ボロボロと出来ない約束
どんちゃんが喋りだして執筆するのが楽しくなってきました。
自転車で安全運転で帰宅し、駐輪場に自転車を停める。
まだ空は薄暗く静かにオレンジ色が空を染めてた。
いつも真っ暗の中帰宅するので、こんな明るい時刻で帰るのは新鮮だった。
私の家は二階にあるので駆け足で階段を上る。会いたくて仕方なかった。
「ただいま~」
「おかえりかぁたん!!」
飛び込んできたどんちゃんを抱きしめる。
犬特有の獣臭がまた愛おしさを加速させる。
まだ成犬の大きさではないので、もっと大きくなるだろう。
「なんで今日は早いの?」
「鍋下さんってわかる?その人のおかげだよ」
「わかんなーい」
それよりおやつは?と手提げ袋の匂いを嗅ぐ。
鍋下さんにもお世話になってるのになっと思いながら袋からおやつを出す。
「たまごボーロだよ」
「ぼろぼろ!」
日本語教えないといけないとと思いながらご飯茶碗にご飯を入れる。
「ごはんの後におやつね」
「ご飯食べる!!」
一目散にご飯を食べに行くどんちゃんを見る。
おやつ食べれるのだろうか。
「終わった!」
「終わったらごちそうさまって言うんだよ」
「ごちそうさま?」
頭を傾け、どいう意味だと困惑してた。
私も普段口にするが、深く考えてこなかった。
「ご飯ありがとうございましたって意味だよ」
「ありがとうじゃだめなの?」
そう言われるとは思わず感服してしまう。
日本語の難しさでもある。ありがとうにもいろいろあるんだと気づかされる。
「ご飯の時は御馳走さまでよくて、他はありがとうでいいんだよ」
「わかった!ごちそうさま!」
どんちゃんの今の時期は話せなくても何でも吸収する時期だからそれもあってかあんまり深く追求してこなかった。こうやって言葉を覚えていくのかなと小さい子供を接するみたいに慎重になる。
悪い言葉を出来る限り覚えてほしくない綺麗な日本語じゃなくてもいいから自分の気持ちを伝えれるように育てたいと考えていたら犬相手にここまで考え犬が喋る自体摩訶不思議な出来事を受け入れている自分が面白かった。
「ボロボロちょーだい!かぁたん」
私はたまごボーロが言えないどんちゃんに可愛いと胸が締め付けられながら封を開ける。
ほのかに香ばしい匂いを放つおやつに懐かしさを感じた。
小さいとき妹と取り合いながら食べたのを匂いに思い出された。
「一つずつね」
「はーい」
一つ掌に乗せて、口元まで運ぶ。
ふんふんと匂いを嗅いでパクっと口に含む。
サクサクと音を立てて食べ始めた。
「ボロボロ美味しい!!」
「よかったあと五個ね」
「えーもっと食べたい!!」
前足をパタパタと足踏みさせて駄々を捏ねる。
可愛さでもっとあげたくなるが、心を鬼にして四個だけ出して、封を閉じる。
「あー!!」
「明日もあげるから今日は我慢」
しょぼんとした顔をしながら二つ目を食べる。
「んー美味しい!ぼくこれ好き!」
すぐに機嫌が戻るのは子犬だからか性格なのかどっちなんだろう。
最後の一つを食べ終えてこっちをキラキラとした目で見つめてきた。
言いたいことは話せるどんちゃんじゃなくても分かる。
「もう一個ちょーだい?」
「だめ」
ここであげてしまうと覚えてしまうので心を鬼にする。
飼い主が一度は通るであろう戦いには負けない意識が大事だと自分に言い聞かせる。
「かぁたんのけちんぼ!」
「はいはいおもちゃで遊んでなさい」
ボールを投げると、一目散に「ボール!!」と飛び掛かって咬み咬みしてる間に自分のご飯を支度しようと立ち上がる。どんちゃんのおかげで久々に定時に上がれたので自炊しようとスーパーで買い物してたんだ。
今日はラタトゥイユ作ろうと決めていたので悩まず冷蔵庫から材料を出す。
「かぁたん何してるの?」
「私のご飯作るんだよ」
「かぁたんもごはんのあとボロボロ食べるの?」
「食べないよ~まだ狙ってるな~」
バレたー!とそんなに広くない部屋を何故か嬉しそうに走り回る。
毎日定時で上がれたらどんちゃんとの時間も取れるようになるのにな・・・。
材料を切りながら時々どんちゃんに、目を配らす。
「僕の方がつよいんだぞ!」
ひつじのぬいぐるみ相手に強気に咬んではぶんぶん振り回しては飛ばしてを繰り返してた。
犬らしい遊びをしててその姿を見ながら夜ご飯を食べる。
明日は今日の分も残業しないとかなと思いながらお皿を洗う。
時刻は22時寝るにはまだ早いし、勿体ないからシャワーを浴びてどんちゃんと遊ぼうと決めた。
「今日もかぁたんと寝るね!」
「んじゃ十一時に寝るまで遊ぼうか!」
「やった!!引っ張り合いっこしよ!!」
シャワーを出るまでドアの前で「まだ~?」と急かすどんちゃんに「まだ~」と返すのを繰り返す時間を繰り返して急いであがる。
十一時まで引っ張り合いっこして過ごして一緒にベッドに入りながらスマホでスロープを探す。
「明日も早く帰ってきてね」
「出来たらね・・・」
出来ない約束はしないのがモットーだ。
自分が約束に期待しすぎて嫌な気持ちになるのがトラウマになっているからだ。
すべて男絡みの約束だが、どんちゃんに寂しい思いをさせないために嘘をつけれない。
どんちゃんの頭を撫でながら眠りに落ちていく。
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