に向けられたものではなかった。

 辺りを見渡すと前方の右の方、出店の一つで何か起こっているみたいだ。 

 周りには段々人も集まりだした。


「行ってみよう、ルナ」

「はぁ、あなた面倒な事に首を突っ込むタイプね」

「まぁな」


 嫌がっているけどそれでもついてくるルナ。


「良いか、分かっているのか! お前が何をしでかしているのかを!!」


 声の主は見知らぬ男だった。

 貴族の様な立派な服を着ている。

 その男の後ろには二人の武装した者がいる。

 よく見ると彼らの服には星の紋章が入っている。

 ということは冒険者協会の者か。


「す、すいません……許してください」

「黙れい! お前はこの私が誰なのか分かっていないようだな! 私は冒険者協会ルーゼルト王国ギルド提携店管理責任者――アーネルド・ルースター様だッ。

 どうしたこの名を聞いて言葉も出ないか!!」

「あ、いえ……全然知らなかったので……」

「なっ、お前私の名前を知らないとは!! 許されぬぞ!!!」

「す、すいません。

 これからはしっかり覚えますから!!」


 何なんだあの人は。

 冒険者協会の凄そうな人なのに全くもって威厳がない。


「ルースター様、そろそろ次の現場の時間が迫ってます」

「そうか。運が良かったな。

 次、覚えていなかったらお前の店は廃業だ!!」


 そんな捨て台詞を言ってアーネルドとかいう男は武装した人達と一緒にどこかへと歩いていった。

 同時に周りにいた野次馬も解散していく。


「ルナはさっきの人知ってるのか?」

「良く来てるわよ。

 でもちょっとこの前とは違ったわね」

「一体何が……」

「前は冒険者協会マネストギルド提携店管理責任者だったのよ」


 何かちょっとだけ昇進していやがる。

 あんな感じなのに昇進出来るとは。

 冒険者協会は何を考えているのだか。


「まあ、さっきの人についてはわかった。

 それより今どこに向かってるんだ?」

「ギルドで登録を済ませたのよ。

 ならやることはひとつでしょ!!」


  ルナはそう言っているが俺には何のことなのかさっぱり分からない。


「あなた一応は冒険者だったんでしょ! それなら分かると思うんだけど?」

「確かに俺は冒険者だったけど薬草採取とかばっかりやってたし...名ばかりだよ」

「はあ、ほらついたよ」


  ルナが足を止める。

  そこには遺跡の様な建物が建っていた。


「これが魔巣(まそう)よ」


 なんと目の前の建物は魔巣(まそう)なのか。

 まさかこんなにも街に近いとは。

 マネストにはそういった魔巣(まそう)が沢山あるのだろうか。

 まるで別世界の様だな。


 立ち止まる俺たちの横を何人もの武装した者、武器を持つ者達が通り過ぎていく。

 みんな魔巣(まそう)から出てきたり、入ったり。

 目を疑いたくなるような光景だがやはりマネストでは魔巣(まそう)という危険な存在が日常に在るようだ。


「ぼさっとしてないで早く行くよ。

  こんな事してる間に狩り尽くされるかもしれないし」

「分かったよ」


 ***


 魔巣(まそう)の中に入った。

 過去1回しか魔巣(まそう)には行った事がない。

 だから今こうして魔巣(まそう)に入っている事が新鮮だ。


「それで魔物は普通に倒していいのか?」

「あなたに出来るならね。

  でも普通に倒すだけじゃつまらないよね」

「そんなことはないと——」

「ね?」

「あ、はい」


 ルナは一体何をする気なんだ。


「それで何をするんだ?」

「それは勿論——」


 ルナをこちらに振り向き両手を腰に当てる。


「討伐数勝負よ!」


 ルナはまるで既に勝負ありと言わんばかりの表情で言った。

 ならば望むところだ。

 この戦い、ルナに圧勝してやる。

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