皆からのプレゼント
誕生日ケーキを半分残したどんちゃん
「明日もケーキ食べれる!」
「そうだね!」
私はお皿を下げて、ケーキも冷蔵庫に入れて、段ボールをどんちゃんの前まで運ぶ。
「どんちゃんお誕生日おめでとう!」
「なになに?」
「これプレゼントです!」
「貰っていいの?」
「いいよ~」
段ボールに苦戦しているので開けるのを手伝ってあげる。
「トラだ!!」
「欲しがっていたやつだよ~」
「見てたやつなんでわかったの?かぁたんすごい!」
トラのぬいぐるみを抱きしめるどんちゃんが可愛い。
買ってよかったと思える。
「こっちの箱も僕の?」
「そうだけど、気に入るかな?」
「開けていい?」
「いいよ~手伝うよ」
中から物を取り出してみると組み立てが必要だと書かれていたが、すぐに出来た。
「なにこれ!」
「知育玩具って言って遊びながら勉強できるおもちゃだよ~」
「しゅごい!時計も着いてる!」
「ここはアルファベットって言って、英語も学べるよ~」
しゅごい!と言いながら英語のパネルをくるくるさせる。
時計も自分で回せるのでいい勉強になるだろうし、長く使えるだろうと思って購入した物だ。
「誕生日ってすごいね!」
「だって生まれてきてくれた日だもん」
「すごい日なんだね!」
トラのぬいぐるみを抱きしめながらそろばんで数を数える練習をしている。
一時間ほど知育玩具で遊んだどんちゃんは眠たいと言ってトラをベッドまで運ぶ。
私は間接照明を点けて、ベッドに潜り込む。
「生まれてきてくれてありがとう」
頭を撫でてちょんまげの髪紐を取る。
朝六時に起きたどんちゃんはしっかりぬいぐるみを手放さない。
お弁当と朝食を同時進行で作っているとどんちゃんが足元に来てしがみ付く。
「ケーキは帰ってきてから?」
「そうだね!帰ってきたら食べようか」
朝食の目玉焼きを持って返事をする。
ごはんにゆかりをかけてあげる。紫色がごはんを染める。
「今日ココアちゃんとかい君に言うんだ!」
「そうだね!」
「んでね、買ってもらったのも言うの」
目玉焼きを小さく切って食べるどんちゃん。
その間にお弁当の仕上げに取り掛かる。
どんちゃんが食べ終えたので前髪を結って、服を着替えさせて保育園に向かう。
「おはようございます!」
「おはようございます!どんべぇくん良いねその髪!」
「かぁたんにやってもらった!」
自慢げに言うので恥ずかしくなったが可愛いので許す。
「どんべぇくんママおはようございます」
「ココアちゃんママおはようございます」
「この前はごめんなさい。あれからココアの為にと思ってご飯自分で作ってるの・・・」
「そうだったんですね」
「私、ココアに酷い事、思ってたってわかったの」
「それでいいと思いますよ」
ココアちゃんママは少し目を潤ませる。
「あ、ココアちゃんおはよ!」
「どんちゃんおはよう!」
「これからもココアをよろしくお願いします」
「こちらこそどんべぇをよろしくお願いします」
ちょっとココアちゃんママへの負の気持ちが楽になったのを感じる。
勝手にわだかまりを感じてただけだが、これからどんちゃんと成長するであろうココアちゃんと仲良くするのだから親も仲良くすべきだと今回の件で思った。
職場に着いて朝ごはんをあげていると早番の人が出勤してきた。
竹本さんが出勤してきて挨拶を交わすと「これ・・・」と紙袋を渡された。
「え、なにこれ?」
「どんちゃんの誕生日プレゼント」
「いいの?」
「安い櫛ですけど・・・」
「うんん全然ありがとう!どんちゃん前髪結べるようになったから丁度いいし」
するとそこに柊さんが出勤してきた。
「おはようございます!」
「おはようございます」
竹本さんはそっと休憩室へと消えて行った。
「やっぱり付き合ってるんですか?」
「付き合ってない」
私は渡されたどんちゃんのプレゼントを自分のロッカーに入れる。
「だったら竹本さん田瀬さんの事好きなんじゃないんですか?」
「私業務に戻るから」
話が膨らむ前にそそくさと業務に戻る。
恋愛を絡ませるとややこしい問題になる。
「田瀬おはよう!」
「おはようございます!」
遅番の鍋下さんが来た。
大きい荷物を持ってきて
「作業中でわるいんだけど、これどんちゃんに」
「鍋下さんまでありがとうございます!」
「お医者さんごっこのおもちゃなんだけど、おままごとする?」
「しますよ~絶対喜びます!」
「荷物多くなちゃってごめんね」
どんちゃんは皆から愛されているんだと実感する。
自分の誕生日より断然嬉しい。
温かい優しさが胸を染めて笑顔にさせてくれる。




