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かぁたんでよかった

今度の休みはどんちゃんの最後のワクチンを打ちに行かなくてはならない。

そしてその一週間後に散歩デビューだ。

開店一番に電話がなる。電話対応が一番嫌いだ。

顔が見えない相手に話すことに苦手意識がある。


「お電話ありがとうございます。ペットショップこころの田瀬が承ります」

「一週間前に犬をお迎えしたんですけど、三日前からご飯食べなくてお腹空いたら食べますよね?」


この手の電話で残業より精神を削られる。

何故大丈夫だと思うのかが分からないし、理解もしたくない。

子犬は低血糖になりやすい。現に繁殖所からペットショップに来たばかりの仔で環境の変化に着いて行けず、一日ご飯食べれない仔もいるが、あの手この手で食べてもらっている。

人間の子供がいたら同じことが言えるのかと思ってしまう。


「缶詰を色々試して食べさせてあげてください。三日と聞いたので病院に連れていくことも考えてあげてください」


そうですか言われ電話を終えたけど、ペットショップで働いてから見えない黒い部分が多い事に悩まされるが良い飼い主さんもいるのでやっていけてる。


「田瀬さーん裏にいる柴犬ちゃん抱っこ入りますね~」


加藤さんが接客のためバックヤードに来た。

ここにきて一週間の柴犬がご指名らしい。


「柴犬さんでずーっと探してるらしくて~」

「いい家族だといいんですけどね・・・」


先ほどの電話で精神が衰弱してので、出来ればハッピーな報告を欲してる。

加藤さんは柴犬のカルテを一読して行ってきます!とバックヤードから出ていった。

私もどんちゃんのカルテ書こうかないざって時助かるし。


「田瀬~シフト希望出さないと店長勝手に組まされるよ~」

「あ、忘れてた」

「私は出したから今のうちに出しな」


鍋下さんにありがとうございますと言い、休憩質にあるカレンダーに休みの日を記入しようと考える。

連休が欲しい。どんちゃんの病院に散歩デビューに他にも遊んであげたい。

ダメもとで二日休みを希望書く。


「鍋下さん書きました」

「おけおけ」

「あとこのカルテ一枚貰っていいですか?」

「いいけど、何に使うの?」

「どんちゃんのカルテ記入していこうと思って」


どんだけどんちゃん大好きなのさと笑ってシーツを折っていた。


「田瀬さん!柴犬ちゃん家族決まったよ!!」


加藤さんの声がバックヤードに響く。


「加藤ナイス!」

「保険も入ってくれるし、今日連れて帰ることはできますか?」

「投薬などないので帰れますよ」


やったーと飛び跳ねている。

若いっていいなと思いながら柴犬の連れて帰る箱を作る。

良い家族に決まってよかったと少し気持ちも晴れた。


契約を済んだ後加藤さんは先に上がり、鍋下さんと明日使うシーツを折っていた。

このシーツは中に新聞紙を挟んで強度を作りシーツで包んでガムテープで止める簡単な作業だが毎日部屋を汚れたシーツは捨てて作った新しいシーツを敷く。綺麗に保つために必要なものなので残業してでも作らねばならない。


「あと二十枚作ったらあがろうか」

「はい」


二人とも疲れている。

毎日残業ばかりなんだから当たり前だ。

最後のシーツを折って肩を回す。バキバキになりすぎで重たい。


「よし、一緒にあがろうか」

「わかりました」


打刻してロッカーから鞄を取り出す。


「やっと帰れる~」


もう疲れたと言いながら上着を着る鍋下さん。

鍋下さんも仕事着で出勤しているのパーカーを羽織って出勤している。


「んじゃ田瀬また明日ね」

「はい、お疲れ様です」


八時十五分私も早く帰ろうと急ぐ。

どんちゃんがお腹空かせて待っているだろう。


「かぁたんおかえり!!」

「ただいま~」


飛び込んできたどんちゃんを抱きしめる。

顔を私の首に押し付けて匂いを嗅いでいる。


「ごはん食べようか」

「あい!ぼくお腹空いた!」


どんちゃんがご飯を食べている間に私もご飯を作る。

今日はそぼろ丼にしようと卵に砂糖をいれる。


「そー言えば、今日家族決まった子がいたよ」

「どんなの仔?」

「柴犬っていう犬種」

「そのこも幸せ?」

「そうだといいな~」


卵を焼きながら今日の事を考える。保険入るからいい人ではないが、その仔の事を考えてくれているという分かりやすい意志表明でもある。

炒った卵を別の皿に移して、ひき肉を炒める。


「かぁたんぼろぼろ!」

「ちょっと待ってね」


醤油とさけみりんと砂糖を一つまみと生姜チューブを適量入れて炒める。

ぱぱっと炒めたらご飯をよそう。

半分卵もう半分ひき肉を乗せる。二色丼の完成だ。


「できたからぼろぼろ食べようか」

「やった!!ぼろぼろ大好き!」


小さいテーブルにご飯を乗せてどんちゃんにボロボロを一つ一つあげる。


「ん-美味しい!!もう一個!!」

「ゆっくり食べな」


あっという間に五つ食べ終えたどんちゃんはまだ足りないと膝にしがみ付くが、私はそぼろ丼を食べる。


「かぁたんばかり食べてずるい!」

「どんちゃんもご飯食べたでしょ」


ご飯も食べ終えシャワーも済ませて。シャワーに入っている間ずっと「まだ~?」と聞いてくるどんちゃんに返事しながら頭を洗っていた。


時刻が十一時ちょっと過ぎた時計を見ながら寝る支度をする。

ぬいぐるみを咬み咬みしてるどんちゃんを抱きかかえベッドに乗せる。


「もう寝るの?」

「そうだよ」


どんちゃんは私の顔の横を定位置として伏せの形をしてる。

私はどんちゃんに毛布をかけてあげて頭を撫でる。


「ぼくかぁたんがかぁたんでよかった」

「ありがとう。どんちゃんもありがとうね」


私は気づけば眠りに落ちていてどんちゃんが私の手をぎゅっと抱きしめていたのを感じた。





















ブックマークといいねとお星さま付けて頂きますと幸甚に存じます。

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