イヤイヤ期
大荷物を持って帰宅する。
「これが竹本さんから貰ったプレゼントでしょ」
「たーけもとさん!」
「櫛だって!どんちゃん伸びてきたから丁度いいね!」
「これで前髪やる!」
「これが鍋下さんのお医者さんごっこセット!」
どんちゃんは貰ったものですぐに遊び始めた。
「どこが痛いですか?」
「足が痛いです」
「ちょっと見ますね~」
おもちゃの聴診器を足に当てて「うーん」と医者をしてくれている。
「風邪ですね!」
「風邪なんかい!」
きゃっきゃっと楽しそうにぬいぐるみにお注射しますね~と打っている。
皆から祝われているどんちゃんを見て本当にいい仔に育っていると思う。
「どんちゃんは素敵な一年過ごそうね!」
「またいっぱいプレゼントもらう!」
リクの里の連絡帳にもおめでとうございます!と書かれていて私の疑問だった「年齢について」が書かれていた。人間と同じスピードで年を取るのか?と言う質問だ。
「統計では普通の犬よりもゆっくりな傾向です。なのでリクの里では獣人専用の小学校もあります。
小学校にはリクの里の保育園を三年通って頂いてからご利用可能になります。」
「三年か・・・知らないことだらけだ」
「かぁたんもお注射する?」
「ありがとう!」
竹本さんに貰った櫛で全身梳かしてあげる。
もっとどんちゃんの事を勉強する必要があるな。
「どんちゃんご飯食べようか!」
「あい!」
ジャガイモとささみを茹でた簡単なご飯を作る。
どんちゃんは綺麗に残さず食べてくれてお皿を下げてくれるが、シンクに届かないので私が受け取る。
「お医者さんごっこする~」
「一時間したら寝るからね~」
どんちゃんがぬいぐるみ相手に治療している姿を動画に撮る。
「あ、今度かいくんとココアちゃんが家で遊ばない?って」
「誰のお家で?」
「決まってない!」
「あらま」
この家で遊ぶにも狭いし、まず休みが合わないだろうし、ココアちゃんママは知っているがかい君ママは知らないからどうしようか考える。
相手のお家に行くんだったら何か持たせないと失礼だよな・・・ママ友の関係を築くのも大変だ。
「そのお約束決まったら教えてね」
「うん!わかった」
就寝時刻になりどんちゃんをベッドに寝かせる。
まだ遊びたいのか目をキラキラさせてるどんちゃんに絵本を読んであげる。
次第に目をとろんとしてきて小さな寝息を奏でる。
私もリクの里のホームページを眺める。
リクの里の系列で獣人専用のトリミングもあるらしく、予約をすれば保育園行っている間にトリミングしてくれるらしい。明日の連絡帳に書こうとメモをする。
朝になると相当気に入ったのかすぐにおもちゃで遊び始めるどんちゃん。
私は朝ごはんを作る。ちょっと固めの目玉焼きに犬用のパンを温めた簡単な朝ごはんだ。
「はい!どんちゃん食べるよ~」
「あとちょっと待って!」
「ダメ!今すぐ食べなさい!」
「まだ嫌だ!」
おもちゃを散乱させて遊ぶどんちゃんに厳しく接する。
「やだやだじゃないの!」
「まだ食べない!」
どんちゃんを抱っこして椅子に座らせる。
だが大人しく座らずジタバタとイスからなだれ込む。
こんな我儘を言うのは初めてなので困惑する。
「良い仔にしたら遊べるから!」
「今遊びたいの!」
そう言っておもちゃの中へ消えて行った。
私はお皿を持って目玉焼きを小さくスプーンで切り、どんちゃんの口元へ運ぶ。
そうするとどんちゃんも一口一口食べながら遊ぶ。
行儀が悪いのは分かってはいるが、こうしないと時間がないのでせざる得ない。
「はい!ご馳走様!」
「ごちそうさま!」
どんちゃんの髪を結って、着替えさせる。
こんなに苦戦したのは初めてなので困惑する。
「行きたくない!!」
「保育園でもおもちゃいっぱいあるでしょ!」
「これがいいの!!」
仕舞には泣き出すどんちゃん。
そんなどんちゃんを撫でて
「いっぱい遊びたいよね、今日早く帰れるようにかぁたん頑張るからどんちゃんも頑張ろう?」
「うん・・・ぼくがんばる・・・」
納得してもらってから支度がスムーズになった。
どんちゃんは涙をぽろぽろ大きな目から流しながら服を握っていた。
「涙拭いて行こうね~」
涙を拭いてあげて出発する。
重たい空気のまま保育園に預ける。
「自我が出てきたのかな・・・」
私は職場に着いてからも「一歳 イヤイヤ期」と調べる。
人間は早くて一歳からイヤイヤ期が出てくるらしく、どんちゃんもこれかなと思う。
私はスマホをロッカーに入れ鍵を掛ける。




