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家族

絵を見せられた後、菊池とどんちゃんはひらがなの練習していた。

私も連絡帳にブロッコリーが食べれるようになりましたと書いて明日の準備をしていた。


「明日もいる?」

「明日帰るよ~」

「えーまた帰るの?」


我儘を言うどんちゃんに「また良い仔だったら来るよ」と撫でる。


「お風呂沸かすね」

「ありがとう」

「ぼくも入る!」

「じゃ、一緒に入るか!」


お風呂後が大変だった。

人間なら頭だけ乾かせばいいが、どんちゃんの場合全身乾かさないといけない。

一時間近く菊池と一緒に乾かした。


「さぁ寝る時間だよ~」

「おじさんと一緒に寝る!」


菊池に敷いてあげた布団に潜りこむどんちゃんを菊池は布団で包み込む。

きゃっきゃっと遊んでいる二人をベッドから見ていると枕が飛んできた。

私は見事に顔にヒットさせて、どんちゃんの横っ腹をこちょこちょと擽った。

三人で擽りあい笑い疲れてどんちゃんはすぐ眠りについた。


「大変だな」

「慣れるよ」

「どんちゃんの体力がやばい」


そう言って仰向けに寝る菊池を照明が薄明るく照らす。

どんちゃんを挟んで川の字で横になっている事が不思議でならなかった。

まるで家族だ。


「明日六時に起こすね」

「お願いするわ」


大きなあくびをして寝に入る。

私もベッドには行かず、川の字で寝ることにした。

理想の家族になれたような気がする。

だからと言って菊池とよりを戻すとはまだ言えない。


朝の六時にどんちゃんと私は起きるが菊池はまだ夢の中だ。

どんちゃんに菊池を起こすように言って、私は朝ごはんを作る。

犬用のパンと菊池のパンをトースターで焼く。簡単なベーコンエッグにする。


「おじさん起きてぇぇ!!」

「イテ、イタイイタイ」


ぬいぐるみで菊池の顔面を殴るどんちゃんに笑いが出る。

もっと優しく起こすかと思ったら意外とスパルタだった。


「もっと他に起こし方ないのかよ」

「おじさんおはよう!!」

「はい、おはよう」


トースターからこんがり焼けたパンをお皿に取り、ベーコンと目玉焼きを乗せる。

香ばしい香りが部屋を満たしてくれる。

菊池は洗面所で顔を洗う。勝手知ったるとはこのことか。


「はい!ご飯食べましょう!」

「おじさん早く!」

「おー」


「「「いただきます」」」


三人で食べる朝ごはんは格別に美味しく感じた。

菊池は半熟が好きなのも知っているし、どんちゃんはちょっと固めが好きなのも私は知っている。


「どんちゃん黄身こぼれるからお皿持って」

「おじさんは?」

「俺は綺麗に食べれる」


菊池がどんちゃんの世話をしてくれるこの光景が新鮮だった。


「ほら、食べたんだったらお着換えして」

「どんちゃん自分で着れるのか?」

「ズボンが履けない」

「俺やるよ」


どんちゃんに何着たいか聞いて履かせてあげる。

私はお皿を片付けて、化粧をする。

一人が増えるだけで朝の充実感が違う。


「今度三人でご飯行こうぜ」

「ドッグカフェになるけどいい?」

「別にいいよ」

「おじさんまた来てくれる?」

「いい仔にしてたら来るよ」


やったーと走り回るどんちゃんを捕まえてヘルメットを付ける。

施錠を二回ほど確認して駐輪場まで右は私が左は菊池が手を握って階段を下りる。

旗から見れば家族だ。

菊池がどんちゃんをシートに乗せてくれてヘルメット越しに撫でる。


「んじゃな」

「いってらっしゃい!おじさん!」

「ありがとう」


菊池とは反対なので家の前で別れた。











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