迷子①
大型のショッピングセンターに来た。
どんちゃんもテンションが戻って私たちの手を引っ張っる。
「落ち着けって」
「おじさん早く見よ!」
「そんなに引っ張らない!」
子供用のカートには乗らないと言ったが、一応持っていくことに。
文房具屋さんやでスケッチブックやクレヨンを買ってもらい、おもちゃ屋さんで大きい車のおもちゃが欲しいと言い出す。
「さっきお絵描きノートも買ったし、ダメ!」
「やだやだ!欲しい!」
「俺が買うんだしいいぞ?」
「そんな悪いよ、これ高いし・・・」
菊池がおもちゃを手に取りどんちゃんの目線まで膝を折る。
「これ買ってあげるからお母さんの言うこと聞くんだぞ?」
「いいの!?言うこと聞く!!」
おもちゃをレジに持っていく菊池の後を付いて行く。
レジを通すとやっぱり高い品物に気弱になる反面、菊池はポンっと一万円を出す。
「ありがとう・・・」
「いいよどんちゃんのためだ」
おもちゃを渡されたどんちゃんは大事そうにギューッと抱きしめる。
どんちゃんは人からいっぱい物を貰って育っている。
おもちゃも高いから買えない自分が情けない。
「あんま気にすんな」
「でも・・・」
「どんちゃんだからやってあげたいんだよ」
その後も菊池に買い物に付き合ってくれている間どんちゃんは車のおもちゃを抱きしめていた。
私がしっかり稼いでいっぱいおもちゃを買えるようにしないとと焦る。
いつまでもフリーターじゃダメだ・・・。
その後もどんちゃんに色々買ってあげる菊池に少し羨ましい気持ちが胸に広がる。
「ちょっとここで休むか」
「僕水飲む!」
「私お手洗い行ってくるからどんちゃん見てて」
私は近くにあったトイレに入り、化粧を直す。
薄化粧だが、もうアラサーだ。少しでも抗いたいが、目の下のクマを隠すのに時間がかかる。
どんちゃんのお母さんになってからバタバタとしてるので髪も切りに行けていない。
それでもどんちゃんのために貯金に回して将来の準備しなきゃいけない一心で働いている。
化粧も程ほどにしてどんちゃんの達の元へ戻る。
すると菊池が慌てていて、私を見つけると駆け寄ってくる。
次に発せられる言葉に一瞬固まる。
「どんちゃんがいない!」
「え・・・」
「俺が仕事の電話している間にいなくなった!」
何を言っているのかわからない。
私はどんちゃんの所に戻ってきたはず。
どんちゃんに水飲んだか確認やおもちゃ良かったねと会話するはずだった。
そのどんちゃんがいない・・・。私はいつの間にか走っていた。
「どんちゃん!どんちゃん!」
「田瀬!落ち着けって!」
「落ち着いていれるわけないでしょ!」
菊池に当たっても意味がないのは分かっているが足元からくる恐怖で支配されていた。
「私探す!」
「俺、迷子センターに行ってくる!」
「どんちゃん!どんちゃんどこ!!」
エスカレーターは一人で乗れるのか?
この階にいるのかどうかすら怪しい。
考えてもどこにいてもおかしくない。
恐怖から逃げ出すように走る。早く見つけてあげないと泣いているかもしれない。
先ほど行ったおもちゃ屋さんにもいない、文房具やさんにもいない。
どこを探せばいいのだ。
少し高いヒールを履いているためかかとの上が靴擦れを起こしている。
歩くと擦れて痛いが、そんなの気にせず走る。
「どんちゃん!どこにいるの!」
店内の人がこちらをジロジロと見るが、恥ずかしいより恐怖しか感じなかった。
「迷子のお知らせです。どんべぇちゃんという一歳ぐらいの男の子をお母さまが探しています。オーバーオールを着ています。お気づきのお客様がいらっしゃいましたら、近くの係員までご連絡くださいませ」
アナウンスが流れ菊池が迷子センターに無事に行けたのがわかった。
私も必死に探す。
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